経緯
以前から、20cmスピーカーユニットを使ったバックロードホーン(BH)スピーカーを製作したいと思っていた。しかし、スピーカーボックスに21mm厚の板を使うので、組み上げた重さがスピーカーユニットを含めて40Kgを超えて、躊躇していた。
そんな中で見つけた、共立電子産業の20cmバックロードホーンエンクロージャー組立キット WP-720BHを見てみると、重量19Kgの文字がありました(スピーカーユニットを含めて22Kg)。これなら移動可能です。
本製品は軽量化のために、内部の板を斜めにしてホーンを形成し、また板厚15mmのMDF (中密度繊維板)を採用している。板厚15mmでも、大音量で聴かないので十分だろうということで、早速注文です。
スピーカーユニットは、フォステクスのFE206Enとした。
磁気駆動回路が強力で、出力音圧レベルが96dB/W(1m)と高効率だ。また、Qoが0.19と、スピーカー自体の低域での共振(ピーク)をほとんど抑え、200Hzからダラ下がりの周波数特性となっている。バックロードホーン用には、この特性が最適とのこと。
故長岡鉄男さんのスピーカー製作本に、「BHは、小口径軽量コーンのハイスピード高能率中高音がポイントで、これに見合った低音を高能率で再生するための工夫なのです。」との記述があるが、この言葉も確かめたい。
バックロードホーンスピーカーの製作
大型のスピーカーボックスの製作は初めてなので、先輩方のWEBサイトを参考にしたが、自分なりの工夫もしたのでその工夫とコツを中心にして報告します。
製作の順番だが、最初に側板に外周部(前板、天板、背板、底板)を接着し、その後に内部の板を接着した。外周部の板をズレずに正確に固定したいからだ。
・板の仮止め
マスキングテープ・幅30mm(A)を側板への前板、天板、背板、底板の仮止めに用いた。
紙製だが伸びず、粘着力もあるが簡単に剥がせる。(テープ幅:30mm)
・前板、天板、背板、底板の接着固定
接着剤を塗布し固定する際には、ハタガネと、板の長さが27cmを超えるとインパクトドライバーによるビス止めを利用した。
ビスは、八幡ねじ製のミニビス(B)を用いた。径1.6mmと細いがネジ部の径が大きく十分に締め込める。(ビットはN0.1)
板が大きいので、ちょっとしたズレや角のはみ出た接着剤でも、板の末端では誤差が大きくなる。接着前に、マスキングテープで側板上に仮止めしてズレの確認を行った。
予め、下穴ドリル(C)で両方の板に下穴を正確に開けた後、接着剤を塗布してビス止めした。
双方の板の穴位置がずれないように、一方の板に下穴を開けた後、マスキングテープ(A)で仮止めして、他方の板への下穴位置を決めた。(下穴ドリル(C)で、一方の板の下穴を通して、他方の板に下穴位置をマークする。)
外周部の板の接着は、時間的に余裕がある木工ボンド(D)を用いたが、内部の板の接着はタイトボンド木工用(E)を使った。接着が早く強力だ。
シリコンシーラント(G)は、隙間があると音が漏れるので、接着が足りないと思われる箇所を塞いだ。なお、専用の工具(コーキングガン)が必要で、ボックスの角の内側に絞り出した後、指の腹で角隅に押し込む。
最後に、ミニビス(B)はスピーカーボックスから外して、木工パテ(F)で穴を塞いだ。
・吸音材
吸音材を2枚に薄く分けてから、貼り付けた。
平行な2面の片面側(その面全体に貼り付けなくても良いと思う)。
ホーン(音道)を180度曲げている所の底の部分。
・塗装
最初、薄めたニスを塗ったのだが、MDF材には全く合わない。接着剤の跡や汚れが模様となって表れる。
代わりに、水性塗料を、外周とホーン出口に、色を変えて2回塗りした。
なお、移動可能な重量なので、風通しの良い場所に持っていって塗装した。
・スピーカーユニットの取り付け
スピーカーユニットに付属のネジ(H)は、21mm合板2枚重ねのバッフルに取り付けるための特殊ネジだ。
本製品の板厚は15mmなので、代わりにネジ頭がトラス形状(幅広)のタッピングネジ(径5mm、長さ25mm)(I)を用いた。なお、前板にスピーカーユニット取付用の3.2mm径のネジ穴を開ける前に、下穴ドリルで下穴を開けておくと正確に穴開けができる。
完成したバックロードホーンスピーカーの音を聴く
(夜間にフラッシュを焚いて撮ったので、色が変わってしまった。実際には、薄いアイボリー色です。)
音は、3日目からエージングが掛かり、ほぼまともになった。スピーカー製作本に書かれていた故長岡鉄男さんの言葉が理解できた。
中高音は、繊細できれいな音だ。低域は自然な感じだ。低域主体な音ではない。
ライブ盤を聞くと、音場がきれいに広がる。なかなか良い。
普段聞くレベルで音を出し、スピーカーを触っても、振動をかすかに感じる程度だ。板厚15mmで大丈夫だ。
スピーカの効率が96dBと高いので、以前実行したパワーアンプのボリューム交換によるボリュームの位置が、元に戻ってしまった。ただ、ボリュームの抵抗変化特性がAカーブなので、調整は可能だ。
バックロードホーン関連
・ スピーカーを2チャンネルにする、2Wayフィルタの設計と作り方
・ バックロードホーンスピーカーを、2Wayシステムにしました。
・ バックロードホーンのスピーカをFE208SS-HPに交換、高音域改善のためにツイーターを追加
・ バックロードホーンのスピーカーを、FE-208NSに交換しました。
・ スーパーツィーターを、バックロードホーンスピーカーに追加しました。
・ バックロードホーン(BH)スピーカーの製作
私もその一人でした。
しかし、実際に制作して如何でしょうか?一向に良い音と思ったことがありませんしメカニカル2wayとなるので、一度作ったらユニットと低域補正用ホーンの繋がりを良くするために、吸音材の量と何処に配置するのかを毎日聴感上で試す必要があります。
本当に疲れます。
で、結局バックロードホーンのエンクロージャーは数台自作したのですが全て処分しました。
バスレフが一番疲れない良い音がします。
バックロードホーンのスピーカーは、強いコーン紙と強い駆動力で、「明るく張りのある中音域、立ち上がりが良く切れのある高音域」が再生されます。この音が好きかどうかだと思います。
吸音材ですが、ホーン内での中高音の共振を抑えるために使用しました。音の繋がりは考えたことがありません。