紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「ダック・コール」稲見一良

2004年10月13日 | あ行の作家
読む前は、勝手にハードボイルドだと思い込んでました。
読み始めて、長編ではないことを知ったし。
そうすると、なんでこの作品を読もうとしたかも、
なんだか分からなくなってしまうのです(苦笑)。
ま、そんなことはどうでもよくって。

読み始めると、すぐに分かります。
これは、“男の物語”だということが。
野生の鳥にまつわるオムニバス形式の短編集。
どれにも、“男の想い”が込められています。
それがまた、派手ではないけど、熱いんだわ。
長年、女なんかをやっていると、ときたま
ものすごく男がうらやましくなることがあるのです。
男の、そういう面を見せつけられる作品でした。
純粋というか、単純というか、
まっすぐというか、独りよがりというか。
でも、ちゃんと現実を見た上での“夢”。
だから、あんなに美しいんだなあ、と。

あら、いやだ。
今、表紙の裏を見たらこんなことが書いてある。
「石に鳥の絵を描く不思議な男に河原でであった青年は、
 微睡むうちに鳥と男たちについての六つの夢を見る--」
…なんだ、6つのお話は夢だったのか(笑)。
だからあんなにキレイだったのか?
まあ設定はどうでもいいや(よかないけど)。
中では「波の枕」がとてつもなく好きです。
「ホイッパー・ウィル」もハードボイルドに感動的です。

「ダック・コール」稲見一良