紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「魔王城殺人事件」歌野晶午

2004年11月30日 | あ行の作家
ミステリーランドに関しては、私、評価が違うのです。
これまで読んだ中で素直にいちばん面白いと思ったのは
実は「闇のなかの赤い馬」竹本健治だったりします。
しかーし、これって全体的に評価が低い(笑)。
もちろん、「探偵伯爵と僕」森博嗣「虹果て村の秘密」有栖川有栖
「くらのかみ」小野不由美なんかは、すごく楽しみましたが、
でも、読んでて私の子供心をくすぐられたのが、
竹本健治だったんですねえ。
もうね、しょうがないんです。今の私は子供には戻れないから。
子供のときに出会っていたら、きっと違う評価になったでしょう。
でも、無理だもんねえ。…そんな私の感想ですが(笑)。

ストーリーとはあまり関係ないところで、
ちょっとした仕掛けに気付きまして。
それだけで舞い上がってしまいました(笑)。
これって、ほかのミステリーランドの作品にもあるのかなあ。

子供向けにしては、事件はちょっと残酷。
さらに、歌野さんにしては、なんだかストレートに決まったな、と。
もうちょっと捻ってもよかったかなあ、と思いつつ。
でも、人物がとても魅力的なので、物語にすっと入っていけます。
子供たちから見る“刑事”という概念が、これで
覆ったとは思いませんが、とても魅力に溢れていたと思います。

クラスの有志で結成された探偵クラブ「51分署捜査1課」。
いくつかの事件を解決した後、最大の“謎”「デオドロス城」の
怪しい噂の真相を確かめることに。潜入はうまくいったものの、
不可解な事件に遭遇し…。

一つ思ったのは、これ、登場人物を大人に代えても、
まったく問題なく、同じような物語が成立してしまう、ということ。
それがちょっと残念かな。子供らしい、子供ならではの
物語っていうのを期待していると思うのですよ、これって。
そういった意味では、やっぱりアリスや小野不由美ってのは
とても上手いのではないでしょうか。だから逆に、竹本健治のは、
寮という特殊な舞台を設定することで、その辺は確立してるんですよね。
しかも、事件は全部学園の中で起こっているし、謎は魅力的だし。
でも評価が低いのよね(^^;)。それは置いといて…。
「デオドロス城」を学校の施設の一つにすれば良かったのかも。
そうすると、森の中の怪しいお城を探検、なんていう、
今ではなかなか遭遇することのできないストーリーではなく、
ちょっと古い学校だとホントにありそうな話になるじゃないですか。
…そこまで文句つける必要もないか(^^;)。
ま、それだけ、歌野さんには思い入れがあるってことなのです。


魔王城殺人事件(Mystery land)
歌野晶午著

出版社 講談社
発売日 2004.09.15
価格  ¥ 2,100(¥ 2,000)
ISBN  4062705737

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「寡黙な華」榎田尤利

2004年11月30日 | あ行の作家
榎田さんは、とても大好きな作家さんなのですが、
いちばん最初に読んだ魚住くんシリーズのインパクトが強すぎて、
その後にどんなにほぼのぼな作品を読んでも、どんなにシリアスな
作品を読んでも、感じ方が鈍くなってしまっているのです。
あれです。加納朋子とおんなじ。
「ななつのこ」「魔法飛行」のインパクトが強すぎて、
何を読んでもこれ以上のモノが見つからない…。

とは言っても、好き嫌いの激しいBLの中では、ダントツです。
それは何故かというと、物語の方向が私好みだからなんでしょうね。
普通のBL(という言い方もおかしいのですが)は、
男×男というだけで、普通の恋愛小説(少女小説)と
変わらなかったりするんですよね。もともと恋愛モノが苦手な私としては、
それだけでは読めないのです。だから、BLというジャンルは
得意だとしても、その中での好き嫌いが激しいわけなのです。

では、榎田さんの作品の、ほかとは違うところは何でしょう。
多分ですね、やっぱりキャラじゃないかと思われます。
前回読んだ「少年はスワンを目指す」にしても、
ホントの姿は誰にも理解されていない硬派な原と、
心に傷を持ったわがまま王子というカップルは魅力的です。
今回も、鼻持ちならない馬宮辺は濱田センセに似てるし(笑)、
強引で傲慢な邦彦と、どこまでも弱い千蔭はすれ違い過ぎて
どういう展開になるのか心配になるほど(大きなお世話)。
で、まさかあんな風になるとは思わなかったですしねえ。
(ヒドイよ、榎田さぁん。というような展開なんですっ)
でも結局、思った以上に千蔭が強かった、と。
それでみんなが救われました。そういう救いを残してくれるのも、
やっぱり榎田さんらしいのです。
だから榎田さんが好きなんですねえ。


