Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2016年2月号 新しい食糧配給メカニズムのジレンマ

2016年04月19日 | 人道支援
バンバチャクラ(電子マネー)の導入により携帯電話を持たない脆弱な難民は金券をもらえなくなっている。

バンバチャクラは、スワヒリ語で食料の持ち帰りという意味で、それぞれの SIM(Systematic Identification Memory)カードにデポジットされる金券のことだ。SIMシステムは、2015年半ばに新しい食糧配給方法として、ケニアのカクマとダダーブの両難民キャンプで導入された。難民は一定の割合で実際の食糧を受け取り、残りはクレジットとして SIMカードに記録される。この食糧配布方法は、他の手当てとの兼ね合いの中で、食糧が無駄になるのを避ける目的がある。

難民と難民認定申請者がこの新しいシステムの恩恵を受けるには、生体測定を受けなければならない。つまり食糧配給を受けるため、全難民が指紋を確認される。

バンバチャクラのプログラムが導入された当初、難民一人当たり一か月分の食糧の 50%として、各難民に 100ケニアシリング(1ドル)が与えられた。しかし、100ケニアシリングでは実際の食糧の50% にも満たないため、難民が異議を申立てた。そこで国連世界食糧計画(WFP)は、金券を増やし、単身者に 500ケニアシリング(5ドル)とした。ところが、2人家族の場合は一人当たり 300ケニアシリング、3人以上の場合には1人当たり 200ケニアシリングとしたため、一か月分の食糧の 20%分しか渡されないことになった。


【写真】 家族のサイズによって分配される金券の割合  写真/KANERE

このため、カクマの難民の多くが、キャンプの食糧提供者(主に WFP: World Food Program)のやり方を受け入れず、金券と食糧の不適切な割り当てに異議を申し立てた。具体的に言うと、50% が金券として、残りの半分が実際の食糧として与えられていた。「金券」の供与という口実のもと矛盾をはらむ食料配給メカニズム、バンバチャクラのプログラムが、受益者にとって有益でないという抗議が続いている。

〈バンバチャクラの課題〉
受益者である難民は、バンバチャクラの SIMカードを挿入するために、必要もないのに携帯電話を持たなければならない。そしてSIMカードを有効にするため、ネットワークのサービスプロバイダである Safari.comを通してショートメッセージ(SMS)を受け取る必要があるが、カクマでは難民数千人が携帯電話を持っていない。例えば、新規に流入する難民の50%が携帯電話を持っていない。

2つ目に、最初の段階でWFPがSIMカードを登録した家族の代表に暗証番号を送るのだが、WFPはSIMカードの有効化および暗証番号の安全な保存方法の啓蒙に失敗した。この段階で多くの難民が、暗証番号を含むSMSの受信トレーを知らずに削除して、金券を失ってしまった。

3つ目に、数千人の受益者が、キャンプ内の指定された店でバンバチャクラの金券を受け取ることができなかった。金券を扱う人間が新しいシステムについて十分なトレーニングを受けておらず、店の対応が遅れたのだ。

4つ目に、数千人の難民が、バンバチャクラの配給の特定のフェーズでのみ暗証番号が必要だと思っていたため、金券を受け取る前に暗証番号の情報を含むテキストメッセージを削除してしまい、月々のバンバチャクラ値を受け取ることができなかった。

5つ目に、キャンプのその他数千人の受益者は携帯電話をもっていないため、友人や近所の人の電話を通して暗証番号を受け取った。このため、SIMカードを交換する際に、彼等の暗証番号が失われた。その結果、次の配給時にバンバチャクラの金券を受け取れなかった。

〈解決法〉
新しい金券システムについて難民から寄せられた多くの苦情やキャンプで行われた抗議に対応するため、WFP は登録とデータ収集を行う食糧集配センター(Food Distribution Centres) に顧客サービスデスクを設置した。このデスクで毎週金曜日に、その週に寄せられた問題の解決に当たる。したがって、新しい暗証番号かバンバチャクラ値、またはその両方を含むSMSを受け取るために、毎週金曜日にはバンバチャクラの SIMカードを入れて、少なくとも24時間、携帯電話を有効にしておかなければならない。

しかしいまだに、携帯電話を持たないカクマの数千人の難民が、2015年8月に始まった新しい食料配給システムで金券を受け取れないという、大きな危険に晒されている。




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