紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

『失はれる物語』乙一

2007年04月03日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:失はれる物語失はれる物語』乙一(角川文庫)

表題作ほか7編を収録した短編集。
厳密にいうと、ミステリではないかもしれません。
(というか、ミステリはたぶん2つだけ)

実は、表題作の「失はれる物語」はそれほどではなく(笑)、
ケータイをモチーフにした「Calling You」とか、
心に傷を負って生きている少年たちの物語「傷」の方が好きです。

中でも、殺人事件のあった家で1人暮らしをすることに
なった引きこもりぎみの大学生と、白い子猫の話、
「しあわせは子猫のかたち」は、乙一らしく、
鳥肌が立つほど切なくなります。

短編集なので、気楽に読めて良いかも。
「マリアの指」は、これまた乙一らしいしかけもあって、
しかもミステリ仕立てなので、良いかも、です。

『ラッシュライフ』伊坂幸太郎

2005年09月29日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:ラッシュライフラッシュライフ』伊坂幸太郎(新潮文庫)

“謎解き”というよりは、“犯罪小説”といった趣。
オーデュボンの祈り』以来、伊坂さんを読むのは2冊目です。

泥棒を生業とする男は、新たなカモを物色する。
父に自殺された青年は、神に憧れる。
女性カウンセラーは、不倫相手との再婚を企む。
職を失い家族に見捨てられた男は、野良犬を拾う。
そして、幕間には歩くバラバラ死体が…。

何人もの“人生”が絡み合い、そしてその上で“世界”
もしくは“世間”というものが成り立っているんだ、
というようなことを強く意識させられた作品でした。

4人それぞれの物語が並行して語られるのと同時に、
さまざまなところでニアミスだったり交錯してたりするんです。
その“違和感”というか、不思議な感じがたまりません。
なんとなく、北森鴻の作品を思い浮かべたりしましたが、
それらよりも明るい感じで、読者も救われます。

伊坂さんの他の作品のキャラクターたちがクロスオーバー
しているようなんですよね。それは、今後の楽しみのために
取っておくことにします(^-^)。

『三毛猫ホームズの推理』赤川次郎

2005年09月29日 | あ行の作家
★『三毛猫ホームズの推理』赤川次郎(光文社文庫)

久しぶりの赤川さん。本格の名作といえば、これでしょう。
三毛猫ホームズのシリーズは現在も続いており(多分)、
長編・短編合わせて全40冊が刊行されてます。ちなみに、
誕生25年目に発行された40冊目は『三毛猫ホームズの卒業論文』。
(もちろん、未読ですが)

再読のつもりでしたが、すっかり内容は忘れてしまってました。
しかし、もう、何もかもが懐かしくて懐かしくて(笑)。
ちょっと軽い感じのところとか、かと思うと、思いっ切り
シリアスな場面がどどんと出てきたりとか、そして何より、
この密室トリック! とても赤川さんらしいんです。

先日、アリスの『マレー鉄道の謎』に関して、トリックは
御手洗級かも、とか書きましたが、それを遥かに上回ります。
確かに、最初からヒントはいろんなところにちりばめられて
いるのですが、それを拾い集めたところで、あの解答に
行き着くはずがない(笑)。しかし、極めて論理的に謎が
解かれていくあたり、本格ファンも充分楽しめると思います。
さらに、密室殺人以外にも女子大生連続殺人事件とか、売春とか、
複雑に絡み合ったさまざまな事件の謎が解かれていき、最後に
辿り付いた結末(真相)は、想像以上です(抽象的ですいません)。

中学生のころに読み漁り、18歳で入院したときに、あまりにも
暇だったので(笑)、家にあった赤川作品(80冊程度)を2度ほど
読み返したりと、すっかり赤川作品に馴染んでしまったせいだと
思うのですが、“赤川さんだったら、こうだろう”という風に
読んでしまって、トリックも、真犯人も分かってしまったのですね。
(基本的に再読だから当たり前なんだけれども(笑))
それでも、また読みたい。もう、何度でも読みたい。
そう思わせてくれる、私にとって大切な作品の一つなのでした(^-^)。

『夜のピクニック』恩田陸

2005年09月28日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:夜のピクニック夜のピクニック』恩田陸(新潮社)


