紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

『シャーロック・ホームズの事件簿』コナン・ドイル

2005年06月14日 | か行の作家
位置的にいうと、ホームズ晩年の事件、といったところでしょうか。
引退間近、もしくは、引退後の事件まであって、ちょっと“冴え”に
欠ける気がするのは、気のせいでしょうか(笑)。
これまでは基本的に、ワトソンくんの記述による物語だったわけですが、
ここにきて、ホームズが自分で記したりしていて、そういうところは
面白かったです(^-^)。

「ソア橋」は、不可能犯罪系(そんなのがあるのですか^^;)なのですが、
このトリックに関しては、いろんなところで見かけます。評価高いです。
が、実はいまいちよく分かってなかったりして(笑)。いや、トリック
自体は一応理解しているつもりですが、どうすごいのかが分からない。
きっと、私は何かを見落としているんだろうなあ(^^;)。
それにひきかえ、「這う人」は、事件が起こった段階で、ホームズよりも
先に分かっちゃいました(笑)。たぶん、これはみなさん分かりますよね。
いちばん面白かったのは「三人ガリデブ」でしょうか。これって、
狙ってない?(笑)。タイトルを見ただけでいろいろと想像して
しまったのですが(細い人と太い人が3人いる図など(^^;))、
あまり影響なくてよかったです(何)。全体的に“動”の事件よりも、
やはり“静”の事件の方が多かったでしょうか。


シャーロック・ホームズの事件簿』コナン・ドイル(新潮文庫)

「螺旋階段のアリス」加納朋子

2005年05月30日 | か行の作家
アンソロジーで何作はは読んだことがあった、アリスシリーズ。
加納さんの文庫になった作品は全部読んだと思っていたけど、
これだけ読んでなかったのですね。

最初はどうってことなかったんですよ(笑)。サラリーマンを
辞めた中年のおじさまが、私立探偵を開業したところへ、
突然やってきた“アリス”。お嬢様みたいな(というか、
実際もお嬢様なのですが)彼女と、おじさま探偵のコンビが、
依頼された“事件”を解決していく、という連作短編。
途中まではこんな感じ。でも、終盤に近づくほど加納さんらしくなる。

加納さんらしさというのは、切ないというよりも“心に痛い”ところ。
どうしてアリスは現れたのか、どうしてありすは去ったのか、
それぞれの謎解きとは関係なくストーリーによって運ばれていく
もう一つの、そして本当の“謎”が、心に痛いのですよ。
しかも、今回は“アリス”というだけあって、ロマンティックに魅せて
おいて、実はとてつもなく残酷だったりするんですよね(^^;)。
そこがまた好きなところでもあるのですが。
本作でまだ解決していない“謎”があるわけですが、それは次作に
持ち越し、なんでしょうね。文庫落ちが待ち遠しいな(^-^)。


螺旋階段のアリス」加納朋子(文春文庫)

「新・世界の七不思議」鯨統一郎

2005年05月17日 | か行の作家
デビュー作「邪馬台国はどこですか?」の続編というか、姉妹編。
今度は、日本の歴史上の謎ではなく、ぐっと大きく視野を広げて
“世界の七不思議”を、在野の歴史家・宮田が斬ります。

舞台は「スリーバレー」といううらぶれたバー。バーテンの
松永、常連客でライターの宮田、歴史学者の静香までは前作同様。
今回はそこに、静香が連れてきた来日中のペンシルバニア大学教授・
ジョセフが加わります。もちろん歴史学者で、日本語も堪能。
来日中の仕事を終えて、本来ならば静香と京都観光を楽しむはずが、
多忙な静香にふりまわされて、毎日「スリーバレー」に通うことに…。

と、ここまで舞台はそろい、毒舌静香とか、料理上手なマスター、
実は博識の宮田とキャラクターもしっかり固まっているのに、
なんだか扱うネタが小粒過ぎる気がしたのです。残念。
“世界の七不思議”と大きく風呂敷を広げたわりには、着地地点が
とても貧相だったり、あるいは、どこかで聞いた説だったり。
「邪馬台国」では、あれだけ自分の知識をひけらかした宮田が、
世界の七不思議については全く知らない、という設定もおかしい。
そこで聞いただけの話を組み立てて“新説”を築くわけですが、
その段階で、世界の神話や歴史的なことはやはり知ってるわけ
ですよ、宮田さん。なのに、七不思議のことだけ知らないなんて、ねえ。

