ココロの居場所

平穏な居場所を求めるべく、日々、感じた事を掲載していきます。

清浄なるもの。...

2007-02-08 23:02:43 | ショートショート
西高東低の気候が、ここのところ続き、地面は凍りついている。
冷たい雨は、雪に変わり、私は傘をたたむかどうか迷っていた。
とその時、耳元で、透明感のある、静かな女性の声がした。
「傘に入れてもらえますか。」
私は、恐いながらも、そっと聞いてみる。
「あなたは。...」
「私は冬です。」真っ白なコートを身にまとったような。
私は、彼女が冗談でも言っていると思っている。
「そうですか。寒くなってきますね。寒いのは苦手なもので。...」
「あの~、寒さはこの世の中で一番清浄なものと言われているんですよ。」
「しょうじょうって。...」
彼女の言っている意味がわからない。
雪があたり一面に積もって、あっという間に白銀の世界に。
「しょうじょうって、なんですか。」と彼女に聞いてみる。
「あなたは、既に見ているじゃない。」と彼女。
私は彼女の表情を見ようとしたが、そこには、もう彼女の姿は無かった。
私は、静かなる白い世界を眺めて、寒いのも悪くないと思った。

(このショートショートは、100%フィクションです。)

引用:「寒さはこの世の中で一番清浄なもの」(レイモン・ラディゲ)

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