紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「兎の秘密 昔むかしミステリー」佐野洋

2004年10月21日 | さ行の作家
表紙の絵、バニーガールなんですけど、
“兎の秘密”ってそれかいっ。とつっこんでみたり(笑)。
日本の昔ばなしをモチーフにした斬新な短編集、
ということで手に取ってみました。またまた短編です。

なんとなく、赤川次郎に雰囲気が似てる気がします。
軽めで読みやすくて、ウィットに富んでいる、と。
赤川よりも深いところを突いてるし、
物語も少し重みがあるんですけど、
でも、短編だと最後にあまり救わない、
というところが似てる(笑)。
そう考えると、以前読んだ「2(S+T)の物語」も、
納得いかなかった結末がなんだかOKになってしまいます。

昔ばなしの新解釈ときくと、民俗学系を想像しますが、
そうではなく、普通の人が、子供の頃とは違った思考で、
ちょっと目先を変えてもう一度昔ばなしを考えてみる、
といった感じの雰囲気です。そしてそこに事件が絡む。
(絡まないものもあるんですけど)

私の田舎には桃太郎伝説と浦島太郎伝説がありました。
馴染み深い話なだけに、たぶん、一通りの解釈っていうのは
一度は聞いてるんですよね。でも、「亀の正体」は設定と、
過去における解釈に限らないあたり、とても面白かったです。
子供が出てくる「健気なこぶ」は切ない話。ミステリーとして
いちばん楽しめたのは、やはり表題作でしょうか。
でもどれも、そんなに重くなく、読みやすかったです。

兎の秘密(講談社文庫)
佐野 洋出版社 講談社発売日 2004.08.10価格  ¥ 560(¥ 533)ISBN  4062748347bk1で詳しく見る オンライン書店bk1