臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

「角川『短歌』2017年9月号」より

2017年10月11日 | 古雑誌を読む
      命の授業(31首群作『どこまで行こう』より)    俵万智


○  軽トラの荷台にりてコケコケとまだ食べ物に見えぬ鶏たち

○  首斬られなおもバタバタ動く脚 命はどこにあるのか脚か

○  放血ののちの体をお湯につけ毛穴ゆるめる手順通りに

○  熱いうち羽根をむしればなんとなく見たことのある鶏肉となる

○  青ざめて胃の腑おさえる男の子 心豊かに今日は傷つけ

○  解体をすればよくある肉となる手羽先ささみムネモモレバー

○  大中小の黄身並びおり命とは順番ありて生まれ出るもの

○  火をおこし肉を焼くこと人類の一員として君たちを見る

○  子らは今そのあいさつの意味を知る命「いただきます」ということ

○  花粉持つ雄蕊ぷちぷちカットしてユリの去勢を終える水無月

○  楊貴妃と名づけられたるカクテルのあかねさすアスタキサンチンの赤

○  二度寝して見る夢甘し冷蔵庫のマンゴー今日は食べてしまおう

○  カニカマのアヒージョに「いいね」仙台と福井と石垣島の友だち   


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