紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

『FINE DAYS』本多孝好

2007年04月11日 | は行の作家
オンライン書店ビーケーワン:FINE DAYSFINE DAYS』本多孝好(祥伝社文庫)

ミステリではなく、どちらかというと、
ファンタジーの部類に入るのかな。
“恋愛小説”って冠がついてますね。

表題作含め4編を収録した短編集。
本多さんならではの、爽やかなのに切ない、
泣きたくなるような物語ばかりです。

中でも好きなのは「眠りのための暖かな場所」。
体が外側からだんだん冷たくなって、
そして、全身が冷え切った頃に眠りが訪れる…。
そんな経験はないですが、気持ちは分かる。
そうやって、罰を受けようとしている気がします。
小さな1つのわだかまり。
それが心の中でどんどん成長していくことに
気づきならが、目をつぶっているんだけれども、
どうしようもなくなる。
なんとなく、昔の自分を思い出しました。

『失はれる物語』乙一

2007年04月03日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:失はれる物語失はれる物語』乙一(角川文庫)

表題作ほか7編を収録した短編集。
厳密にいうと、ミステリではないかもしれません。
(というか、ミステリはたぶん2つだけ)

実は、表題作の「失はれる物語」はそれほどではなく(笑)、
ケータイをモチーフにした「Calling You」とか、
心に傷を負って生きている少年たちの物語「傷」の方が好きです。

中でも、殺人事件のあった家で1人暮らしをすることに
なった引きこもりぎみの大学生と、白い子猫の話、
「しあわせは子猫のかたち」は、乙一らしく、
鳥肌が立つほど切なくなります。

短編集なので、気楽に読めて良いかも。
「マリアの指」は、これまた乙一らしいしかけもあって、
しかもミステリ仕立てなので、良いかも、です。

『おれは非情勤』東野圭吾

2005年10月09日 | は行の作家
オンライン書店ビーケーワン:おれは非情勤おれは非情勤』東野圭吾(集英社文庫)

小学校に勤める非常勤講師が主人公の連作短編。
主人公には名前がなく、とっても硬派を気取っている
“ハードボイルド”なんだそうですが、謎解きは
しっかり本格です。これはある種、二階堂黎人の
しんちゃんのシリーズに似通っている気がしないでもない。
(主人公の年齢が随分違うけれども)
何より、「5年の学習」「6年の学習」に掲載されていた、
というのが驚きです。起こる事件がそれほど凄惨ではない
(殺人は起きますが)ということ以外、とりたてて
子供向けな感じはしませんでしたけどね。そこが
返って子供に対してもフェアな気がして良かったです。

硬派でハードボイルドな主人公は、好んで小学校の
先生をやっているわけではなく、ミステリ作家に
なりたいらしい。けれども、その夢を叶える暇はない上、
行く先々で不可解な事件に巻き込まれてしまいます。
先生が殺された現場にダイイングメッセージが残されて
いたかと思うと、教室ではいじめがあったり、また
毒物中毒事件が起こったり…。途中まではなんとなく
分かるんですが、結局謎解きにまでは至りませんでした。
それはなぜかというと、大人の目線と子供の目線で
こうも見方が違うのか!ということに尽きるのかな。
子供の世界で起こる事件は、子供の心理で解かないと
分からないのね。それを、この主人公は見事に解決する
わけです。学校の先生になりたいわけではないらしい
主人公ですが、そういう部分はとっても先生向きだなあ、
とか思ってしまいました(笑)。

話は大きく変わりますが、昨日テレビで「ごくせん」の
特番を見たのですね。いまさら学園ドラマなんて見られない
と思っていたので、ドラマは全く見てなかったのですが、
この特番でダイジェストを見ていると、結構面白い!
やっぱり単純なんだけど、そこが高校生らしい素直さ、
純情さなんだと思い知った気がしました。
それとこの作品はなんとなく通じる部分があって、
結局自分は大人ぶってはいるけれども、やっぱり
過去子供であったことは間違いなく、そういう部分は
いつまでたっても忘れないんだなあ、とか思ったわけです。
主人公の、子供への言葉とか態度なんかを見ていると、
子供をちゃんと1人の人間として見ているというところが、
ちょっと心に残ったりして。。。こういう作品に触れられる
現代の子供たちがちょっとうらやましい(笑)。