寡黙な華(Shy novels 112)
榎田尤利著

出版社 大洋図書
発売日 2004.09
価格  ¥ 903(¥ 860)
ISBN  4813010318

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「おとなを休もう」石川文子編

2004年11月30日 | その他
小学3・4年生の国語の教科書に掲載された作品
すべての中から、掲載回数の多いものを中心に収録。
帯に椎名誠の言葉もあって、なかなかそそるんですけどね。
残念なことに、「ごんぎつね」以外まったく記憶がない(笑)。
「てぶくろをかいに」が、かろうじて記憶にあるくらい。
もちろん「もちもちの木」という作品は知ってますが、
それは図書館で絵本を見たか、NHKで見たか(笑)。
私の記憶にないだけなのか、やっぱり田舎が迫害されていたのか(違)。

「チワンのにしき」「サーカスのライオン」「青銅のライオン」
などは、タイトルは知ってます。なんとなく内容も知ってます。
やっぱりどれも、良い作品ですよ。小さい頃に触れるべき
作品だと思いますが、でも、やっぱり、大きくなってから
再度触れるべき作品だと、強く思いました。
子供心に“何か”を感じても、それって案外長続きしません(笑)。
折に触れ、何度か触れているうちに、しっかりと心に
“何か”が残るのではないかと。…私だけ?(^^;)

一つ残念なのは、添えられた絵がどうにも下手すぎ(笑)。
せっかくいい作品なのに、心得のない人が仕方なく描きました、
という挿し絵なんですよね。もうちょっとましな絵はなかったんかい。


おとなを休もう
石川文子編

出版社 フロネーシス桜蔭社
発売日 2003.08
価格  ¥ 1,470(¥ 1,400)
ISBN  4896107349

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「屋上物語」北森鴻

2004年11月26日 | か行の作家
デパートの屋上には、子供の夢だけではなく、謎もいっぱい!
通称“さくら婆ァ”と呼ばれるうどんスタンドの、
いや、屋上の主がその謎解きに挑みます。
ストーリーを語るのは、屋上に棲みつくモノたちで、
宮部みゆきの某作品を思い起こさせますね(笑)。
舞台のモデルになったのは、池袋のとあるデパート。
ネットで調べるとすぐに分かります(^-^)。
そこにさくら婆ぁはいなんでしょうが、
東京にいる間に、一度くらいは訪れたいものです。

キャラクターの立った、短編の連作です。
しかしながら、終わり方があっけなくってちょっと寂しい。
それぞれの謎が、実は微妙に絡みあったりもしているので、
思いきって長編にしてもよかったんじゃないかとも思います。
が、そうなったら逆にキャラはそんなに立たなくなるんだろうなあ。

昼時ともなると、サラリーマンはもちろん、近くのOLも
やってきて、長蛇の列ができてしまう“さくら婆ァ”のうどんスタンド。
屋上の一角にあるお社からも、その風景は毎日のように見られます。
最初の物語を語るのは、そのお社に2体ならんだ狐の片割れ。
霊験があらたかだから、という理由ではないらしいのですが、
“彼(彼女?)”には、表面的に見えるモノ以外のことまで分かっています。

こういった細かなエッセンスが、後々結構重要な意味を持ってくるわけです。
そういう細かな積み重ねから生まれるストーリー(謎)と言ってもいいかも。
だからこそ、さくら婆ァのようなアクの強い人物が必要だったのかもしれません。
でも反面、謎が解けるとスッキリする、というようなことはなく、
いろんなことが複雑に絡みあったりしていて、一筋縄ではいかないこともあり、
だから連作短編という形になっているのでしょうが、
なんだかやるせない気持ちにさせられるのも事実。
ちょっと寂しかったり、悲しかったり、もどかしかったり、
そんな気持ちを掻き立てられます。
だからこそ、もっとラストで救ってほしかったんですけどねえ。
なんだかホントにあっけなく、そして素っ気なく終わっちゃうんです。
…そういうところって、北森さんらしい、のかなあ。


