ただ生きるのではなく、よく生きる

自然の法則をとらえ、善(よ)く生きるために役に立つ情報を探して考えてみる

蜜だけ吸って花弁をこわすな

2017-05-21 15:12:38 | 知恵の情報
法句経の中に「蜂が花弁と色とかをそこなわずに蜜だけを取って飛び去るように、
智者が村々を乞食して行くのも同じようでなければならない」と言う有名な句が
ある。蜂はどんなにブンブン花のまわりを飛び回っても花弁も落とさずただ蜜だけ
を吸い取る。同じように教えを説いて村々を訪れる智者(僧)は食だけ恵まれれば
よく村のことにかかずらわってはいけない、というのが大意であるがこれは実生活
にあてはめても、含蓄の深い名文句である。

風景の美しいところへ行ったら、ただその美しい自然にひたって、喜びを感ずれば
よいので、来遊の記念などといって、樹木や建造物に名前を刻んだり、花や草木を
持ち続け帰るのは、まさしく蜂が花弁をこわさないで蜜だけ取る行為にははるかに
劣る蛮行ではないか。

人はだれでも自分の生活のために人間関係を持つ。大ざっぱにいえば家庭と
社会、小さい単位をとれば夫婦と職場ということになる。職場で人を使うことは、
その人の持っている能力を借りることで、同時にそれを伸ばし、自分もそれに
つれて啓発されることであって、決して彼を踏み台などにしてはならない。自分の
目的のために花弁を傷つけたり枝を折ったりしてはならないのだ。

夫婦の人間関係には一層蜂と花弁のたとえはよくあてはまる。夫婦生活という
ものは、そのいずれもが、相手から甘い蜜を取得するもので、そのために相手
の花弁や香りを傷つけてはならないのだ。しかしながら世の中には、年齢に
ふさわしい女の色彩を失った妻、妻の過重な期待にたえ切れず、早く白髪を
ふやす夫、そういった夫婦が案外少なくないものである。蜂は蜜だけ取って花弁を
損じないことを、もう一度再認識しよう。

─『一日一言 人生日記』古谷綱武 編 光文書院より

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