第26回吉川英治文学新人賞、第2回本屋大賞受賞作。
帯に、“ノスタルジックでリリカルで、いつまでも読み
続けていたい作品”と、池上冬樹の言葉がありますが、
まさしくその通り。夜通し80キロもの道のりを、ただ
歩き続けるだけ、という高校生活最大のイベント「歩行祭」。
私の記憶に当てはめるならば、修学旅行といったところでしょうか。
厳密にいうと私の学校は「修学旅行」ではなく、箱根の山奥に
篭もる「合宿」だったので、それほど楽しくはなかった(笑)。
でも、「歩行祭」も“しんどい”イベントではあるわけですよね。
しかしながら、“高校生活最後のイベント”“最大のイベント”となると、
“これだけはしておかなくちゃ”という気持ちになるんです。

甲田貴子もそんな1人でした。前半はクラスメイトたちと歩き、
仮眠を取った後の後半は、仲の良い友人と歩こうと決めていた貴子。
彼女はこの「歩行祭」で一つの賭けをしていたのです。

ノスタルジーの神様などといわれている恩田さんですが、それだけ
じゃないですよね(当然ですが)。確かに、高校生活最後の一大行事を
舞台に繰り広げられる青春物語、といった趣なのですが、
たかだか1泊2日を友人たちと過ごすだけの話が(歩いてはいますが)、
こんなに楽しくて切ないものだとは、想像できないでしょう。
高校生活って、高校時代って、こんなに大切なものだったのか、と、
改めて思い知らされました。もっと大事に過ごせば良かった!(笑)。

ネバーランド』のような“閉じた世界”ではあるのですが、
だからこその魅力。その辺に私は激しくそそられるんだなあ。

『スローグッドバイ』石田衣良

2005年09月27日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:スローグッドバイスローグッドバイ』石田衣良(集英社文庫)


最近、メディアに出まくっている石田さん。私は見たことがないのですが、
女性誌などで「恋愛相談」なんかもやっているそうじゃないですか!
私は『池袋ウエストゲートパーク』の石田さんしか知らなくて、
これもてっきりミステリーだと思って購入したのです。
が。短編の恋愛小説が10編…。恋愛小説ですよ、短編とはいえ。
マコトの恋愛話だってあまり好ましいとは思ってないのに
(私の中で、マコトはフツーに恋愛したりしないキャラなのです(笑))
う゛、そうですかそうですか…。なんて思っていたのですが、
読んでみると、なかなかいける。いや、かなり良いのです(^-^)。

ほんの些細なことが、恋愛においてはとても重要な意味を持つことがある。
そんなことに気付かせてくれる、ハッピーエンドが10作品。
すべてハッピーエンド、ってのも、バッドエンドを好む私にとっては
鬼門ともいうべきもの(大袈裟^^;)だったのですが、もしかしたら逆に、
それがいいのかもしれませんね。読んでいると、必ずといっていいほど、
私はバッドエンドを予測してたりして(笑)。でも、全部裏切られて、
ハッピーではないにしても、全て前向きな終わり方になってます。
そして、それがいいな、純粋に、幸せな方がいいな、なんて
思うようになりましたもんね(年齢のせいか?(笑))。

ちょっと元気がないときに、読んでみるのがいいかもしれません。
絶対に、裏切りません。そういうお話が、心を元気にしてくれるんですね(^-^)。

『マレー鉄道の謎』有栖川有栖

2005年09月27日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:マレー鉄道の謎マレー鉄道の謎』有栖川有栖(講談社文庫)


久しぶりの火村センセ!(笑)、いや、国名シリーズ!
今度は長編です。長編の火村センセも久しぶりなのです。

カバー裏にあらすじが書いてあるのですが、今回のあれは
ちょっといただけない。終盤にならないと出てこない事柄が
書かれてあるので、読みながら「あれ? まだ出てこない」と、
気にしながら読んでしまうのですね。それが残念。
まあでも、私にそんなことは関係なく、最初っから最後まで、
たっぷり火村センセを堪能させていただきました(^-^)。

内容に関してはですね、一言で言うならば、トリックは御手洗級?(笑)。
今回、火村センセとアリスは、大学時代の友人でマレー人の大龍(タイロン)に
誘われて、マレーの楽園、キャメロン・ハイランドを訪れます。
そこで事件に巻き込まれるわけですが、前半は、ゆーったり旅を楽しんでます。
しかも2人っきりで!(笑)。もう、読みながらヨダレが出ます(嘘)。