『ラッシュライフ』伊坂幸太郎

2005年09月29日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:ラッシュライフラッシュライフ』伊坂幸太郎(新潮文庫)

“謎解き”というよりは、“犯罪小説”といった趣。
オーデュボンの祈り』以来、伊坂さんを読むのは2冊目です。

泥棒を生業とする男は、新たなカモを物色する。
父に自殺された青年は、神に憧れる。
女性カウンセラーは、不倫相手との再婚を企む。
職を失い家族に見捨てられた男は、野良犬を拾う。
そして、幕間には歩くバラバラ死体が…。

何人もの“人生”が絡み合い、そしてその上で“世界”
もしくは“世間”というものが成り立っているんだ、
というようなことを強く意識させられた作品でした。

4人それぞれの物語が並行して語られるのと同時に、
さまざまなところでニアミスだったり交錯してたりするんです。
その“違和感”というか、不思議な感じがたまりません。
なんとなく、北森鴻の作品を思い浮かべたりしましたが、
それらよりも明るい感じで、読者も救われます。

伊坂さんの他の作品のキャラクターたちがクロスオーバー
しているようなんですよね。それは、今後の楽しみのために
取っておくことにします(^-^)。

『三毛猫ホームズの推理』赤川次郎

2005年09月29日 | あ行の作家
★『三毛猫ホームズの推理』赤川次郎(光文社文庫)

久しぶりの赤川さん。本格の名作といえば、これでしょう。
三毛猫ホームズのシリーズは現在も続いており(多分)、
長編・短編合わせて全40冊が刊行されてます。ちなみに、
誕生25年目に発行された40冊目は『三毛猫ホームズの卒業論文』。
(もちろん、未読ですが)

再読のつもりでしたが、すっかり内容は忘れてしまってました。
しかし、もう、何もかもが懐かしくて懐かしくて(笑)。
ちょっと軽い感じのところとか、かと思うと、思いっ切り
シリアスな場面がどどんと出てきたりとか、そして何より、
この密室トリック! とても赤川さんらしいんです。

先日、アリスの『マレー鉄道の謎』に関して、トリックは
御手洗級かも、とか書きましたが、それを遥かに上回ります。
確かに、最初からヒントはいろんなところにちりばめられて
いるのですが、それを拾い集めたところで、あの解答に
行き着くはずがない(笑)。しかし、極めて論理的に謎が
解かれていくあたり、本格ファンも充分楽しめると思います。
さらに、密室殺人以外にも女子大生連続殺人事件とか、売春とか、
複雑に絡み合ったさまざまな事件の謎が解かれていき、最後に
辿り付いた結末(真相)は、想像以上です(抽象的ですいません)。

中学生のころに読み漁り、18歳で入院したときに、あまりにも
暇だったので(笑)、家にあった赤川作品(80冊程度)を2度ほど
読み返したりと、すっかり赤川作品に馴染んでしまったせいだと
思うのですが、“赤川さんだったら、こうだろう”という風に
読んでしまって、トリックも、真犯人も分かってしまったのですね。
(基本的に再読だから当たり前なんだけれども(笑))
それでも、また読みたい。もう、何度でも読みたい。
そう思わせてくれる、私にとって大切な作品の一つなのでした(^-^)。

『M列車(ミステリー・トレイン)で行こう 日本ベストミステリー選集32』日本推理作家協会編

2005年09月28日 | アンソロジー
オンライン書店ビーケーワン:M列車(ミステリー・トレイン)で行こうM列車(ミステリー・トレイン)で行こう 日本ベストミステリー選集32』日本推理作家協会編(光文社文庫)

