難民コミュニティー警備員が武装攻撃グループを弓矢でかわし、英雄と呼ばれるようになった。地域に密着したセキュリティ・システムの必要性がよくわかる。
カクマ・キャンプでは今なお安全が確保されていないため、難民は思い切ったことができない。コミュニティーでは、武力攻撃から自分たちの近隣の安全を図るために、自主的なセキュリティ・システムを考案している。大晦日の晩、ある難民コミュニティーで居住区が不意に攻撃され、そのシステムが作動するのを目の当たりした。
コミュニティーは警備隊を見守っている
難民保護はUNHCRに権限委譲されているが、保安の実施責任はケニア政府にある。両者は共同で対策に取り組み、キャンプ内の不安を取り除こうとしている。UNHCRはパトロール車両をケニア警察に寄付した。上級警官によるとUNHCRは警察車の燃料と通信装置も提供しているという。
しかしケニア警察はあまりに多忙で仕事をこなしきれないことがある。キャンプの規模が大きくなり、人口も増えたので、警備が難しくなっているのだ。
状況は2008年中頃にGSU(ケニア警察ジェネラルサービス・ユニット)として知られる準軍事警察が配備されて以来よくなったが、依然として武装強盗が容易に襲ってくる。武装強盗の驚くべき特技は、特に夜間、時間も場所も選ばず襲ってくることだ。
こういう状況なので、難民は絶え間ない恐怖にさらされながら暮らしている。コミュニティーも自分たちの安全に配慮しないわけにはいかなくなった。隣人同士でグループを作り、招かれざる侵入者を防ぐため、居住区をとげがある木の垣根で囲んでいる。コミュニティーとしても武装強盗による攻撃を阻止するための予防策を打ち出している。
南部スーダン出身難民のエクアトリア・コミュニティーは、特に安全に関心を寄せている。彼らは、夜通し交替で危険な場所を重点的にパトロールするボランティア警備隊を置いた。警備員は弓矢で武装し、非常の場合には笛でコミュニティー・メンバーに警戒を促す。事件が起きると無線か携帯電話でコミュニティーの代表に伝え、連絡を受けた会長は直ちに警察かLWFのセキュリティ担当に通報する。
コミュニティーの警備員が英雄に
「サルバ」(本名ではない)は故郷スーダンから逃げ、かれこれ10年以上もカクマ・キャンプで暮らしてきた。
サルバは子供のときに 弓矢の使い方を覚えた。友だちと、この昔ながらの武器の使い方を練習し、やがて弓矢の名手になった。成長するにつれ、近くの茂みに分け入り、アンテロープやウサギやガゼルも仕留めるようになった。この自己防衛法が、いずれ役立つとは予想もしなかったことだろう。
クリスマスをいっしょに祝ったサルバと隣人は、2008年12月31日、こんどは大晦日を祝おうと計画を立てていた。その晩、サルバはいつまでも寝なかった。キャンプの他の者たちと同様、粋に新年を迎えたかったのだ。
午前2時ごろ、サルバはコミュニティーの垣根から侵入しようとしている4人の男を見つけた。男の1人は武装していた。居住地区のはずれにあるサルバの家の近くの家に、強盗が入って行くのを見届けた。
サルバは家の裏の暗がりに隠れた。月が出ていたので、事件の一部始終が見えた。
強盗は隣人に横になるよう命じ、中の二人が家を荒らし始めた。そして家族が丸1年かけて蓄えた現金を盗んだ。最初の仕事をやり遂げると、彼らは次の標的に向かった。
サルバのすぐ隣の家が次の攻撃目標だった。その次は自分の家だとわかって、危険を感じた。しかし逃げるには遅すぎた。
彼は弓と矢で武装し、隣人を救わなければと思った。しかし、ほんの少しのしくじりも命取りになる。
彼には標的がはっきり見えた。強盗のうち3人は武装していないので無害だ――サルバの標的は武装した1人に絞れる。
サルバは、慎重に狙いを定めた。そして射ったが、わずかに外れ、矢が強盗の襟をかすめた。動転した武装強盗は、どこから矢が飛んできたかもわからず、反対方向に撃った、
このときが生死の分かれ目だった。サルバは、最初に撃ちそこない、逃げ出しそうになったが、逃げる場所がなかった。そこで彼はもう一本矢をとって標的を狙った。
今度は武装強盗に運がなかった。矢は危害が最大になるように作られており、サルバは強盗の腋の下を射った。サルバは、ほっとして大きく息を吐いた。
