「うたびとの墓」 吉田隼人
胸郭のうちにも月ぞ昇りゐむふるき仏蘭西の雑誌よむころ
闇に眼はいよいよ冴えて宙空に息詰まるほど花のまぼろし
かげろふのあをき慄へに存在のあさきゆめみし炎熱の夜を
絶滅の危機に瀕してわが書架に収められゆく旅の蝶たち
筆擱きてなほものぐるひしづまらぬ暁烏その聲のみ聞こゆ
あをあをと揺るる夏の田 詩歌へのおもひ萎えつつ白鷺飛ばず
鳥類のこぞりて墜つる蒼空のふかみに風の鉱脈あらむ
うたひつつうたを棄つるか白昼に影ひとつなく咲く夏の花
熱風にさらす身にしてたましひの底ひに夏の花散りやまず
植ゑもせぬ百合ひとくきの咲きて枯るおろかきはまる詩論に傷み
かすみ草は英語にてBaby's breathと称す由。
わがうたの殯も為さむそののちのわれに手向けよ霞草(みどりごのいき)
かなしみに似て白き夏びようしんを天使に抱かることもなく過ぐ
夏の最期のひかり浴びけむひさかたの天使住居街(ロス・アンジェルス)の浜田到も
夏草やうたを棄つればうたの墓 となりに白きうたびとの墓
胸郭のうちにも月ぞ昇りゐむふるき仏蘭西の雑誌よむころ
闇に眼はいよいよ冴えて宙空に息詰まるほど花のまぼろし
かげろふのあをき慄へに存在のあさきゆめみし炎熱の夜を
絶滅の危機に瀕してわが書架に収められゆく旅の蝶たち
筆擱きてなほものぐるひしづまらぬ暁烏その聲のみ聞こゆ
あをあをと揺るる夏の田 詩歌へのおもひ萎えつつ白鷺飛ばず
鳥類のこぞりて墜つる蒼空のふかみに風の鉱脈あらむ
うたひつつうたを棄つるか白昼に影ひとつなく咲く夏の花
熱風にさらす身にしてたましひの底ひに夏の花散りやまず
植ゑもせぬ百合ひとくきの咲きて枯るおろかきはまる詩論に傷み
かすみ草は英語にてBaby's breathと称す由。
わがうたの殯も為さむそののちのわれに手向けよ霞草(みどりごのいき)
かなしみに似て白き夏びようしんを天使に抱かることもなく過ぐ
夏の最期のひかり浴びけむひさかたの天使住居街(ロス・アンジェルス)の浜田到も
夏草やうたを棄つればうたの墓 となりに白きうたびとの墓