屋上物語(祥伝社文庫)
北森鴻著

出版社 祥伝社
発売日 2003.06
価格  ¥ 620(¥ 590)
ISBN  4396331061

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「スカイ・クロラ」森博嗣

2004年11月24日 | ま行の作家
戦争がショーとして成立する世界。
と、カバーの裏にありましたが、
実は今だって、そういう世の中だったりしませんか。
あながち想像の世界だけの話ではありませんよ。
“戦前”といえば、第二次世界大戦を指すのですが、
今の子供たちにはピンとこないようです。
確か、歌野さんだったと思うのですが、
ミステリーランドの作品の中で子供たちに、
「戦前といっても、湾岸戦争じゃないよ」なんて
言ってましたもんね。湾岸戦争といえば、
それこそまるでショーか何かのように、ブラウン管を通して
戦闘の様子がそのままお茶の間に伝えられた戦争の
最初ではなかったでしょうか。
(“ブラウン管”も“お茶の間”もすでに死後だしなあ)
記憶に新しい9・11のテロ、そしてそれを原因とする、
イラクでの戦闘。今ファルージャが凄惨な状態になってますね。
しかもどの映像も、気軽に見ることができてしまうんですもの。

そういう時代に生まれた子供たちは、一体どうなるんでしょう。
その答えが、もしかしたらここにあるのかもしれません。

僕は戦闘機のパイロット。
飛行機に乗るのが日常、人を殺すのが仕事。
2人の人間を殺した手でボウリングもすれば、
ハンバーガーも食べる…。

ガラス細工のような、脆さを秘めた美しさ、とでもいいましょうか。
とてもキレイな“絶望”の物語だと、私は思いました。

“僕”の一人称で語られるこの物語には、説明は一切ありません。
そこがどこなのか、時代がいつなのか、どうして戦争をしているのか。
何も説明されません。でも、いつの間にかすべて理解してしまいます。
気付けば、自分も物語の舞台にいる。そんな気にさせる不思議な物語。
なんとなく、森博嗣の短編の世界に似ていると思いました。
そういう曖昧な世界って、ホントは苦手なはずなんですけどね。
だから、森博嗣のノンシリーズの短編は正直苦手ですし。
でも、この物語は素直に受け入れられましたね。
たぶんそれは、あまりにキレイだったから、なのかもしれません。


スカイ・クロラ
森博嗣著

出版社 中央公論新社
発売日 2001.06
価格  ¥ 1,785(¥ 1,700)
ISBN  4120031586

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「亡国のイージス(上下)」福井晴敏

2004年11月22日 | は行の作家
来年夏に映画が公開されるということで、今さらながら、
手に取ってみました。福井さんの長編は初めてです。
その直前にアンソロジーで短編を読んでいて、
「殺人作法 ミステリー傑作選45」収録「五年目の夜」)
内容は、諜報部とかテロとかいったそっち系なのですが、
まるで落語のような内容(笑)。
しっかり笑いのツボを押さえ、しかもオチまで付いているの。
いやはや。福井さんがそういう方だとは知りませんでした(笑)。
これを読んで、きっと「亡国のイージス」も面白いだろうと
手に取ることができたのでした。

文庫で上下巻ととても長いのですが、
プロローグからエピローグまで、一切無駄がありません。
人が壁にぶつかって、それをどうにか乗り越えても、
実はそれは錯覚にしか過ぎなくて、
人はそんな錯覚の中で生きているんだ、
生きていくしかないんだ、と痛感させられます。
でも、それでも、生きていて良かったと思えるものを、
ちゃんと残してくれているのが、とても嬉しいです。

舞台は最新のシステムを搭載した、海上自衛隊所有の
イージス護衛艦「いそかぜ」。さまざまな人のさまざまな想いを、
そしてさまざまな組織のさまざまな思惑を乗せて、
「いそがぜ」は、訓練航海に出発した…。

意表を突く展開のオンパレード。
しかも、最後にあんな“オチ”まで用意されているなんて(笑)。
長いにもかかわらず、興味を削がないストーリーは、
国家が抱える問題と、登場人物それぞれが抱える世界が、
とても丁寧に、そして容赦なく描かれています。

…できれば、最初から読んでいただいて、じっくり
この作品世界を楽しんでいただきたいなあ、と思うのです。
なので、おおまかなあらずじさえ書くことをためらいますし、
人物の紹介すら(感情がこもりすぎて^^;)ためらわれるのですが、
なんということでしょう、映画「亡国のイージス」公式サイトでは、
その辺のことがあっけなくバラされてしまっているのね(ToT)。
あの長い作品を、2時間程度の映画にするには、省略する部分も
必要でしょうが、あそこであれだけバラされてしまうと、
上巻を読む楽しみが全滅してしまうのですよ、正直。
もし、興味を持たれた方は、まず原作を読んでから
公式サイトを訪れることをおすすめします。