強盗は目的を果たせずに狼狽するばかりだった。盗みに失敗したばかりか、仲間はひどく出血して、苦痛のあまり泣き喚いている。喚き声が響きわたり、強盗に選択の余地はなかった。彼らは負傷した仲間を担いで、命からがら逃げて行った。
サルバの行動力と勇気のおかげで、今回、強盗を阻止することができた。その勇敢な行為が、彼の家族と隣人を救った。サルバは一晩で英雄になり、キャンプ中の話題になった。コミュニティー・リーダーは事件をセキュリティのオフィスに報告したが、警察が現場に到着したのは強盗が逃げたあとだった。
警察はこの事件を捜査しているが、犯人は逮捕されていない。信頼できる筋は、負傷した犯人は出血多量のため死亡したことを確認している。
上級警官に捜査の進捗についてコメントするよう頼んだが、彼はコメントするのを辞退し、カネレを当局の上層部にゆだねることとした。
地区のオフィサー、エリック ワニョニイ氏は、事件についてのコメントを拒絶し、「未登録の組織にはいかなる公式声明も与えられない」と述べるに留まった。彼はカネレが地域に密着した組織としてまだ登録の過程である事実に言及したのだ。
初めてではないが、最後でもない
難民が自分たちの力で強盗を未然に防いだのは、何もこれが初めてではない。2001年に同じような事件が起きている。そのときは、強盗2人のうち1人が武装していて、キャンプ内のある家族を襲った。武装した強盗が取り乱し、犠牲者となるはずだった者がうまく強盗を制圧して、銃を奪った。強盗は慌てふためいて現場から逃げた。
事件は警察に通報され、銃も警察に引き渡された。しかし犯人はついに逮捕されなかった。
今日、サルバも隣人もコミュニティー・リーダーも、悩みを抱えている。武装犯が怪我(または恐らく死亡)しているので、復讐してくる可能性があり、命の危険を感じながら暮らしている。
盗賊に再び襲われたら何が起きるかわかったものではない。しかし、強盗犯は、次に攻撃するなら、弓矢の名手に射られることのないよう、よくよく考えみたほうがいい。
カクマ・キャンプでは今なお安全が確保されていないため、難民は思い切ったことができない。コミュニティーでは、武力攻撃から自分たちの近隣の安全を図るために、自主的なセキュリティ・システムを考案している。大晦日の晩、ある難民コミュニティーで居住区が不意に攻撃され、そのシステムが作動するのを目の当たりした。
コミュニティーは警備隊を見守っている
難民保護はUNHCRに権限委譲されているが、保安の実施責任はケニア政府にある。両者は共同で対策に取り組み、キャンプ内の不安を取り除こうとしている。UNHCRはパトロール車両をケニア警察に寄付した。上級警官によるとUNHCRは警察車の燃料と通信装置も提供しているという。
しかしケニア警察はあまりに多忙で仕事をこなしきれないことがある。キャンプの規模が大きくなり、人口も増えたので、警備が難しくなっているのだ。
状況は2008年中頃にGSU(ケニア警察ジェネラルサービス・ユニット)として知られる準軍事警察が配備されて以来よくなったが、依然として武装強盗が容易に襲ってくる。武装強盗の驚くべき特技は、特に夜間、時間も場所も選ばず襲ってくることだ。
こういう状況なので、難民は絶え間ない恐怖にさらされながら暮らしている。コミュニティーも自分たちの安全に配慮しないわけにはいかなくなった。隣人同士でグループを作り、招かれざる侵入者を防ぐため、居住区をとげがある木の垣根で囲んでいる。コミュニティーとしても武装強盗による攻撃を阻止するための予防策を打ち出している。
南部スーダン出身難民のエクアトリア・コミュニティーは、特に安全に関心を寄せている。彼らは、夜通し交替で危険な場所を重点的にパトロールするボランティア警備隊を置いた。警備員は弓矢で武装し、非常の場合には笛でコミュニティー・メンバーに警戒を促す。事件が起きると無線か携帯電話でコミュニティーの代表に伝え、連絡を受けた会長は直ちに警察かLWFのセキュリティ担当に通報する。
コミュニティーの警備員が英雄に
「サルバ」(本名ではない)は故郷スーダンから逃げ、かれこれ10年以上もカクマ・キャンプで暮らしてきた。