何がいいんだろうなあ。改めて考えてみると、火村センセのどこに惹かれるのか、
自分でもよく分かってなかったりします。ただ、火村センセにはアリスが
欠かせない。口を開くと、どんなに深刻な場面でもほんわかさせてしまう
アリスですが(笑/だから最後の謎解きのときには口を開かないのでは?)、
そういった不思議な優しさ・柔らかさが、頑なになりがちな火村センセの心を
いい具合に解きほぐしたりするんでしょうね。随分身勝手な解釈ですが(笑)。
そういうアリスがいつも必ず側にいてくれることを知っているから、
火村センセだって、“悪”と、そして“心の闇”と戦うことができる…。
そんな気がします(^-^)。まあ、本格ファンにとっては、この2人の関係、
2人の掛け合い漫才(笑)は、おまけでしかないのでしょうが、私にとっては、
最後の最後にならないと解かれない謎の方がおまけだったりして!(暴言!)。
まあ、このシリーズに関してはとくにそうかもしれません(にっこり)。

『倒錯の帰結』折原一

2005年09月22日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:倒錯の帰結倒錯の帰結』折原一(講談社文庫)


真ん中に袋とじがあって、表紙から読み進む「首吊り島」、
巻末の解説前から始まって、上下逆さまにして読む「監禁者」、
この2作を読んだ後に、いよいよ袋とじの「倒錯の帰結」を
開くわけなのです。本作で“倒錯3部作”が完結ということで、
凝ったつくりになっているなー、なんて思いながら読みました。

冒頭、推理作家の山本安男と、201号室の清水真弓が出てくる
あたり、にやり、としましたが、おおかたこの状態で進めます。
…倒錯の“折原ワールド”にすっかり馴染んでしまったのかも
しれないのですが(笑)。最後は、

なるほど、こういう風に終わるのか(にんまり)。

これまでのような驚愕はなかったかもしれませんが、
これはこの世界を存分に堪能するための作品だと
言いきってしまってもいいでしょう(ホントか?)。
山本安男によるあとがきが面白いです、遊んでて(笑)。

『黒後家蜘蛛の会2』アイザック・アシモフ

2005年08月30日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:黒後家蜘蛛の会 2黒後家蜘蛛の会2』アイザック・アシモフ(創元推理文庫)

黒後家蜘蛛の会1』を読んだ後、随分間が空いてしまいましたが、
楽しく読みました。結局、『黒後家蜘蛛の会』というのは“お約束”の
宝庫だと思うのです。その“お約束”をいかに楽しむか、
いかに楽しませてくれるか、という、その辺を楽しみにして読みました。

基本的に、モノを知らない私なので(笑)、どういう方面の話が出ても
ホントに分からないのですよ(^^;)。だから逆に、真っ白な心で
楽しめる、という利点はあるかもしれないのですがね。でも、
こんな私でも、心底楽しめるように語ってくれるアシモフという人は、
やはり優れたストーリーテラーだと思うのです。しかも、どれも
こんなに短いのに!(笑)。こんなに短い物語の中に、魅力的な謎と、
そしてこれまた鮮やかな謎解きが盛り込まれているなんて、
ホント、素敵な作品だなあ。また、作品それぞれに作者の簡単な
あとがきがあるのですが、それも面白いのです(^-^)。

今回も12の謎が鮮やかに解かれていくわけですが、中でも
面白かったのは、「鉄の宝玉」。宝石商のゲストが語る祖父の宝物の
話なのですが、このネタはですね(ネタというかトリックというか(笑))、
違うところで見たことがあったので、逆に私にはとても面白かったです。
そして何より「終局的犯罪」。シャーロキアンが何を題材にして論文を
書こうか悩んでいる、というところから始まるのですが、
ものすごいオチ(オチというか解決というか^^;)が待ってます。
最近気づいたのですが、暗号系と理論が勝ちすぎる謎解きというのが
苦手なのですね、私(笑)。なので暗号(のようなもの)を解く
「東は東」はちょっぴり楽しめなかったのですが、こういうお話が
好きな方も多いかと思います。それにしてもこの1冊には、いろーんな
タイプのミステリーが詰め込まれているんだなと、改めて驚いてます。

『刺繍する少女』小川洋子

2005年08月30日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:刺繍する少女刺繍する少女』小川洋子(角川文庫)

