紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「STAR EGG 星の玉子さま」森博嗣

2004年12月16日 | ま行の作家
森博嗣の描く絵本、ということで手にしてみました。
帯には“親子で、恋人と4倍楽しめる”なんて言葉も踊ってますが、
4倍どころじゃないと思います。自分の成長に合わせて何度でも、
繰り返し楽しめ、その度ごとに感じることも違っているでしょう。

実は私、森博嗣は人間愛を語れない、
なんてことを思っていたのです(笑)。
しかーし、その考えはすぐに壊されましたね。秒殺でした。
なんてハートフルなのでしょう。なんて深い愛なんでしょう。
そして、やっぱりユーモアにも溢れていました。

森博嗣は理系の香りがして苦手、という方には、
「スカイ・クロラ」よりも、まずこっちを紹介すべきかも。
絵本なのですぐ読み終わるし、ちょっとでも興味があるなら、ぜひ。


Star egg
森博嗣著

出版社 文芸春秋
発売日 2004.11
価格  ¥ 1,050(¥ 1,000)
ISBN  4163235507

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「星虫」岩本隆雄

2004年12月16日 | あ行の作家
SFには苦手意識を持っているので、最後まで読めるか不安でしたが、
蓋を開けてみると、なんだか“懐かしい”のは時代のせいか(^^;)。
なんせ主人公が、猫をかぶった女子高生、というあたりがなんとも(笑)。
そんなクサイ設定にもかかわらず、これが不思議とのめり込んでしまうのです。

宇宙に憧れ、将来はスペースシャトルの操縦士になる、という夢を
幼いころから持ち続けている女子高生・氷室友美。けれど、いつの頃からか
その夢を口に出して言うことはなかった。学校では優等生を演じる友美は、
家に帰ると宇宙飛行士を目指すための訓練を行っている。
そんな友美が夏休み最後の夜に見たものは、空から無数の星が降ってくる
風景。しかしそれは、人間の額に吸着することで宿主の感覚を増幅させる
宇宙生物だったで、友美はすっかり夢中になり…。

物語の中盤ほどで、ヒーロー&ヒロインが確定、そこから核心へと
向かっていきます。…いろいろと言いたいことはあるのですが(笑)、
まあ、そういうことを置いておいても、読む者を惹きつけるものが
やはりちゃんとあるのですね。人によって感じ方は違うのでしょうが、
私にとってはやっぱり登場人物、ということになるでしょうか。
もうね、とある人が言った、たったひと言にヤられちゃいました。

「…俺、昔、絶対に死ぬわけないと思ってた人が死ぬの、見てますから」

きゃー。こんな台詞にまいっちゃってる自分にびっくり(笑)。
まだまだ私も捨てたもんじゃないわ、と(違)。

物語全体を通してみると、とてつもなく大きなテーマを扱って
るんですよね。でも、裏を返すととても身近なものだったりしますが。
そして、やっぱり“愛”を語ってるなあ、と。
表紙がこんなで、ちょっと書店で買うのをためらいそうになりますが(笑)、
でも、読んでみて損はないと思います。充分楽しませてくれますよ。


星虫(ソノラマ文庫 907)
岩本隆雄著

出版社 朝日ソノラマ
発売日 2000.06
価格  ¥ 600(¥ 571)
ISBN  4257769076

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「慟哭」貫井徳郎

2004年12月14日 | な行の作家
ちょうどこれを読み始めたころに、
奈良で、小学生の誘拐殺人事件が起こっていました。
タイミングがいいというか、悪いというか。
多少心を痛めつつ、読みました。読み終わると、
“多少心が痛い”どころの騒ぎではありませんでした。

ひと言で言ってしまうと、「慟哭」は、
連続幼女誘拐殺人事件が引き起こす、あまりにも哀しい物語。
幼女の誘拐殺人事件だけでも心が痛いのに、しかも連続で事件は起き、
さらに、それを背景としたもっと痛い物語が語られるわけです。
ストーリーとしては、重たいテーマを扱った重厚な内容なのですが、
でもその展開はとてもパワフルです。
かといって、粗いかというとそうではなく、
ちょっとぶっきらぼうかもしれませんが、それはそれで、
とても登場人物の性格と合っていて、
作品世界の雰囲気づくりに一役買っているように思います。

貫井さん、初めて読んだんですけど、魅力的ですね。
引き続きまた読んでいきたいと思ってます。
が、次はちょっと軽めがいいなあ。
何かおすすめはありますか?