亡国のイージス 上(講談社文庫)
福井晴敏〔著〕出版社 講談社発売日 2002.07価格  ¥ 730(¥ 695)ISBN  4062734931bk1で詳しく見る オンライン書店bk1


亡国のイージス 下(講談社文庫)
福井晴敏〔著〕出版社 講談社発売日 2002.07価格  ¥ 730(¥ 695)ISBN  406273494Xbk1で詳しく見る オンライン書店bk1



「骨音 池袋ウエストゲートパーク3」石田衣良

2004年11月11日 | あ行の作家
シリーズ3作目にして、ようやくパターンが固まってきた感じ。
電車の中で、ときたま笑いをこらえるのに必死になるほど。
言葉ひとつ、ちょっとした描写の一つひとつが面白くなってきました。

「骨音」「西一番街テイクアウト」「キミドリの神様」
「西口ミッドサマー狂乱」の4作収録。
2作目にはなかったですが、本作ではマコトの恋愛話も少し。
池袋という街、そしてそこに“生きている”人たちの
そのまっすぐさがいいんでしょうね。

さて、2作目の最終話から繋がる「骨音」ですが、
…そういう意味だったんですか(^^;)。と、冷や汗をかきつつ。
トラブルシューター(探偵)という肩書きを持ちつつ、
池袋の街を疾走するマコト。もとからそうだったんですが、
なんだかとってもバイオレンス&バイオレンス(笑)。
でもそれを、あの“甘さ”で決着つけます。
そのアンバランスさが、とっても彼らしく、
とっても池袋らしい気がします。そういうところに
ヤられてるんだな、私は(^^;)。

このシリーズは、だんだんと主人公たちも年齢を重ねていきます。
どこまで続くか分かりませんが、その終わりを見てみたい気がします。
どこでマコトは池袋に見切りをつけるのだろう。
どういう見切りのつけ方をするのだろう。
池袋を間近に見ながら読んでいくうち、そんなことを考えました。
(…相当、入れこんでるなあ^^;)


骨音(文春文庫)
石田衣良著

出版社 文芸春秋
発売日 2004.09.02
価格  ¥ 570(¥ 543)
ISBN  4167174081

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「少年計数機 池袋ウエストゲートパーク2」石田衣良

2004年11月11日 | あ行の作家
1作目から少し時間が空きましたが、3作目が文庫に
なったので、まとめて読んでみました。面白かったです(^-^)。

マコトに会うのが懐かしく、そして嬉しく感じてしまったり(笑)。
どうしてこんなに感情移入できるんでしょうね。
たぶんそれは、甘いから。でもその甘さが、私には
合ってるんだと思います。読むほどに、気持ちも若返って、
乗せられて読み進める作品って(しかもミステリーで)、
あまりないかも。なんだろうなあ。私の中には、まだ
青臭い部分があって、そこがたまに少女小説のようなものを 
求めるんですよね(^^;)。自分でもつくづく成長してないなあ、
とか思ってるんですけど、でも、やっぱりこの手のものは、
何度読んでもはまる。そういう風にできてるらしいです(笑)。

「妖精の庭」「少年計数機」「銀十字」「水のなかの目」
の中編(短編?)4作を収録。最初っからマコト、甘いです(笑)。
あでも、小沢さんの甘さとは違いますけどね(何人分かるんだ?^^;)。
なんだか胸を鷲掴みにされるくらい切なくなったのは、表題作。
数を数えるとこでアイデンティティを保っている10歳の少年・
ヒロキとマコトの友情の物語(大ざっぱにいえば、こんな感じ?)。
ヒロキの一途さ、一生懸命さが切ないんですよねえ。
そこにマコトもヤられます(笑)。
違った意味で印象深かったのは「水のなかの目」。
“それはマコトさん的にはアリなんですかっ”という結末。
ただ、何もしなかっただけ。なので、何かをしたわけではない、と。
そういうことですか。いいんですかそれで。とか思っていたのですが、
マコトが選んだ結末“だから”いいんです。そういうことです。

