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E88CCを使った真空管フォノイコライザーアンプ アンプ回路の紹介

2020-08-31 00:03:44 | オーディオ

真空管フォノイコライザーアンプのアンプ回路部の紹介です。

回路構成
1チャンネルの回路図です。

左の入力から順に、増幅回路、RIAAイコライザー回路、増幅回路、レベル調整回路、バッファー回路の構成となっている。

・1段目、2段目の増幅回路は両方とも同じ構成で、カソード抵抗にコンデンサーをパラにして、無帰還型(フィードバック無し)としている。歪み特性の結果から、無帰還でも充分な性能を有している。

ロードライン図を示す。

赤い線が1段目の静特性、2段目の静特性、動特性を示す。黒い線は、1段目にイコライザー回路が接続された場合の動特性だ。
3.6mAの電流を流して、歪が少ない動作点を選んだのが良い結果に繋がっているようだ。

・3段目のレベル調整回路は、1段目、2段目の増幅回路から、カソードのコンデンサーを外し、カソード抵抗を追加した構成だ。カソード抵抗による電流帰還量により、レベル調整が可能だ。
回路全体のゲインが45dB(178倍)となるように、カソードに9.1KΩの抵抗を追加して、28dBから9.4dBまでゲインを下げている。

・ゲイン配分
1段目増幅回路:27.6dB +RIAAイコライザー回路:-20.4dB +2段目増幅回路:28.4dB +レベル調整回路:9.4dB =45.0dB(177倍)  (実測値:43.8dB)
1段目と2段目の増幅回路でゲインが違うのは、1段目では後段にRIAAイコライザー回路が接続するので動特性でのプレート抵抗値が減少するためだ。

なお、本イコライザーアンプの後段にプリアンプを利用する場合は、レベル調整回路を省いても良い。2段目の増幅回路のプレート出力を、4段目のバッファー回路のグリッド入力に直接接続する。

参考にした単行本では、レベル調整回路の前に各種の信号入力、ボリューム調整を付加して、余ったゲインを利用している。今回の自作ではイコライザーアンプのみの機能として、高音質を目指している。

・4段目のバッファー回路は、カソードフォロアーで出力インピーダンスを下げている。
カソードフォロアー用には、普通、真空管12AU7が採用されるが、E88CCも同様に電流が流せるタイプで、また出力インピーダンスも下げられる。更に、同じ真空管4本を使えるメリットは大きく、E88CCを採用した。
出力のコンデンサーは2.2μFと大容量の値を選んでいる。後段のメインアンプの入力インピーダンスが10KΩでも、低周波域の周波数特性が落ちないようにした。

音質向上
抵抗とコンデンサーは、回路の一部に高音質素材を選んで採用した。目指したのは混変調の無いヌケの良い音、アタックを感じる音だ。

・抵抗
抵抗の被膜の誘電率、材料の磁性体等が音に影響を与えるようだ。理由のつかないものは採用しなかったので、以下のスケルトン抵抗のみの利用となった。
2Wのプレート抵抗、最終段のカソード抵抗: 福島羽葉電機のスケルトン抵抗 (抵抗の被膜を除去して、抵抗体上に生じる容量成分を無くしている。)

・コンデンサー
誘電正接 (tanδ、ESR)が小さく、耐電圧が高いコンデンサーを選んだ。ただ、その特性のコンデンサーを部品専門WEBサイトで探すと、非常に高価だ。また、データシートも掲載されていない。
結局、Panasonic、日本ケミコンの産業用コンデンサーを採用した。

段間の0.1μ、1.0μ、2.2μFコンデンサー: PanasonicのECQUAシリーズ メタライズドポリプロピレンフィルム
RIAAイコライザーの0.047μ、0.015μFコンデンサー: PanasonicのECHU(C)シリーズチップコン メタライズドPPSフィルム
1段目、2段目のカソードのコンデンサー470μF: 日本ケミコンのPSGシリーズ 導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ

なお、入力部の220pFのコンデンサは、MMカートリッジの周波数特性改善用に付加してある。(NISSEIのポリプロピレンフィルム)

エージング
最初は高域のみの厚みのある音から始まり、徐々に低域が出始めて音が落ち着いてきた。その後、充分な量のしまった低音になるまでに、1週間以上掛かった。多分、PanasonicのECQUAシリーズ フィルムコンデンサーが長いエージング期間を要したと思っている。

実装

1チャンネルを1枚のPWB(aitendoの真空管ユニバ基板 UP-MT9P-B)に実装した。PWBにソケット用穴が空いており、真空管のソケットを挿入して金具でねじ止めしてある。PWB裏面には、ソケットの足があるので、空中配線を含む部品実装がある。

回路図から部品配置の実装図を作成したのだが、真空管アンプ特有の以下の3条件が重なり苦労した。
・2つのアンプ回路がそれぞれ真空管の円周の対象の位置にある。
・1.0μ、2.2μFコンデンサーが大きい。
・ソケットを固定する金具が大きい。

3度目の実装図作成でなんとか配膳できた。

逆作用ピンセット

ブリント板への部品のはんだ付けでは、右手にハンダごて、左手にハンダを持つと、部品をはんだ付け位置に固定できない。
そこで、逆作用ピンセットを部品固定に利用した。部品を確実に挟むために、先端にはシリコンチューブを取り付けた。
2製品(HOZAN、goot)を購入して判ったのだが、HOZANの方が先が細い。1本だけならHOZANの方だ。(1mm経のシリコンチューブ使用)
チップコンのはんだ付けには、必須だった。