慟哭(創元推理文庫)
貫井徳郎著

出版社 東京創元社
発売日 1999.03
価格  ¥ 756(¥ 720)
ISBN  4488425011

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「雪密室」法月綸太郎

2004年12月08日 | な行の作家
綸太郎のシリーズ(と言ってもいいのでしょうか)第1作。
先に「誰彼(たそがれ)」を読んでしまって、
てっきり私は綸太郎が主人公なのだと思い込んでいたのですが、
本作は、父親であるところの法月警視が主人公。
きっちりかっちり本格であるにも関わらず、
シリーズものということもあるのでしょうが、
法月親子の背景なども楽しめました。

とある人物の招待を受け、信州の山荘へ向かった法月警視。
招待された人たちはお互いをあまり知らず、共通点はただ、
招待主・篠塚真棹の知りあいであるということ。
ぎくしゃくした空気で迎えた初日の夜、離れで美女が殺される。
しかも、降り積もった雪の中、足跡は発見者のものただ1つだけ…。

カーター・ディクスンの「白い僧院の殺人」への
オマージュを込めた作品である、という噂です。
未読なんです「白い僧院の殺人」(^^;)。
先に読んでおいた方が良かったかな、とも思いますが、
未読のままでも、なんら支障はありません。
(ただ、途中でネタを割られてしまうのですが(笑))

鍵のかかった建物と、発見者以外の足跡がない、という雪の密室。
トリックを解説するシーンが面白かったです。
そして、“証拠”をつかむ場面がいちばん衝撃でした。
謎というか、事件はこの1つだけなのですが、
本作には秘密がいっぱい(笑)。そのわりにはスッキリしていて、
「誰彼」と比べるともう、非常にあっさりしています。
シリーズ第1作目という気負いのようなモノもない。
ただ、後への伏線のようなものを感じさせる終わり方でした。
最初に「引き裂かれたエピローグ」を持ってくるというような
構成はなかなか面白かったと思いますよ。
(だからといって、それにはひっかからないんだけれども(笑))


雪密室(講談社文庫)
法月綸太郎〔著〕

出版社 講談社
発売日 1992.03
価格  ¥ 540(¥ 514)
ISBN  406185111X

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「海神(ネプチューン)の晩餐」若竹七海

2004年12月07日 | わ行の作家
近ごろでは、若竹七海=昭和初期の豪華客船。
この図式が成り立ちます(笑)。
大きいなモノから小さなモノまで、“悪意”を描かせたら
5本の指に入るといわれる若竹さんですが、
(私が言っているだけですけど(笑))
この作品に漂うのは、憂い。
登場人物たちのものなのか、もしかしたら、
豪華客船「氷川丸」の憂いなのかもしれません。

タイタニック号の沈没から20年後。資産家の息子・本山高一郎は、
アメリカはシアトルへと向けて旅立つことになっていた。
旅立ちの前日、横浜で偶然出会った級友に押しつけられたのは、
タイタニック号沈没の際に持ちだされたという原稿。
高一郎はそれを携えて豪華客船「氷川丸」へと乗り込むが、
彼の周りでは不思議な出来事が次々と起こり…。

昭和ヒトケタという時代。今を生きる私には想像すらできませんが、
“破滅”へ向かって、加速度を増していた時期ではないでしょうか。
そんな背景を知ってか知らずか、豪華客船の一等という空間では、
普通とは違った時間が流れます。しかし、それはそこを利用する
普通ではない方々にとっては、いかにも普通のことなのですね。
下々のモノの立場に立ったときの、そういった“憂い”、
そして、そんな一等の船客たちにとっても時代の流れというものは
どうしようもないんだ、という“憂い”。
そう。どこを取っても憂いしか残らない時代なんですね。