でも、そういった矛盾を抱えつつも、ツッコミながら読む、という
楽しみができるほか(笑)、回を追うごとに豪華になっていく
バーの設備に注目してほしい。いきなりスクリーンが表れ、みんなで
静香のサイトを見ることができたり、しまいにはそれが進化して
各席(といってもカウンターなのに)にパーソナルモニターが
設置されたりしています。バーの経営はどうなんだ? もしほかに
客が来ているならば、彼らの反応はどうなんだ?といった
疑問も解決されないまま(笑)、鯨さんらしい乗りで終始するのが、
この作品の醍醐味なんだと思いますが、いかがでしょう(^-^)。


新・世界の七不思議」鯨統一郎(創元推理文庫)

「顔のない男」北森鴻

2005年04月27日 | か行の作家
以前読んだ「闇色のソプラノ」と同じくらい、
お腹の中に“違和感”がどっしりと居座って、
あまり良くない気分で読み進みました(^^;)。
しかーし。それも全部計算づくだったのね、ということ。
工藤さんや陶子さん、那智先生などが出てくる物語は、
安心して楽しめるのだけれども、本作や「闇色のソプラノ
共犯マジック」といった、ちょっと変わった雰囲気の
物語も北森さんは書くのですねえ。といっても、これらが
面白くないのかというと、そうではなく、練りに練られた
その“構成”を楽しむ物語に仕上がっているのです。

雑誌連載時は連作短編という形をとっていたようですが、
1冊にまとまるとハッキリ分かりますね。これは長編です。
根底に流れるのは“顔のない男=空木”の存在。
全身骨折で死亡した男・空木の身辺を探るうち、
2人の刑事は、次々と新たな事件に遭遇していきます。
空木に少しでも近づいたと思ったら、いきなり突き放される…。
そんなことを繰り返されると、途中で止まらなくなる
じゃないですか(笑)。後半は一気に読んでしまいましたとも。

何がすごいって、これだけ違和感というかイヤーな感じを
味わいながら(笑)、それでも、主人公同様に振り回されつつ、
しかも物語にぐいぐい引き込まれていくんですよ。たぶん、
作者の思惑通りに翻弄されたんじゃないかと思います(笑)。
ついでに言っちゃいますが、ラストは「ほほーっ」と
ため息モノです(^-^)。あっ。それから、名前は明かされ
ませんが“三軒茶屋のビアバー”、出てきますよー。


顔のない男」北森鴻(文春文庫)

「対岸の彼女」角田光代

2005年03月31日 | か行の作家
人は、一人では生きていけない。
そんな当たり前のことを、心に刻みつけられる物語。
そして、間違いなく、女性のための物語でもある。

結婚している女性、していない女性。
子供のいる女性、いない女性。
結婚していても働いている女性、働いていない女性。

こうやって並べるとよく分かるのですが、年齢に関係なく、
“女性”にはいろんな種類があるのです。しかも、
こうやって色分けしているのは、女性自身だったり。

女性は、人生において選択に迫られたとき、
どちらを選んでも、必ず“言い訳”を用意してます。
それはたいてい、自分を許すため。

仕事を続けたかったけど、夫が家にいてほしいと言うから。
(夫のために家庭を選んだ私は偉い)
子供のことを考えると、家にいた方がいいと思って。
(子供のために自分を犠牲にした私は偉い)
もう少し経済的に余裕ができてから、子供を産みたい。
(今、子供ができても、余裕がないと子供にとってもかわいそう)
結婚はいつでもできるけど、この仕事は今しかできないから。
(社会的地位を獲得した私は偉い)

そして、同じ言い訳を持つ人たちとつるんで、お互いを許し合う。
でも、そんなことをしていても、いや、すればするほど、
言い訳まみれになって、結局自分自身を見失ってしまう、
“こんなはずじゃなかった”と。

でも、そういう“他人”は、本当は必要なのです。

なんだか矛盾してるんだけど、でも、心に響く。
さすが、第132回直木賞受賞作だなあ、と(笑)。
角田光代は初めて読みましたが、読みやすいし、
案外面白いと思いました。でも、この作品はしんどかったけどね。