ミステリー・トレイン、ということで、“旅と街”をテーマにしたアンソロジー。
「幽霊船が消えるまで」柄刀一、「マン島の蒸気鉄道」森博嗣、
「湯煙のごとき事件』山口雅也は読んだことのある作品でした。
「セヴンス・ヘヴン」北森鴻は、テッキとキュータのシリーズもので、
なんだかこれまでの北森さんとはちょっと違った雰囲気を感じました。
が、これも連作短編の中の一つだということで、親本を読んでみたいなあ。
「迷宮に死者は棲む」篠田真由美は、建築探偵の短編。今回は、桜井京介でも、
蒼でもなく、なーんと深春ちゃんが主役。尾道で出あう“迷宮”のお話は、
短編なのにしっかりと“建築探偵”していて面白かったですよ。

ちなみに、その他の収録作品は「悩み多き人生」逢坂剛、
「危険な乗客」折原一、「三たびの女」小杉健治、「逢いびき」篠田節子、
「愛の記憶」高橋克彦、「阿蘇幻死行」西村京太郎、「山魔」森村誠一。

『夜のピクニック』恩田陸

2005年09月28日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:夜のピクニック夜のピクニック』恩田陸(新潮社)


第26回吉川英治文学新人賞、第2回本屋大賞受賞作。
帯に、“ノスタルジックでリリカルで、いつまでも読み
続けていたい作品”と、池上冬樹の言葉がありますが、
まさしくその通り。夜通し80キロもの道のりを、ただ
歩き続けるだけ、という高校生活最大のイベント「歩行祭」。
私の記憶に当てはめるならば、修学旅行といったところでしょうか。
厳密にいうと私の学校は「修学旅行」ではなく、箱根の山奥に
篭もる「合宿」だったので、それほど楽しくはなかった(笑)。
でも、「歩行祭」も“しんどい”イベントではあるわけですよね。
しかしながら、“高校生活最後のイベント”“最大のイベント”となると、
“これだけはしておかなくちゃ”という気持ちになるんです。

甲田貴子もそんな1人でした。前半はクラスメイトたちと歩き、
仮眠を取った後の後半は、仲の良い友人と歩こうと決めていた貴子。
彼女はこの「歩行祭」で一つの賭けをしていたのです。

ノスタルジーの神様などといわれている恩田さんですが、それだけ
じゃないですよね(当然ですが)。確かに、高校生活最後の一大行事を
舞台に繰り広げられる青春物語、といった趣なのですが、
たかだか1泊2日を友人たちと過ごすだけの話が(歩いてはいますが)、
こんなに楽しくて切ないものだとは、想像できないでしょう。
高校生活って、高校時代って、こんなに大切なものだったのか、と、
改めて思い知らされました。もっと大事に過ごせば良かった!(笑)。

ネバーランド』のような“閉じた世界”ではあるのですが、
だからこその魅力。その辺に私は激しくそそられるんだなあ。

『スローグッドバイ』石田衣良

2005年09月27日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:スローグッドバイスローグッドバイ』石田衣良(集英社文庫)


最近、メディアに出まくっている石田さん。私は見たことがないのですが、
女性誌などで「恋愛相談」なんかもやっているそうじゃないですか!
私は『池袋ウエストゲートパーク』の石田さんしか知らなくて、
これもてっきりミステリーだと思って購入したのです。
が。短編の恋愛小説が10編…。恋愛小説ですよ、短編とはいえ。
マコトの恋愛話だってあまり好ましいとは思ってないのに
(私の中で、マコトはフツーに恋愛したりしないキャラなのです(笑))
う゛、そうですかそうですか…。なんて思っていたのですが、
読んでみると、なかなかいける。いや、かなり良いのです(^-^)。

ほんの些細なことが、恋愛においてはとても重要な意味を持つことがある。
そんなことに気付かせてくれる、ハッピーエンドが10作品。
すべてハッピーエンド、ってのも、バッドエンドを好む私にとっては
鬼門ともいうべきもの(大袈裟^^;)だったのですが、もしかしたら逆に、
それがいいのかもしれませんね。読んでいると、必ずといっていいほど、
私はバッドエンドを予測してたりして(笑)。でも、全部裏切られて、
ハッピーではないにしても、全て前向きな終わり方になってます。
そして、それがいいな、純粋に、幸せな方がいいな、なんて
思うようになりましたもんね(年齢のせいか?(笑))。