横浜で乗船する前に、高一郎は3年ぶりに級友と出会いますが、
もうそこから“事件”は始まっています。高一郎が手にした原稿を
巡って、暗号の発見や原稿の紛失、幽霊騒ぎに死体消失まで、
さまざまな出来事が起こります。それには一つずつ、きちんとした
解決がもたらされるわけですが、しかしながら結局、そんなことは
とても些細なことであるということが、最後まで読んで
初めて分かるようになっているのですねえ。奥が深い。
ますます若竹さん、好きになりました(^-^)。


海神(ネプチューン)の晩餐(講談社文庫)
若竹七海〔著〕

出版社 講談社
発売日 2000.01
価格  ¥ 770(¥ 733)
ISBN  4062647508

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「時代小説 読切御免第一・二巻」新潮社編

2004年12月06日 | アンソロジー
ミステリーではないのですが、北方謙三、宮部みゆき、逢坂剛
なども収録されていますので、軽くご紹介を。
第1巻には、「枝下」北方謙三、「謀りごと」宮部みゆき、
「一生不犯異聞」小松重男、「刈萱」安西篤子、
「決闘小栗坂」南原幹雄、「土場浄瑠璃の」皆川博子、
「夜叉鴉」船戸与一の7作。
第2巻には、「傷」北原亜以子、「伏見城恋歌」安部竜太郎、
「五輪くだき」逢坂剛、「峠の剣」佐江衆一、
「一夜の客」杉本苑子、「赤木の雁」伊藤桂一、
「死に番」津本陽の7作が収録されています。

時代モノとひと言でいっても、いろんな時代があるんですね。
奈良時代から幕末、明治初頭まで、さまざまな時代の、
ワンシーンを切り取った、とても切れ味の良い短編が
収録されておりました。
時代小説というと、なんだか長編ばかりで手が出しにくいと
思っていたのですが、こうやってアンソロジーになっていると、
とっかかりにはとても良いです。
しかも、どれも小難しくもなく(笑)、
とても楽しませていただきました。満足、満足(^-^)。


時代小説 第1巻(新潮文庫)
新潮社編出版社 新潮社発売日 2004.03価格  ¥ 500(¥ 476)ISBN  4101208352bk1で詳しく見る オンライン書店bk1

時代小説 第2巻(新潮文庫)
新潮社編出版社 新潮社発売日 2004.03価格  ¥ 500(¥ 476)ISBN  4101208360bk1で詳しく見る オンライン書店bk1

「サム・ホーソーンの事件簿3」エドワード・D・ホック

2004年12月06日 | あ行の作家
上・下ではなく、1・2と続いたからいつかは出るだろうと
思っていましたが、やっと出ました。不可能犯罪を、
短編で小気味よく解決してくれる、ホーソーン先生です。
(なんか日本語が変だな^^;)

自殺した男の遺書には、なんと町長を殺害したという自白が!
ところが、実際に町長が狙われたのは翌日で…。
             (「防音を施した親子室の謎」)

カバー裏などに書かれてあるあらすじを読んで、
上の話にとても興味を持ったのですが、
まあ、どれも似たり寄ったりの(笑)不可能事件です。
事件だけを考えると、とても不可能なのですが、
実際、ホーソーン先生が謎を解いたあとでは、
どれもその動機が陳腐で、その結果こんな犯罪が
行われたかと思うと、物語だと分かっていても腹が立つね(笑)。
動機も仕掛けもくだらなさすぎ。
でも、きっとそういう事件っていうのは、
不可能犯罪ではなく、普通に起きていることなんでしょうね。

さて。第3巻が終わる頃には、ホーソーン先生、
ノースモントにきて13年が経っています。
ちゃんと成長(?)してますね。しかし、不可能犯罪に
出会う回数の多いこと多いこと(笑)。ま、それはいいとして。
今回はいくつか、なんとなく仕掛けが分かりました。
それは全然OKです。もう、トリックを楽しむ作品ではなく、
キャラクターで楽しむ作品になってますから(^-^)。
そういった意味では今回、キャラクターたちにとって
いろんなことがあったんじゃないでしょうか。
先生も、自分の仕事を取るか事件を取るかで悩みますし(笑)。