「対岸の彼女」角田光代(文藝春秋)

「壺中の天国」倉知淳

2005年03月17日 | か行の作家
読み終わってしばらく経っているのですが、
改めて、いろんな方の書評などを見ているうちに、
ようやく“本来の姿”が見えてきた模様(^^;)。
ああ、私はやっぱりパンピーだったのねぃ。
しかもまた勘違いをしていて、ずっと猫丸先輩が
出てくるのを待ってたりして(出てきませんよ(笑))。
結構ボリュームはあるんですけど、ほとんど一気に
読んでしまいました。楽しかったです。

閑静な地方都市で起こる通り魔事件。電力会社の
送電線鉄塔建設に対する反対運動に燃える人あり、
また一部では“電波系”怪文書を話題にする人あり、
そして無差別な殺人鬼に殺される人あり…。

被害者たちに共通点がない、いわゆる“ミッシング・
リンク”。そこへ持ってきて、“電波系”の怪文書。
これらがどう繋がっていくのか。主人公たちは、
それをワイドショー的に語るわけです。その中に、
被害者の殺される直前の話が挿入されたり、また
違う人物の話が挿入されたりと、その構成も面白い。
謎解きよりも私は、そっちの小ネタの方が面白かったぞ(笑)。

主人公は、働くシングルマザー・知子さん。元気な彼女が
とてもいきいきしてて素敵(^-^)。娘をはじめ、彼女を
取り巻く人たちも、なかなか個性的でいい感じ。
シニカル、というわけではないけれども、でも、物事を
正面からまっすぐ見ているだけではない、というところが
深くて好き(笑)。あんなことやこんなことがあっても、
でも、人は極力自分だけでも“普通”に生活しようとするんですね。
…というツッコミはありでしょうか(笑)。


「壺中の天国」倉知淳(角川文庫)
【カバー裏より】
 「全能にして全知の存在から電波を受信している私を妨害しないで頂きたい」――静かな地方都市で奇妙な怪文書が見つかる。それは、あたかも同市で発生した通り魔殺人の犯行声明のようであった。その後第二、第三の通り魔殺人が起こるごとに、バラ撒かれる「電波系」怪文書。果たして犯人の真の目的は? 互いに無関係に思える被害者達を結ぶ、ミッシング・リンクは存在するのか……。本格ミステリの歴史に燦然と輝く、第1回本格ミステリ大賞受賞作!!

「なみだ研究所へようこそ! サイコセラピスト探偵波田煌子」鯨統一郎

2005年03月16日 | か行の作家
…あやうく投げつけるところでした(^^;)。
ぐっと踏みとどまったのは、鯨さんだから。
冷静になって観察してみると、内容は面白いんですよ。
何がいけないかって(あ、ハッキリ言っちゃった(笑))、
やっぱり文章の善し悪しですかね。鯨ファンにお聞きしたい
のですが、鯨さんって、文章書くの上手くないですよね?(笑)。

新米臨床心理士として松本清が働くことになったのは、
メンタル・クリニック「なみだ研究所」。ここには、
伝説のサイコセラピスト・波田煌子がいるのだ。

“伝説”と呼ばれるサイコセラピストの何が伝説かって、
まともな処置もできないのに、患者を治してしまうところ。
それがまったく論理的じゃないから、落ち着かなくなる。
何を狙っていて、どこまでが作為的なのかが分からないのも、
鯨作品の特徴なのかもしれませんが(^^;)、読んでて
不安になるのは、ちょっと恐ろしい(笑)。でも、それが
上手く噛み合うと、面白い作品になるんだけどなあ。

また恐ろしいことに、これに続編があるというじゃないですか。
今度は煌子さん、サイコセラピストではなく、警察組織に
入って、プロファイラーとして活躍するそうです。
…活躍、するのか?(^^;)。


「なみだ研究所へようこそ! サイコセラピスト探偵波田煌子」鯨統一郎(祥伝社文庫)