博士の愛した数式』で初めて読んだ小川洋子ですが、
それ以来、密かにハマってます(笑)。
基本的に恋愛小説は苦手なのですが、単なる恋愛モノではなく、
そこに恋愛以外のモノが描かれていると、もしかしたら
大丈夫なのかもしれません(笑)。

さて、本作ですが、“美しくも恐ろし十の「残酷物語」”と
いう風に紹介されておりましたが、思ったほど残酷ではありません。
以前に読んだ『完璧な病室』とか、『まぶた』とかの方が
よほど残酷だし、より痛くてエグイです。
しかしながら、そこに流れる美しさ、凄みを帯びた美しさ、
というものは変わりません。これがなかなか言葉にしづらくて、
結局“独特の”という風に言うしかないのですが、
なにせその、短い物語にまとわりつく雰囲気というか、
その物語たちがまとっている空気というか、それが好きです。
日本語なのに、どこか日本ではないところ、
それこそフランスとか、ヨーロッパあたりで彼女の作品が
好まれている理由はその辺にあるんじゃないかと思ったりします。

小川洋子という人は、ずっと岡山にいるんだそうですね。
岡山といって思い出すのは岩井志麻子です。
まったく作風も違えば、向かっている方向だって違うのに、
どことなく同じ“におい”を感じるのは、私だけでしょうか(^^;)。
残酷さに容赦がないところ、恐ろしいことを淡々と語るところ、
そして何より、それらフィクションであるはずのことが、
実は紙一重であるということを、とてもよく知っている。
そんな風に思ったりしているのですが。

『8の殺人』我孫子武丸

2005年08月02日 | あ行の作家
我孫子さんのデビュー作。実は私、『かまいたちの夜』(もちろんゲーム版)で
我孫子さんの名前を知ったりします(笑)。ゲーム作家だとばかり思ってて、
ミステリー作品は片手間に書いているだけ、だとか勝手に思ってました。
それがまさか新本格の旗手だったとは(^^;)。

内容はもちろんなんですが、それよりも「本格ミステリー宣言」と題した
島田荘司の解説が絶品です。ここで初めて私は新本格の存在理由と、
存在意義を知りました(だから遅いっての)。これを踏まえた上で、
もう1回、最初から“新本格体験”をしてみたい。そうすると感じることも
違ってくるでしょうし、後々の読書スタイルだって変わったと思うのです。
もったいないことをしたなあ、ホント(^^;)。

我孫子さんに関しては、最初『まほろ市の殺人 夏-夏に散る花』から
入ってしまったのです。そして次に『殺戮にいたる病』なぞへ行ってしまった
ので、わき道にばっかり逸れてしまっていたのですよ。我孫子さんの基本とも
いうべきここに辿り着くまで、どんなに時間をかけたんだ、私は(笑)。
内容はですね、謎(トリック)とかストーリーというよりも、作風に
とても特徴のある方なのですね。ここから入ると、とても『かまいたちの夜
なんて想像できません。『殺戮にいたる病』なんて異端中の異端なんじゃ
ないでしょうか。こういうのも好きですけどね。

“8の字形の屋敷”で起こった不可解極まる連続殺人。
速水警部補と、推理マニアの弟&妹が謎解きに挑むが…。

速水3兄妹シリーズの第1作でもある本書。鞠夫のシリーズもそうですが、
とても軽くて、でも、しっかり本格テイストの謎解きが楽しめます。
ミステリー初心者にはとてもいい作品なんじゃないかと思います。


8の殺人』我孫子武丸(講談社文庫)

『ガラス張りの誘拐』歌野晶午

2005年08月02日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:ガラス張りの誘拐ガラス張りの誘拐』歌野晶午(講談社文庫)※書影は角川文庫

最近になってようやく“新本格”がいかなるものであるのかを
体感しつつあるのです(笑)。新本格という名称は知っていても、
実際MLに参加するまでに読んだ作品といえば、有栖川有栖だけ
だったりして、どこがどういう風に新本格なのか分かってなかったのです(笑)。
それがですね、ここ最近ようやく本当の意味で新本格に触れることができました。
十角館の殺人』で約20年遅れの衝撃を受け、麻耶でぐらんぐらん酩酊し、
二階堂や法月綸太郎でクラシカルな雰囲気を楽しみ、そして、歌野晶午で
お腹がくすぐったくなって「うひゃひゃひゃ」と笑うことができました。
…なんとなく分かっていただけるでしょうか(^^;)。

