私休
△強姦 は耳を割り、目を刳り、頭髪を斷る、等略々姦通の私休と同じきも、尚其外に活埋と云ふことあり、之れは犯者を捕へて、可成通行人多き路傍に活乍ら土中に埋むるを云ふ、其方法は一尺四方位の杭を人丈けに穿ち、犯者を其杭中に立たしめ、周園を土にて埋め、首部のみを露出し通行人に面せしめ諸人に示す、行人は竹鞭或は木枝を以て之を揶揄し、又は面に唾して過ぐ、如此して往昔臺南安平街道の中途に半路亭なる一亭あり、之れ元と安南間往来者の休息所たりしが、或時一悪漢此處に隠れ居り、一婦人の通行するを見て、不意に捕へて亭内に拉し来たり、遂に獣慾を満たせり、庄人之を知り馳せ集り、悪漢を捕へて此處に活ながら埋めて衆人に示めせり、埋められたる悪漢は數刻を出でずして死したるを以て、其首部に甕を蔽ひ腐臭に任せたり、後何人の傳へたるものなるや、其屍前に香を焼きて祈るときは必ず賭博に勝つと稱し、黨時香煙絶えざりしと云ふ、彼の義賊鼠小僧の墓前に常に香花絶えざるも概ね此類なるべく、何處にも奇なる迷信の存するものなるも迷信は迷信として、此私休は私休中最も殘酷なる私休と云ふべし。
學生他人のものを窃盗したるときは、教師其學生を捕へて打ち懲らし他の學生に示めし又は其父母に告げ將來を戒しむ。
子、 他人のものを窃取したるときは、其父母其子を物主の家に拉し行きて打ち懲らして物主に示し後來を戒む、若し父母の物品を盗めば縛し、又は打ちて之を懲らす。
査某嫺主人のものを盗めば、子と同じき打ち懲らす、若し他人のものを盗み、又は盗食するときは、其手又は唇に焼け火箸を當て之を懲らす。
明治四十二年七月中苗栗三堡大甲街王俊なるもの下女を懲らしむる目的を以て、度々焼け火箸を其躰體に當て、遂に其下女を死に致し、己れも亦刑事被告人となりし事件あり、兎に角、臺灣に於ける私休即ち私休は不良なる習慣と云ふべし。(了)
臺法月報第七巻第九號 1913年9月20日
△強姦 は耳を割り、目を刳り、頭髪を斷る、等略々姦通の私休と同じきも、尚其外に活埋と云ふことあり、之れは犯者を捕へて、可成通行人多き路傍に活乍ら土中に埋むるを云ふ、其方法は一尺四方位の杭を人丈けに穿ち、犯者を其杭中に立たしめ、周園を土にて埋め、首部のみを露出し通行人に面せしめ諸人に示す、行人は竹鞭或は木枝を以て之を揶揄し、又は面に唾して過ぐ、如此して往昔臺南安平街道の中途に半路亭なる一亭あり、之れ元と安南間往来者の休息所たりしが、或時一悪漢此處に隠れ居り、一婦人の通行するを見て、不意に捕へて亭内に拉し来たり、遂に獣慾を満たせり、庄人之を知り馳せ集り、悪漢を捕へて此處に活ながら埋めて衆人に示めせり、埋められたる悪漢は數刻を出でずして死したるを以て、其首部に甕を蔽ひ腐臭に任せたり、後何人の傳へたるものなるや、其屍前に香を焼きて祈るときは必ず賭博に勝つと稱し、黨時香煙絶えざりしと云ふ、彼の義賊鼠小僧の墓前に常に香花絶えざるも概ね此類なるべく、何處にも奇なる迷信の存するものなるも迷信は迷信として、此私休は私休中最も殘酷なる私休と云ふべし。
學生他人のものを窃盗したるときは、教師其學生を捕へて打ち懲らし他の學生に示めし又は其父母に告げ將來を戒しむ。
子、 他人のものを窃取したるときは、其父母其子を物主の家に拉し行きて打ち懲らして物主に示し後來を戒む、若し父母の物品を盗めば縛し、又は打ちて之を懲らす。
査某嫺主人のものを盗めば、子と同じき打ち懲らす、若し他人のものを盗み、又は盗食するときは、其手又は唇に焼け火箸を當て之を懲らす。
明治四十二年七月中苗栗三堡大甲街王俊なるもの下女を懲らしむる目的を以て、度々焼け火箸を其躰體に當て、遂に其下女を死に致し、己れも亦刑事被告人となりし事件あり、兎に角、臺灣に於ける私休即ち私休は不良なる習慣と云ふべし。(了)
臺法月報第七巻第九號 1913年9月20日