【カバー裏より】
 ここはメンタル・クリニック〈なみだ研究所〉。新米臨床心理士として働くぼくこと松本清は、最近目眩に悩んでいる。あいつ、波田煌子(なみだきらこ)のせいだ。貧相な知識にトボけた会話。こっちが病気になりそうなおに、なぜか患者の心の悩みをズバリと言い当て、その病を治してしまう。本当に彼女は伝説のセラピストなんだろうか。そして今日もあの不思議な診療が始まった……。

「僕を殺した女」北川歩実

2005年03月11日 | か行の作家
初・北川歩実。しかもデビュー作ということで、
作品にも少し気負いと硬さを感じつつ、読む方も、
ちょっと緊張していたりして(笑)。
なんというか、この作品のこの気負いに、
なんとなく「月光ゲーム」を思い出したり(笑)。

ある朝目覚めると、僕は女になっていた。
しかも、5年後にタイムスリップしている!

まず、こういう状況を納得するのに随分時間がかかりました。
その最初の部分が少し難解な感じがするんですけど、
最後までこの“じれったさ”を引っ張り続けながら
読ませ切る、というのはスゴイ力なんだと思いました。

主人公にとっては“自分探し”ということになるのですが、
彼(というか彼女)に関わる人たちにもそれなりにドラマが
あり、さらに次々と“謎”にぶつかって、主人公と同じ
目線で物語を進んでいく読者にとっては、ホント、
じれったいことこの上ない(笑)。だって、全く何も
分からないんだもん。しかも、なんだかとてもうさんくさかった
宗像が、最後にはかっこ良く見えてくるから不思議(笑)。

最後で憑き物が落ちたようにスッキリ、というわけには
いきませんでしたが、それはほら、やっぱりデビュー作だから。
最後の最後でも、また仕掛けを一つ仕込んであるわけですよ(^-^)。
読み終わってから全体を眺めてみると、とても面白い作品だと思います。


「僕を殺した女」北川歩実(新潮文庫)

「孔雀狂想曲」北森鴻

2005年02月25日 | か行の作家
森さんといえば、最初に読んだのは「狐罠」でした。
ハマったのは「メイン・ディッシュ」、抜けられなく
なったのは「花の下にて春死なむ」の香菜里屋です。
それ以来、毎回うならされてきたわけなのですが、
今回は久々の連作短編。しかも、扱うのが骨董!
短編なので、毎回登場する骨董品も違っていて、
それぞれに持ち主の思いとか、骨董品そのものの
いわくとか、そういう話も面白いのですが、
やっぱり、主人公のキャラクターが魅力的ですね。

骨董商「雅蘭堂」の店主・越名集治は推定30代。
生活に密着した“古物商”という面持ちのそのお店で、
さまざまなドラマが展開されます。
骨董にありがちな、騙し騙されということから、
果ては大きな事件まで、どれも主人公の突拍子もない
発想から推理が展開されていきます。
そして何よりこの越名さん、どことなく工藤さん
似てるんですよね(どちらも見たことはないですが(笑))。

同じ骨董を扱う「狐罠」は女性が主人公のハードボイルドでしたが、
こちらは、北森さんらしい優しさ溢れるミステリーです。
ちなみに、陶子さんは出てきませんが、畑中さんが出てきます(笑)。


「孔雀狂想曲」北森鴻(集英社文庫)

「占い師はお昼寝中」倉知淳

2005年02月16日 | か行の作家
投げっぱなしが気になるっちゃあ気になるけれども、
これが安楽椅子探偵の王道でしょう、といえば、そうだと思う。
なんせ、まったく出張っていきませんからね。
謎解きは、「たぶん、こんなことだと思うよ」的なモノなのですが、
なんせ探偵役が占い師なので、これでいいんでしょう(笑)。

渋谷のおんぼろビルにある「霊感占い所」。大学に通うために
上京した美衣子は、アルバイトとしてそこで叔父・辰寅の
助手をつとめることになる。しかし、占い師である叔父の
“ご託宣”はどれもでたらめで…。

分かった。これを読んだ後だったから、余計に
「なみだ研究所へようこそ!」がうさんくさく感じたんだ(笑)。
それは置いといて。

なんだろうな。途中で、気付いたんですよね。
辰寅の示す謎解きは、いくつか考えられる解答なかの
1つでしかない、と。それが正しかったのかどうか。
答え合わせがされないのですね。この作品の場合、
それでもいいんだろうなとは思うのですが(占いだし)、
一度気にすると、最後まで引っ掛かってしまいました。