実は、歌野さんはほとんど読んだことがなく、マイナーな『さらわれたい女』が
とても強く印象に残ってたりします。それもこれも誘拐モノなのですが、
これがまたキョーレツなんですねえ。一言、凄まじい、と。

嫌な仕事が回ってくるとサウナに逃げる冴えない中年刑事・佐原の
娘が誘拐される。「要求を言います。現金で一億円用意してください」。
犯人は、衆人環視の中で身代金を運べと要求する…。

誘拐モノといえば、岡嶋二人を思い出します。『99%の誘拐』ですが。
あれは、いろんなモノを駆使して、いかにこれまでにない“誘拐”に仕上げるか、
という話だったと思うのですが、歌野さんの場合、心理的な部分を攻められます。
だから、読み終わった後は誘拐モノというより、本格を読んだ心境になる。
いろんなところにちりばめられた伏線が、最後の最後でキレイにまとまる。
そのまとめ方が凄まじかったりするんですけど(笑)。

話は全く変わるのですが、この作品、未読のはずなのに、この冒頭をどこかで
読んだ気がするんですよね。よく似た作品があるのかなあ。
ちょっと気になったので、メモがわりに記しておきましょう(笑)。

『青列車の秘密』アガサ・クリスティー

2005年06月28日 | あ行の作家
GWに実家に帰ったとき、本棚を整理していたらありましたよ、これが(^^;)。
以前に読んでいたのですね。たぶん、高校時代だろうと思うのですが。
でも、それを発見するまで読んだ記憶はまったくなかったです。というか、
その事実を突きつけられたところで、記憶は戻ってきませんでした(笑)。
いや、いいのよ、2回楽しめたんだから(というのは言い訳?^^;)。

なんだか、被害者にも容疑者にも、ものすごーく胡散臭いところがあって(笑)、
いかにも予想しやすい“何かがあるゾ”的なお話だったので(失礼)、
あまり気を入れて読んでなかったんです、実は。でも、最後の最後で
ヤられました。想像してませんでした。あんなことになるなんて!(笑)。
いや、よく考えるととてもクリスティー的なお話ではあるんですよね。
私的な言葉で言わせていただくならば、初期の赤川から受ける、
新鮮な衝撃そのもの(赤川がクリスティーのファンだったので、
実際としては逆なのですが(笑))。一気に目が覚めます。ステキ過ぎます。

走行中の豪華列車〈ブルー・トレイン〉内で陰惨な強盗殺人が起こる。
警察は被害者の別居中の夫を逮捕した。2人の間には“複雑な”事情が
あるのだが、偶然乗り合わせたポアロが暴いた真犯人とは…!?

これまで、クリスティー文庫でポアロものを『スタイルズ荘の怪事件
ゴルフ場殺人事件』『アクロイド殺し』『ビッグ4』と4冊読んで
きましたが、その中ではいちばん面白かったかもしれません。


青列車の秘密』アガサ・クリスティー(ハヤカワクリスティー文庫)

『隻腕のサスラ 神話の子供たち』榎田尤利

2005年06月28日 | あ行の作家
「もったいないからまだ読まない」ということはやめよう、
そう思っていても、やっぱり大切にしたくてなかなか手が出ない
作品(作家)というものはあるもので。私にとって、榎田作品がそれ。
魚住くんシリーズから、とても大切に読んでいて、そのシリーズで
すらも、3冊目以降がなかなか読めなかったりしたのです。
しかしながら、BL系の作品はあれ以上の感動はありえないだろう(笑)
という思いから(失礼だなあ^^;)、ぼちぼちと読んではいるのですが、
ファンタジーである前作『神を喰らう狼』は、BLにはない感動を
与えてもらいました。という理由があって、その続編であるところの
本作には、なかなか手が出なかったのですね。

でも、やっぱり早くに読んでおけばよかった。いかに私が、
榎田さんの文章を欲していたのかが、読み始めてよく分かりました。
冒頭、「ルアンの髪は長い。」たったこれだけに、心がかき乱されました。
どうしてこの人の文章がこんなにも奥が深いのだろう、と。

そこから、この物語の主人公・サラまで辿り着くまでの長いこと長いこと。
しかも、そこ(サラ)へ辿り着いて、彼女が決断するところで本作は
終わるのですね。“隻腕のサスラ”というタイトルのサラの物語は
ここで終わり、ということなのでしょう。そういう潔さみたいなものも、
やっぱり榎田さんの特長です。しかしながらその反面、とてつもなく
長いシリーズになるのだなあ、という予感はしますね、びしびしと(笑)。