そんな風に、今までとはちょっと違う風を呼んでおいて、
次巻へ続きます。


少年計数機(文春文庫)
石田衣良著

出版社 文芸春秋
発売日 2002.05
価格  ¥ 540(¥ 514)
ISBN  4167174065

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「赤ちゃんをさがせ」青井夏海

2004年11月09日 | あ行の作家
NHKでドラマ化されてたんですねえ。知りませんでした。
作者は女性で、探偵役はじめ登場人物がほぼ女性。
助産婦さんのお話なんで必然的にそうなるんでしょうが、
賑やかというかなんというか。…ハッキリ言っていい?
私、この手の主人公、苦手なんですよね(^^;)。

主人公は見習い助産師の陽奈。産院に務めるかたわら、
先輩で自宅出産を取り扱う出張専門の助産師・聡子を
手伝っている。2人が出かける先にさまざまな事件が
待っていて…。

「おかあさんをさがせ」「おとうさんをさがせ」
「あかちゃんをさがせ」の3作収録。
ミステリーとはいっても、殺人とかではなく、すべて
出産にまつわる謎を、陽奈でも聡子でもなく、
大先輩で伝説の助産師・明楽先生(♀)が解くのです。

実は、謎解きはそんなに魅力的ではなかったりします。
というか、謎自体は面白いと思うんですね、
今までにないようなスタイルだし。けれど、なんというか
謎解きは2時間サスペンスにありがちというか、
もう一皮むけると、とっても面白くなりそうなのに。
謎自体が面白い分、謎解きはもっと魅力的じゃないとなあ、
とか思ってしまうのですね。欲張りですけど。

しかも、私にはこの陽奈がネックになってしまってねえ。
明るいイマドキの若者なのですが、助産師という立場で
ありながら、そんな行動取るなんて信じられない !
妊婦に接する仕事なのに、あまりにも配慮に欠けた行動が目に余ります。
物語的には、彼女が好奇心を持っていろんなところに
突っ込んでいかないと話が進まないのかもしれませんが、
“若いから”とか“ホントはいい子なんだけど”では
済まされない気がするんですよね、彼女の行動って。
それを書いているのがまた女性だっていうのも、
なんだか同じ女性として納得いかない。
妊婦さんが読むと気を悪くするんじゃないかなあ。
とか思ってしまいます(妊婦さんはミステリー読まない?)。

冷静に、物語だけ読んでいるとそれなりに面白いんですけどね(笑)。


赤ちゃんをさがせ(創元推理文庫)
青井夏海著

出版社 東京創元社
発売日 2003.01
価格  ¥ 672(¥ 640)
ISBN  448843102X

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「堕天使殺人事件」新世紀「謎」倶楽部

2004年11月08日 | その他
実は初めて手にとります、新世紀「謎」倶楽部。
しんせいき「みすてりー」くらぶ、と読むんですね。
二階堂黎人、柴田よしき、北森鴻、篠田真由美、村瀬継弥、
歌野晶午、西澤保彦、小森健太朗、谺健二、愛川晶、芦辺拓。
人気のミステリー作家11人が勢ぞろいしました。前の人が何を
書いたかは、手元にもらうまでまったく分からないのだそうです。
前半の人はネタふりし放題だし、後半の人も、伏線を一つ
くらい拾っておけば、まだ謎を組み込むことだって可能だし、
いちばん大変なのは、最後を受け持つ人なんでしょうね。
なんてことを考えながら読んでました。それがまた面白いこと(笑)。
でも、巻末に、それぞれの方の“予測”が添えられているんですね。
その予測は原稿と一緒に回されたわけではないと思うのですが、
だいたい最初から最後まで一貫して共通している部分があるんですよ。
さすが“人気ミステリー作家”といわれるだけのことはあるなと、
この方々が売れるのが分かった気がしました。

ストーリーは大変です(笑)。
北海道は小樽を舞台に繰り広げられる猟奇殺人。
小樽運河で発見されたのは、6人のパーツを合わせて女性1人分の
死体を作り上げられたもの。しかも死体はウェディングドレスを
着せられていた。一方、地方の新聞社に恐ろしいビデオテープが
送り付けられる。犯人の名前は“堕天使”-。

最初の二階堂さん、これでもか! というくらい
ネタを盛り込んでます(そんな風に見えます/笑)。
こういうのって、性格が表れるんじゃないでしょうか。
自分のシリーズキャラを登場させる方もいるんですが、
ちょっと残念だったのは、そのキャラを次の方も動かさないと
いけなかったりすることですね。違う人が他人のキャラを動かした
ところで、それを知っている読者からすると、ものすごい違和感が
あるんですよねえ。思い入れが強かったりすると余計に(笑)。
までも、そういうところは目をつぶるとして、
全体的にとても面白く読みました。単純にストーリーだけを
楽しむのではなく、この人はどういう風にふられたネタを
消化していくのだろうと、そっちの方が読んでて楽しかったり。
このシリーズ、確かもう1作出てるんですよね。
「前夜祭」かな。…文庫にはなっていないようですねえ。
これは人数を減らして6人のリレー。ストーリー重視にしたのかな(笑)。