「占い師はお昼寝中」倉知淳

「オペラ座の怪人」ガストン・ルルー

2005年02月10日 | か行の作家
映画がとても好評なようです。
そういえば、舞台もやってるんでしたっけ。
タイトルとあらすじは知っていたけど、
実は未読だった超有名作品、やっと読めました。

ガストン・ルルーといえば、昨年「黄色い部屋の謎」
初めて読んだわけですが、“ミステリー”という印象が強く、
しかも、オペラ座の怪人をモチーフにした作品には
漫画も含めてミステリーが多いと思うのですよ。
なので、きっとミステリーの要素が含まれているんだろうなと、
そう思いながら読み始めたわけです。

実際、密室や誘拐、殺人などの事件は起こるのですが、
これが全然ミステリーっぽくない。言ってしまえば、
それらはとても些細なことで、作品全体を通して感じるのは、
“不吉さ”であったり“恐怖”であったり、
そして“哀れみ”や“愛おしさ”といった感情。
これが、この物語のすべてなんだと思いました。

正直に言ってしまえば、読みにくかった(笑)。
でも、駅がワープしてしまうほどのめり込んだ部分が
あったのも事実。小難しかったりまどろっこしかったり
する部分はすっ飛ばしてるのですが、反面、ぐぐっと
惹きつけられるところも多い。不思議な作品です。
しかも、読み終わった後に何が残ったかといえば、
快感でも満足感でも、不満でも焦燥感でもない。
ページをめくるごとに心に澱がたまっていって、
最終的にその“重さ”を実感した、という感じ。
なので、別の作家が続編を書いたという理由が
なんとなく分かる気がしました。で、これは一度
舞台なり映画なりを見ないといけないな、とも思いました。
何をどういう風に描いているのか、というのが気になります。
「マンハッタンの怪人」「ファントム」も、それからだね(笑)。


「オペラ座の怪人」ガストン・ルルー

「隠された庭-夏の残像・2-」ごとうしのぶ

2005年02月09日 | か行の作家
タクミくんシリーズ18(だったと思う)。
どうやら、“夏の残像”は3まで続くらしい。
長い夏休みだこと(笑)。

なんだかなあ、なんだかなあ、なんだかなあ!(クレッシェンド)。
※注意:阿藤快ではない(わかってるっちゅーねん)
落ち着きすぎて、どきどきハラハラもしないし、
かと思えば、意味深すぎて何が何やらさっぱりわからん。
…期待しているだけに、あまりの薄さに暴言を吐いてしまったわ(笑)。
なんだかねえ、新しい試みだとは思われるのですが、
それぞれのカップルの、それぞれの“夏のイベント”というカタチで、
いろんなことが同時進行してるんですね。そしてそれが、
最終的に一つの面白い物語になる、ということだと思います。
ミステリーにもそういう構成というのはあるんですが、
ちゃんと1冊で終わるじゃないですか(笑)。
私がこだわってるのはそこだけなんだけどなあ(笑)。

「炎の蜃気楼(ミラージュ)」も長いシリーズだったけれども、
あっちは10年ちょっとで40巻+番外編たくさんが出てるのね。
でもこっちは、10年ちょっとでまだ本編が20巻にも足りない。
(託生たちはこんなにも長い間高校生をやっているのですねえ(笑))
たぶん、CDとかそのたもろもろはミラージュだって
同じくらい出ていると思われるので、考慮しないとしても、
ごとうさん、寡作なんでしょうか。それとも、
待っている作家さんに限って、なかなか新作が出ないだけ?