この続編、神話の子供たちの3作目になる『片翼で飛ぶ鳥』は、もうすでに
本棚に収まってます(もちろん積ん読の棚ですが^^;)。ホントはすぐに
でも手に取って読んでしまいたいのですが、なんだかまだもったいない!
といっている間に、どんどんBL系の作品も積まれていくのですが…。


隻腕のサスラ 神話の子供たち』榎田尤利(講談社X文庫)

『ネバーランド』恩田陸

2005年06月20日 | あ行の作家
久々の恩田さん。一気に読んでしまいました。学園モノだからいい、
というわけではなく(実際、『六番目の小夜子』は外したし)、
具体的に“何”が良かったのか、ハッキリと言葉にできないのが
とてももどかしいのですが。強いていえば、男の子たちの発する
“青臭さ”でしょうか…言葉を選べよ、自分(^^;)。
懐かしいというのではなく、どちらかというと、憧れですかね。

舞台は、辺鄙なところに建てられた名門高校の寮「松籟館」。
文化財になろうかというほど古く、歴史あるこの建物で、
冬期休暇を過ごす4人の1週間が、とても悲惨に(笑)描かれます。

この設定はね、ある種のお約束でしょうよ。ねえ(誰か同意してくれ)。
確か男子高だし。作者は『トーマの心臓』のようなものを描きたかった、
ということだし。実際、その辺のエピソードも出てきたりしますが。
でも、そっち方面の話ではなく、非常に楽しくて苦しくて、いいかげんで、
でも重くて…やっぱり青臭い。その辺が、彼ら自身が悲惨である、
という辺りに繋がるのですが(伝わるでしょうか^^;)。

クリスマス、お正月と、家族で過ごすはずのイベントを、彼らは
寂しくて寒い寮で4人だけで過ごします。たった1週間だけれども、
そういったイベントを挟んで、普段からは考えられないほど“密接”して
過ごすうち、それぞれが背負っていたり、背負わされていたりするモノ、
普段は気付かなかったり、気付いていないフリをして済ませているモノに
対して、彼らなりにいろいろと考えることができるわけなのですね。
1人だったら絶対にできなかったこと。4人だからできたこと。
そんな“青臭さ”とともに、何が「ネバーランド」なのかということも
含めて、堪能していただけたらいいな、と思います。
木曜組曲』『夜のピクニック』が面白かった方はぜひ。


ネバーランド』恩田陸(集英社文庫)

『蠱猫 人工憑霊蠱猫01』化野燐

2005年06月20日 | あ行の作家
これはもしかしたら、全部読んでから感想を書いた方が
いいのかもしれません。続きモノなのです。

両親と決別したはずの美袋小夜子は、司書として学園に戻ってくる。
そこでの彼女の仕事は、まるで蔵そのものの書庫の整理。
祖父の遺した蔵書をひも解いていくうち、奇妙な“事件”が起こり…。

化野燐といえば、在野の妖怪研究家(ホントか?)として
有名な方ですが、“満を持して”発表されたこの作品。
私の感触からいいますと、まだまだ、全然本領発揮、とまでは
いきませんね。だから、余計に物語の壮大さを予感させるというもの。
京極夏彦がいろいろと協力しているようで(呪符のようなものを描いたり)、
そっちでも興味がそそられようというもの。

ただね。まだまだなんにも見えてこないのですよ(^^;)。
実は、主人公すらハッキリしてない感じ。たぶん、小夜子なんだろうけど、
後半から視点が変わって、それまでの話とつながりの見えない物語が
始まったりして、結局、何がなんだか分からないまま終わってしまったのです。
なので、2巻目『白澤』に期待…したいのだが、まだまだ続くで
あろうことを考えると、次作で何かが見えてくるかどうかも疑問なのですが。
それでも、妖怪好きにはたまらないお話だと思います。
や。“妖怪好き”とひとくくりにしちゃいましたが(笑)、
ある種ファンタジーですし、冒険小説ですし、なんならハードボイルドにも
できないことはない(無責任)。とりあえず、いろんな可能性を秘めている
作品には違いない。…あとは好みの問題かな(笑)。


蠱猫 人工憑霊蠱猫01』化野燐(講談社ノベルス)