Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2013年11月号 難民はテロリストではない――イブラヒム・ギンディチャとカバタ・ボル記

2014年05月28日 | 人権
ウエストゲート・モールでの悲劇の後に起きた無差別攻撃は、難民たちに悪影響を与えた――無実の難民たちが逮捕、拘留されたのだ。

2013年9月21日(土)、ナイロビ北部のおしゃれな商業施設がアル・シャバブのテロ組織によって攻撃された。少なくとも75人が死亡し、200人が銃撃によって負傷した。加害者らは何百人も人質にし、4日間この商業施設に立てこもった。

ケニアの閣僚のひとり、ジョゼフ・オレ・レンク内務保安省長官によると、国外からケニア入りしたFBIの刑事たちに、早く結論を出すように急がせているが、彼らによる検証はまだ終わっていない。攻撃した組織を追跡すべくこのショッピングモールに潜入したケニア軍が、銀行から現金や貴金属を奪うところも目撃されており、事件については不明な点が多い。

ケニア軍の蛮行の様子は防犯カメラで撮影されていたが、そのビデオが大衆向けに販売されたのだ。ケニア防衛省長官レイチェル・オマモは、軍隊がそのような盗難行為をした事実はないと主張する一方、証拠があるなら見せるよう強気の姿勢を見せている。今も分からないのは、敵と対立するはずの軍隊がなぜ本来の意図と反することをしてしまったのか、ということだ。

〈警察の標的は、難民〉
ケニアの治安関連の組織がこぞって国内の大都市を捜査し、容疑者を探している。問題がテロ攻撃だけに保安体制が強化され、不法滞在者の取り調べも厳しくなった結果、矛先が難民に向けられてしまった。

難民が逮捕され、裁判所に召喚されて、不法滞在の罪に問われる。特にソマリア人とエチオピア人にいたっては、顔の特徴が似ているため、大きな都市やカクマ-キタレ-ナイロビを結ぶ道路では、ケニア警察の厳しい取り締まりの標的にされている。


【写真】:今バスで移動すると拘留される可能性がある

2013年9月29日、カクマからナイロビへ向かうソマリアのバスがバーント・フォレスト警察署前で止められた。難民たちは数時間に渡って炎天下で立たされ、身分証明書を確認され、その多くが逮捕された。

2013年9月30日、ナクル町内の難民20余名が逮捕された。難民たちは乗っていた車から降りたところで、ナクル警察署へと連行された。この難民たちはケニアのUNHCRに登録済みだったことが、KANEREの取材で明らかになった。「20人くらいの人といっしょに逮捕されました。私たちは書類を持っていましたが、警察にはそれが本物であるか確認したいと言われました」と、ソマリア人女性がKANEREに語った。

2013年10月1日、ナイロビからカクマ難民キャンプまで走っていたダヤーバスがナクル町で停車を求められ、乗車していた人たちは警察署まで連行されて身元を確認された。そのほかの2台はバーント・フォレストにて停車を求められ、逮捕された難民もいた。この日の午後だけで、異なる国籍の25人の難民がエルドレット裁判所に召喚され、違法入国の罪で逮捕された。

KANERE記者が取材できたのはごく少数の難民に限られたが、それは警察が多くの難民にテロ容疑をかけ、隔離しているためだった。しかしウアシン・ギシュ地区警察のイルング・ワ・ギコンヤは、気軽に取材に応じ、逮捕はなかったと言い、逮捕の任務に当たっている警察官の電話番号を渡してくれた。ただしこの警察官は取材には応じることができないとのことだった。

エルドレット治安判事裁判所では、KANERE記者の裁判傍聴が拒否された。傍聴を許可されるのは特定のメディアのジャーナリストとしてリストに登録されている者のみ許される。難民たちは法的に救済されることなく見捨てられている。

裁判所の外で、KANEREは数人のソマリア人とエチオピア人の難民に取材した。ほとんどが裁判所に召喚され、治安判事によって判決が下されたとのことだ。2013年10月3日、それまでに逮捕された25人の難民のうち15人は2,000~5,000ケニア・シリング(訳注:約2,300~6,000円)をエルドレット裁判所に支払うことを条件に釈放された。

イスラム教指導者でもあるモハンメド・アミンは、KANEREの朱咲きに答えて、UNHCRによる書類は持っていたが、旅行許可証を持っていなかったため逮捕されたと話した。通訳を通して語ったところによると、食べ物を数日与えられなかったという。「侮辱されたように感じました。6,000ケニア・シリング(訳注:約7,000円)を払って釈放されるまで、話す時間をまったく与えられませんでした」。

司法が前例のないこのようなことに手を染めていいのだろうか。違法移民として逮捕された人が釈放された後に警察署で改めて逮捕されており、何人かの難民がこうした司法手続きについて不満を述べている。

カクマ難民キャンプでは、ソマリア出身の8人がテロ対策と称した警察の部隊によって逮捕され、ナイロビに送られた。数週間の尋問の後、うち7人は解放されたが、ソマリア人の心には治安問題に関する恐怖心が残っている。

逮捕された人に、アル・シャバブと関係しているのか尋ねたところ、全員が否定した。「私は真のイスラム教徒です。自分のコミュニティーでもキャンプでも、テロリストを受け入れることはありません」と、匿名希望のソマリア人難民は言う。

ケニア政府は、10月4日に国を挙げてウエストゲートの悲劇のために喪に服すと発表した。その一方で、そのモールにいったい何人のテロリストが入ったのか、まったく明らかになっていない。何人が殺され、何人が逃亡中なのだろうか。

〈いま、すべきこと〉
ケニアでの難民への取り締まりを見ると、すべての難民がテロリストのような印象を受ける。罪のない難民とテロリストは違うことを政府は示さなければならない。

難民たちが通院したり、親戚を訪ねたり、そのほか必要なことを安心してできるよう、キャンプの行政担当は必要な文書を提示すべきだ。ケニア政府の内務保安省は、警察を使って難民から金を巻き上げることをやめなければならない。西トゥルカナ郡へ向かうエルデロットからキタレへの道では、買収による違法行為が絶えない。

とはいえ、モールで殺されたアジア系の人たちがなぜ身分証明書を持っていなかったのかという些細な疑問に答えがないとすれば、「難民たちはテロリストなのか」という重大な疑問にもおそらく答えはないのだろう。


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