Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2009年3-4月号 再定住手続きの遅れで難民残留

2009年08月16日 | 人道支援
難民は不安と疑念にさいなまれながら、期待したほど進まない再定住について、審査結果を待っている。

帰国の見通しが当面ないままカクマ・キャンプに収容されている数千人の難民にとって、当面は他の国への再定住だけが、将来につながる解決法だ。したがって再定住手続きのためにUNHCRの面接を受けると、難民たちはすぐにも海外でのより良い新生活が始められるという期待を抱く。

再定住の条件を満たす難民のファイルは、UNHCRによって再定住者受け入れを申し出ている米国やカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの在ケニア大使館に送られる。大使館は事例を検討し、面接のおよその日付が記載された承認の手紙を難民に送る。在ケニア大使館の代表者は定期的にカクマ・キャンプを訪ね、再定住の見込みのある者のケースについて面接を実施する。

難民は大使館からの手紙を受け取ると大喜びする。通常は、手紙が出された日から6ヶ月以内に面接が開始され、約1年後にキャンプを離れることになるとされる。

しかし、この時間枠は望んだようには展開しない。大使館との面接予定が決まるまでに6ヶ月以上待たされる難民も大勢いる。面接の後、キャンプを離れるまで2年以上待つ場合もある。

待っている間、難民は手続きが遅れていることへの大きな心配や不安に耐えながら、自分たちのケースがどうなっているか当局から情報を得ようとあがく。

〈私は深く絶望的していた〉

コンゴ人男性、クリスチャン*は、2006年5月にカナダ大使館から承認の手紙を受け取った。翌6月、カナダ大使館の面接を受け、2006年12月には健康診断を終えた。医療検査に合格し、すぐにもキャンプを離れられるだろうと思った。

しかし2年もの間、結果についての報告もないまま待たされた挙げ句、2008年に再び健康診断を受け、これに合格しなくてはならないと伝えられた。再度、健康診断で問題なしとされたあと、カクマ・キャンプからカナダへの出発は、2009年3月まで待つように指示された。

クリスチャンの報告によると、彼のケースが遅れたことについて、十分な説明を受けたことはない。「何度もIOM(国際移住機関)になぜこんなに長くかかるのか教えてほしいと頼んだが、そのたびに、カナダ大使館からメッセージが届くまで待つように言われた」という。

数ヵ月待ってから、カナダ大使館に電子メールでメッセージを送ることにした。大使館からは何通か返信が来たが、他は無視された。その答えはいつも同じだった。引き続き待つように、と。

幸いなことに、クリスチャンの不安定な待機期間は今年2月に終わり、彼と家族のビザも準備され、間もなくカナダに移送されると言われた。

出発の少し前、クリスチャンに、このように長い期間を待つのはどんなものか教えてほしいと頼んだ。彼は、「この3年間は絶望的だった」と自分が体験した痛みを思い出しながら言った。「私と家族が夢の実現するのは、神さまのお慈悲のおかげとしか言いようがない」。待たされている三年間、彼と家族は、間違いなくが失望し、落ち込んでいた。

〈人生のチャンスを引き延ばされて〉

ムシンバ*は66歳のコンゴ人男性で妻と5人の子どもと共にカクマで暮らしている。彼は2006年10月にカナダ大使館から第三国定住を承認する手紙をもらった。しかしまだカナダ大使館の面接を受けていない。

2008年2月、カナダ大使館の面接に呼び出された人のリストには、彼の名前も入っていた。ところが残念なことに、面接指定日の何日か前になって、彼のファイルを評価する職員がカクマまで来ることができなくなったので、面接はキャンセルになったと言われた。名前が再びボードに掲載されるまで待つようにという指示だった。

カナダ大使館はその後、2回以上、カクマを訪問しているが、ムシンバの名前は予定者リストに一度も掲載されていない。それどころか、リストには2007年と2008年に承認通知をもらった難民が大勢載っているという。

ムシンバは、UNHCRの再定住担当職員に自分のケースが無期限に遅れていることに、何度も不満を申し出ているという。それに対する返事はいつも同じだ。カナダ大使館に呼び出されるまで待つように、と。

こんな状態が続き、ムシンバと家族は動揺した。彼はもともと高血圧で、長い待機期間に彼の健康は悪化している。何かあるたびに血圧が上がり、安眠のために薬を飲んでいる。彼は自分のケースについて考えるのがいやだという。考えるたびに血圧が上がるからだ。

ムシンバの妻も、家族が置かれている状況にとても不安を感じている。自分たちのケースを考えると悲しくなり、子どもたちのことが心配になると言う。子どもたちが良い学校に入り、よい職を求め、良い人生を得る機会もなく時が過ぎて行くのを見るのは、いたたまれない。

〈さらに大きな問題〉

クリスチャンとムシンバの話だけがカクマ・キャンプで見られる話ではない。多くの難民が、カナダのみならず他の多くの再定住国の在ケニア大使館から承認の手紙を受け取っているにもかかわらず、面接や健康診断やフライトを待ち続けている。

すべてのケースで、難民にとっての疑問は解決していない。なぜ自分の場合、こんなに時間がかかるのか? 大使館は、説明もない遅れに難民がどれほど苦しんでいるか、分かっているのだろうか?

難民には自分のケースを前進させる力がない。なぜ遅れているのか、その理由を聞き出す力さえない。しかし難民は、遅れの理由を是非とも知りたいのだ。難民は自分たちがキャンプで苦難に耐えていることを、大使館は本当に考えているのか疑っている。

KANEREは、UNHCRの再定住オフィスにコメントをもらおうとしたが、構内に入れてもれなかった。

*印は、実名ではない


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