ちょっと元気がないときに、読んでみるのがいいかもしれません。
絶対に、裏切りません。そういうお話が、心を元気にしてくれるんですね(^-^)。

『阿修羅ガール』舞城王太郎

2005年09月27日 | ま行の作家
オンライン書店ビーケーワン:阿修羅ガール阿修羅ガール』舞城王太郎(新潮文庫)


少し前の作品なので、私が好きな“勢い”がまだ存分に感じられます。
もう、読み始めてからすぐに、その勢いに持っていかれるんだよね。
それは、主人公のアイコに思いっ切りリンクしてしまっているから、
でしょうか。リンクしているというか、ピッタリ強引にはめられてしまう
という感じ。それがまた舞城さんの勢いでもあると思うのです。

アイコは金田陽治への想いを抱えて悩んでいた。そうしている間も、
街ではグルグル魔人が暴走し、同級生は誘拐され、子供たちは
アルマゲドンを始めている…。

そんな劇的に環境が変わっても、アイコの心は変わらない。
この、まっすぐなんだけれども、ムボウでムテッポウなところが、
だんだんと、いろんなことを経験していくにつれ、思慮深くなるあたり、
わざとらしくなくていい。作者の思惑通りなんだとは思うのですが(^^;)、
そこにはまっているのも快感、というところが、舞城作品の特長かと。

また、笑えるシーンが満載なのもいいっすね。今、思い出しても笑えるし。
「無理。」、紙面一杯使って大きく2文字(。入れて3文字)、「無理。」。
本人を目の前にしても言い切れてしまう潔さ。さすが(何が)。

『マレー鉄道の謎』有栖川有栖

2005年09月27日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:マレー鉄道の謎マレー鉄道の謎』有栖川有栖(講談社文庫)


久しぶりの火村センセ!(笑)、いや、国名シリーズ!
今度は長編です。長編の火村センセも久しぶりなのです。

カバー裏にあらすじが書いてあるのですが、今回のあれは
ちょっといただけない。終盤にならないと出てこない事柄が
書かれてあるので、読みながら「あれ? まだ出てこない」と、
気にしながら読んでしまうのですね。それが残念。
まあでも、私にそんなことは関係なく、最初っから最後まで、
たっぷり火村センセを堪能させていただきました(^-^)。

内容に関してはですね、一言で言うならば、トリックは御手洗級?(笑)。
今回、火村センセとアリスは、大学時代の友人でマレー人の大龍(タイロン)に
誘われて、マレーの楽園、キャメロン・ハイランドを訪れます。
そこで事件に巻き込まれるわけですが、前半は、ゆーったり旅を楽しんでます。
しかも2人っきりで!(笑)。もう、読みながらヨダレが出ます(嘘)。

何がいいんだろうなあ。改めて考えてみると、火村センセのどこに惹かれるのか、
自分でもよく分かってなかったりします。ただ、火村センセにはアリスが
欠かせない。口を開くと、どんなに深刻な場面でもほんわかさせてしまう
アリスですが(笑/だから最後の謎解きのときには口を開かないのでは?)、
そういった不思議な優しさ・柔らかさが、頑なになりがちな火村センセの心を
いい具合に解きほぐしたりするんでしょうね。随分身勝手な解釈ですが(笑)。
そういうアリスがいつも必ず側にいてくれることを知っているから、
火村センセだって、“悪”と、そして“心の闇”と戦うことができる…。
そんな気がします(^-^)。まあ、本格ファンにとっては、この2人の関係、
2人の掛け合い漫才(笑)は、おまけでしかないのでしょうが、私にとっては、
最後の最後にならないと解かれない謎の方がおまけだったりして!(暴言!)。
まあ、このシリーズに関してはとくにそうかもしれません(にっこり)。