サルバは子供のときに 弓矢の使い方を覚えた。友だちと、この昔ながらの武器の使い方を練習し、やがて弓矢の名手になった。成長するにつれ、近くの茂みに分け入り、アンテロープやウサギやガゼルも仕留めるようになった。この自己防衛法が、いずれ役立つとは予想もしなかったことだろう。
クリスマスをいっしょに祝ったサルバと隣人は、2008年12月31日、こんどは大晦日を祝おうと計画を立てていた。その晩、サルバはいつまでも寝なかった。キャンプの他の者たちと同様、粋に新年を迎えたかったのだ。
午前2時ごろ、サルバはコミュニティーの垣根から侵入しようとしている4人の男を見つけた。男の1人は武装していた。居住地区のはずれにあるサルバの家の近くの家に、強盗が入って行くのを見届けた。
サルバは家の裏の暗がりに隠れた。月が出ていたので、事件の一部始終が見えた。
強盗は隣人に横になるよう命じ、中の二人が家を荒らし始めた。そして家族が丸1年かけて蓄えた現金を盗んだ。最初の仕事をやり遂げると、彼らは次の標的に向かった。
サルバのすぐ隣の家が次の攻撃目標だった。その次は自分の家だとわかって、危険を感じた。しかし逃げるには遅すぎた。
彼は弓と矢で武装し、隣人を救わなければと思った。しかし、ほんの少しのしくじりも命取りになる。
彼には標的がはっきり見えた。強盗のうち3人は武装していないので無害だ――サルバの標的は武装した1人に絞れる。
サルバは、慎重に狙いを定めた。そして射ったが、わずかに外れ、矢が強盗の襟をかすめた。動転した武装強盗は、どこから矢が飛んできたかもわからず、反対方向に撃った、
このときが生死の分かれ目だった。サルバは、最初に撃ちそこない、逃げ出しそうになったが、逃げる場所がなかった。そこで彼はもう一本矢をとって標的を狙った。
今度は武装強盗に運がなかった。矢は危害が最大になるように作られており、サルバは強盗の腋の下を射った。サルバは、ほっとして大きく息を吐いた。
強盗は目的を果たせずに狼狽するばかりだった。盗みに失敗したばかりか、仲間はひどく出血して、苦痛のあまり泣き喚いている。喚き声が響きわたり、強盗に選択の余地はなかった。彼らは負傷した仲間を担いで、命からがら逃げて行った。
サルバの行動力と勇気のおかげで、今回、強盗を阻止することができた。その勇敢な行為が、彼の家族と隣人を救った。サルバは一晩で英雄になり、キャンプ中の話題になった。コミュニティー・リーダーは事件をセキュリティのオフィスに報告したが、警察が現場に到着したのは強盗が逃げたあとだった。
警察はこの事件を捜査しているが、犯人は逮捕されていない。信頼できる筋は、負傷した犯人は出血多量のため死亡したことを確認している。
上級警官に捜査の進捗についてコメントするよう頼んだが、彼はコメントするのを辞退し、カネレを当局の上層部にゆだねることとした。
地区のオフィサー、エリック ワニョニイ氏は、事件についてのコメントを拒絶し、「未登録の組織にはいかなる公式声明も与えられない」と述べるに留まった。彼はカネレが地域に密着した組織としてまだ登録の過程である事実に言及したのだ。
初めてではないが、最後でもない
難民が自分たちの力で強盗を未然に防いだのは、何もこれが初めてではない。2001年に同じような事件が起きている。そのときは、強盗2人のうち1人が武装していて、キャンプ内のある家族を襲った。武装した強盗が取り乱し、犠牲者となるはずだった者がうまく強盗を制圧して、銃を奪った。強盗は慌てふためいて現場から逃げた。
事件は警察に通報され、銃も警察に引き渡された。しかし犯人はついに逮捕されなかった。
今日、サルバも隣人もコミュニティー・リーダーも、悩みを抱えている。武装犯が怪我(または恐らく死亡)しているので、復讐してくる可能性があり、命の危険を感じながら暮らしている。
盗賊に再び襲われたら何が起きるかわかったものではない。しかし、強盗犯は、次に攻撃するなら、弓矢の名手に射られることのないよう、よくよく考えみたほうがいい。
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