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E88CCを使った真空管フォノイコライザーアンプの自作

2020-08-23 23:07:04 | オーディオ

真空管E88CCを使った、無帰還形フォノイコライザーアンプを自作しました。目指すは、ヌケの良い音、アタックを感じる音、ツヤのある音で、高圧で動作させる真空管でなければ出せない音です。

自作するに当たり、主に、以下の本やWEBサイトを参考にさせていただきました。
・単行本「MJオーディオアンプ製作選 真空管式フォノEQ&プリアンプ」:故・安井章さんの作例、長真弓さんの作例
・かずさんのWEBサイト:真空管プリアンプ~最終版 (http://fugaku.fc2web.com/sub437.html)
・中林歩さんのWEBサイト:電脳時代の真空管アンプ設計 (http://ayumi.cava.jp/audio/pctube/pctube.html)

・使用した真空管"E88CC"の紹介
アメリカの登録名が6922で、12AX7、12AU7等と同じく、3極管を2回路備えたサブミニチュア管。高信頼、低ノイズのHI-FI用だ。
12AX7と比べ低電圧で動作させる、その代わり電流を流すタイプ。最も違うのがヒーター回路で、2個のヒータ部が直列接続ではなく、並列に接続されている。なお、自作にはスロバキアのJJ ElectronicのE88CCを採用した。

・自作フォノイコライザーアンプの外観及び構造
前面

背面


簡素な外観だが、レコードを再生するフォノイコライザーアンプとしての機能だけを持たせてある。
電源スイッチが下の方に実装されているが、電源ノイズから逃れるためだ。

RIAAイコライザー特性は、電源ノイズの50Hz付近では1KHz付近より20dBゲインが高い。これは、5mV入力のアンプに、0.5mVの電源ノイズが入り込むと、同じ出力電圧となって現れる。

更に目標として、少なくとも40dBのS/N値が必要だから、入力換算では、電源ノイズは信号レベル5mVより60dB低くなることが必要で、結局、回路に電源ノイズが入ってはダメとの結論になる。

そのために、内部に上下を2分するシャーシ(アルミ板)を備え、その上下位置が可変できるケース(摂津金属工業 SF-3B)を選んだ。
2分したケースの、下側部分高さ26mm内に電源スイッチを含む電源回路を実装し、上側部分高さ80mm内に真空管アンプ回路を実装した。
下側部分


上側部分


回路間の電源接続、信号の接続には、JST(日本圧着端子製造)のXHコネクタを用いた。
(圧着ペンチを使用して、コネクタの端子に撚り線を圧着する方法)

電源トランスはシールド付きを選んだので、大型のトランスとなった。しかし、供給電流に余裕が生まれ、低域は力強く切れのある音となっており、選んで正解だった。


フォノイコライザーアンプ回路の紹介

電源回路の紹介
電源回路の改良(リップルノイズ削減)



特性
周波数特性  見づらいが、低周波領域で上にある曲線が周波数特性のカーブです


10HZで+20dB、20KHzで-20dB近傍なので、RIAAイコライザーカーブがそのまま出力されている。

実際の周波数特性を見るために、オシロスコープからCSVデータが出力されるので、エクセルでRIAAイコライザーカーブとの差分を取り、グラフ化した。


中低域が0.5dBUPしているが、素直な特性だ。
.
歪み特性 (1KHz)
オシロスコープのFFT機能を利用している。-60dB付近からオシロスコープ自体の歪が現れるので、-60dB近傍以下の値は信用できない。(縦のひとマスが10dB)
標準入力値5mV入力 (15mVpp入力-- 2.4Vpp出力)


標準入力の10倍の入力値50mV入力 (150mVpp入力-- 23.8Vpp出力)

10倍入力で、1KHzの基本波の隣に2次歪が出現する。歪み率: 56dB

無帰還型の真空管アンプは、徐々に歪が増えると聞いていたが、10倍の入力でもほとんど歪んでいない。これだけ無歪みなら十分だ。
.
ノイズ特性
アンプの出力をそのままオシロスコープのハイインピーダンス入力に接続している。

やはり電源ノイズが出力される。(1波長が50Hz)
オシロスコープの表示では、9mVppとなっているが、電源ドリフト(電源電圧の超低周域の揺らぎ)を拾っている為だ。
ノイズ出力5mVppとすると、標準出力2.4Vppなので S/N比=2.4Vpp/5mVpp=480=53.6dB で、一応、S/N比の目標は満たしている。通常聴くレベルなら、スピーカに耳を近づけても聞こえない。

ちなみに、市販されているアンプのS/N値は、IHF-Aカーブのフィルタを用いて測定されている。バンドパスフィルターで、50Hzのレベルは、1KHzのレベルから30dBも落ちていている。市販品のS/N値は電源ノイズの影響を消去しているので、このアンプのS/N値とは、比較ができない。


電源ノイズを含め改善すべき点はあったのだが、エージングして音を聴いているうちに、「このままでいいや」となってしまった。
まずはこのままで楽しんでいこうと思う。そのうち不満も出てくるだろうから、そのときに修正するつもりだ



真空管アンプ関連
交流ロードラインの引き方
QUAD#22 真空管プリアンプのイコライザーアンプ部の仕組み
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真空管プリアンプの自作にチャレンジです。

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