文句ばっかり言いましたが、やっぱり好きなんですよね。
さわやか系BLの元祖って感じじゃないですか。
おおや和美のイラストだって好きですし。
とにかく。次は早く出してくださいねっ。


「隠された庭-夏の残像・2-」ごとうしのぶ

「猿若町捕物帳 巴之丞鹿の子」近藤史恵

2005年02月07日 | か行の作家
以前読んだ「ほおずき地獄」の前の作品。
こちらが、シリーズ第1作となります。

時代モノ、しかも同心というと、思い出すのは
宮部みゆき、もしくは出久根達郎。猿若町といえば、北森鴻。
とまあ、よく似た時代の作品を読んできましたが、
さすがにどれともかぶりません。
やっぱり下地に“歌舞伎”があるからでしょうか。
(でもあんまり歌舞伎は関係ないんですけどね)

江戸の町で、若い女性だけが殺される事件が発生する。
同心・玉島千蔭は、殺された女性がみな“巴之丞鹿の子”という
人気役者の名前が入った帯揚げを使ってたことを不審に思い、
当の役者・巴之丞に会いに、猿若町へと足を運ぶ。

前作では気さくに話していたご両人、ここでご対面なのですねえ。
これに花魁の梅が枝が絡んでくると、さらに面白くなります。
カタブツの千蔭さんも面白いのですが、個人的には
巴之丞と梅が枝の関係がなんだかとてもうらやましい(笑)。
事件はとても鮮やかに解決され、町から悪い者だけが排除される、
というのもなんかかっこいい終わり方だと思いませんか。
続き、出ないのかなあ。


「猿若町捕物帳 巴之丞鹿の子」近藤史恵

「ほうかご探偵隊」倉知淳

2005年01月25日 | か行の作家
ミステリーランドの最新刊ですね(確か)。
倉知さんらしい、ほんわかした中にも鋭いひらめきが
ちりばめられた、とても楽しい作品でした。

5年3組に「連続消失事件」が発生する。
なくなったものはどれも“不用物”ばかりだけれど、
1日おきに物がなくなることには、意味があるのか?
5年3組の4人組が捜査に乗り出した!

ここで起こる事件は決して生臭いものではなく、
なんとも小学生らしい“できごと”ばかり。
それでも、江戸川乱歩に心酔している龍太郎の推理は鋭く、
いろんな“手”を見せてくれます。
本書の特徴は、解決部分がとても長いこと(笑)。
当然、これにもちゃんとした理由があって、
最後の最後まで楽しめる仕組みになってます。

あくまでも私の感想ですが、ミステリーランドの中で、
いちばんわざとらしくない“子供向け”の作品だと思いました。
とても評価の高い「虹果て村の秘密」とか「くらのかみ」とか、
もちろん私も好きですが、でも、どうしても
“子供向け”ということを、とても意識しているように
思えるんですね。逆に、私が素直に楽しめた
「闇のなかの赤い馬」とか「探偵伯爵と僕」なんかは、
“子供向け”をまったく意識していないんじゃないかと思ってます。
だから、あまり違和感を感じない後者が私は好きなのですね。
で、これは“子供向け”を意識しているのに、違和感を感じない。
たぶん、究極の“日常の謎”なんだろうな、と想像しました。
倉知さんだからこそ描けたんじゃないかな、なんて。
ということで、とても楽しませていただきました。


「ほうかご探偵隊」倉知淳

「玩具修理者」小林泰三

2005年01月06日 | か行の作家
“グロい”という噂を聞きつけ(どこから?)
手に取ってみましたが、思ったよりグロくなかったです。
多分、綾辻の方がもっとグロい。
(表紙の目玉が綾辻を思い起こさせました(笑))
少し読んだだけで、結末も簡単に分かってしまうし。
でも、面白くないわけではない。いや、面白いのです。
なぜかというと、語りが上手いのですね。
“ホラー”というと、もうでき上がった小説ですから、
物語の善し悪し、内容はもちろん構成や展開のさせ方ですね、
それが問題になるのですが、“怪談”といったら、
やはり基本は語り口なんだと思います。
ホラーではあるけれど、やっぱりこれは怪談ですよ。
その辺りがきっと第2回日本ホラー小説大賞短篇小受賞なのかな。

といいつつも、実は同時収録の中編「酔歩する男」の方が好き(笑)。
表題作はその事象、事柄、起こったことが怖いのですが、
「酔歩する男」は、心理的に恐ろしい。
じわじわと真綿で首を絞められるように、
読めば読むほど徐々に背筋が冷たくなっていく、そんな感じ。
書評などを見ていると、やはりこちらの方が評価が高いようです。


玩具修理者(角川ホラー文庫)
小林泰三〔著〕

出版社 角川書店
発売日 1999.04
価格  ¥ 504(¥ 480)
ISBN  4043470010

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