ココロの居場所

平穏な居場所を求めるべく、日々、感じた事を掲載していきます。

おばあさんのハナモモの話

2009-08-23 01:39:33 | ショートショート
あるところに、仲のよい老夫婦が、山里の田舎に住んでいました。二人は、休むこともなく、畑仕事に一日中、精を出し、おじいさんがクワを持って耕せば、おばあさんは、野菜の種を植えつける、そんな息のあった生活だったのです。しかし、二人ともに、とうに80歳を超える高齢でしたので、冬の寒い夜に、おじいさんはとうとう、眠るように息をひきとりました。おばあさんは、悲しさを通り越して、しばらく、畑仕事にでることができませんでした。それでも、おじいさんと共に育てた畑から、新しい命が芽吹くのを見て、この畑を守っていこうと思いました。そして、毎日毎日、坂道を行き来し、おじいさんの想いが残る畑に手をかけるのでした。何年かが過ぎ、運命とは非情なもので、おばあさんは、体力的に限界にきていることを悟りました。今や雑草の茂る、手つかずの畑の真ん中に、おばあさんは、ハナモモの苗を植えたのです。ここの山を登る人々が足をとめ、成長したハナモモの花を見て喜んでくれたらという想いからでした。そうやって、いくつかあった畑を、それぞれ、山に返していったのでした。ある日、おばあさんは、たけのこを取りながら、「山は、手をつくした分だけ、返してくれる。」と言った言葉が最期だったと聞いています。

この話は、NHKの番組から一部、変更して、お話にしてみました