堕天使殺人事件(角川文庫)
新世紀「謎」倶楽部〔著〕

出版社 角川書店
発売日 2002.05
価格  ¥ 900(¥ 857)
ISBN  404349503X

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「φは壊れたね」森博嗣

2004年11月05日 | ま行の作家
森ミステリィ、ここに極まれり。みたいな(笑)。
森博嗣の新作は“Qシリーズ”というようですね。
どんな由来があるのかは分かりませんが。
ま、Vシリーズだって紅子(venico)さんのVだし(笑)、
どこかに何か、ちゃんとした理由があるのでしょう。
(想像できませんが)

なんといいましょうか。
「すべてがFになる」から始まるS&Mシリーズを読破し、
「黒猫の三角」から始まるVシリーズはまだ途中なのですが
(文庫派なのでね)、四季4部作も読み終えた私としましては、
このQシリーズで単純に“森ワールド”を楽しむ術を心得ました。
という感じです(何)。
Vシリーズあたりから薄々感じてはいたんですけどね、
何より、Vシリーズからついてこられなくなった読者も
たくさんいたし、それが何よりの証拠なんだと思いますが、
ハッキリ言ってしまえば、同人誌っぽいんです、ノリが。
ある意味、内輪うけだったりとか、キャラを楽しむ作品に
なっていたりだとか、そうすると、謎の部分っておまけなんだよね。
そしてさらに、各シリーズを通しての壮大な世界観も、
同人誌っぽい。というか、らしい。でも、それって逆に、
森博嗣の原点に戻ったんじゃないかな、という気もしてますけどね。
なので、私にしてみれば、よりいっそう、心から
作品世界を楽しみました(^-^)。で、改めて、
ずっとついて行けるなと思ったし、ついて行こうと思いました。

時系列としては、S&Mシリーズ終了後、短編集に
収録された作品の中でも着実に成長していた萌絵たちが、
そのまま登場します。主人公となるのは、萌絵が、というか
国枝先生が移った研究室に(C大学だっけ)なぜか萌絵が
いて、そこに所属する学生たちです。
山吹皐月、加部谷恵美、海月久介という3人が主に活躍します。
山吹皐月は、久しぶりに会う友人のマンションへ行くのですが、
そこで殺人事件に巻き込まれます。過剰に装飾された
部屋で発見された死体は宙づりにされ、しかもそこは密室で…。
ここにうまい具合に萌絵がからんでくるんですね、当然ですけど(笑)。
なんだかそういうことを考えていくと、この作品自体が、
このシリーズのプロローグのような気がします。

で、あれって性別誤認トリックなんでしょうか(笑)。
ま、でも、トリックには使われていないので、
伏線でもなんでもないのかなあ。でも、油断してると
最後に大きなどんでん返しが来たりするんだよねえ。
なんて読み終わってからも考えてたりします(笑)。


φは壊れたね(講談社ノベルス)
森博嗣著出版社 講談社発売日 2004.09.09価格  ¥ 861(¥ 820)ISBN  4061823922bk1で詳しく見る オンライン書店bk1



「乱れからくり」泡坂妻夫

2004年11月04日 | あ行の作家
日本推理作家協会賞長編賞受賞作、ということで、
とても期待をして読みました。
泡坂さんは今までハズレがないんです(^-^)。

隕石に当たって命を落した玩具会社の部長・馬割朋浩。
それを機に、馬割家の人たちが次々と不可解な死を遂げていく。
男まさりの女探偵とその助手が捜査を始めるが…。

事件が次々と起こっていくごとに、“何か”仕掛けが
あるのは分かるのに、それが何だかハッキリしなくて、
もどかしい思いをします(笑)。
ただ、犯人は早い段階で分かってしまいました(笑)。
犯人が分かったところで仕掛けは分からないんだなあ。
その辺が泡坂さんの魅力なんだよねえ。
しかも、“からくり”が壮大すぎ(^^;)。
まるでルパン(怪盗紳士&3世)を見ているようでした(何)。


乱れからくり(創元推理文庫)
泡坂妻夫著

出版社 東京創元社
発売日 1993.09
価格  ¥ 651(¥ 620)
ISBN  4488402127

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