このシリーズでは、巻末にノンシリーズの短編が付いてくるのですが、
今回の「ナイルの猫」、もんのすごい面白かったです。
これこそ短編の切れ味の良さを味わうのにいい作品はない!
むちゃくちゃ好きです、こういうの(^-^)。


サム・ホーソーンの事件簿(3)(創元推理文庫)
エドワード・D・ホック・木村 二郎 訳出版社 東京創元社発売日 2004年9月上旬価格  ¥ 903(¥ 860)ISBN  4488201059bk1で詳しく見る オンライン書店bk1

壮観。

2004年12月03日 | Weblog
久しぶりのリアル本屋さん(笑)。
クリスティー文庫全100冊刊行を記念して(だと思う)、
平積み一面がクリスティー文庫でした。
壮観ですよ、キレイですもん、表紙。
本屋さんの中でこっそりケータイで撮ったから、
いまいちよろしくない写真ですが(^^;)。
ま、雰囲気だけでも伝わればいいかな、と。

「翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件」麻耶雄嵩

2004年12月03日 | ま行の作家
初めての麻耶さんの長編、デビュー作なのに、
シリーズは続いているのに、
“メルカトル鮎最後の事件”だなんて(笑)。

麻耶さんっていうのは、最初からどこにも突き抜けないで、
どことなく暗澹とした雰囲気が始終漂っている、という
そんなイメージだったのですね(「まほろ市」なんですけど)。
これも読み始めてからずーっと、なんだか違和感があって。
「まほろ市」の方は鬱々とはしてたけど、しっくりはきていたので、
なんだかこんなに物語に馴染めないっていうのが、ちょっと怖かった。
“何か”あるんだろうな、とは思いつつも、
もし最後までこのままだったら、とか思うと不安で(笑)。
そういうときは、“島田荘司、綾辻行人、法月綸太郎が絶賛”
という言葉を思い出してたんですが、それはそれで、ねえ(笑)。

京都近郊に建つ、ヨーロッパ中世の古城と見紛う館・蒼鴉城。
名探偵・木更津のもとに、不可解な依頼が舞い込み、
友人で推理小説作家の香月とともに、木更津は蒼鴉城へ向かう。
現場に到着した彼らを待っていたのは、首なし死体だった…。

結果から言いますと、すんげー面白かったです(^-^)。
でも、最後の最後までひっぱり過ぎです(笑)。
感情移入して読むタイプの私としては、
木更津にしろ香月にしろ、誰にも同調できないままだったのが、
とてももどかしかったし、なにせメルがなかなか出てこないし。
以前に一度、メルの短編を1作読んだことがあったのですね。
そのときからメルはあまり好きではなかったのですが(笑)。
それにしても、ねえ(^^;)。しかも、木更津はメル以上に嫌いだあっ。

蒼鴉城で起こる一連の事件に、まあよくあれだけいろんな解釈が
付けられるものです。しかし、それも全部最後のあの場面のため
だけだと思うと、なんと贅沢な(笑)。いや、前フリ長いよ(^^;)。
そして最後に残る疑問が、あのサブタイトルの意味は?
…いろんな意味で楽しませていただきました(笑)。


翼ある闇(講談社文庫)
麻耶雄嵩〔著〕

出版社 講談社
発売日 1996.07
価格  ¥ 770(¥ 733)
ISBN  4062632977

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「ミステリ十二か月」北村薫

2004年12月02日 | か行の作家
やっぱり北村さんはステキですねえ。
今回、新聞掲載のコラムを集約し、さらにインタビューも加えて、
とても読みごたえのある1冊になっています。
掲載当時と同じカラーで、挿し絵というか版画も掲載されていて、
それがまた味があっていいんだわ。
それだけでも、じっくり見て楽しんで欲しいです(笑)。

これだけ長い間ミステリー読みをやってきて、
いかに自分が何も読んでいないのか、ってのが分かりますねえ。
北村さんの紹介だから、それが絶対的にいい、とかいう話ではなく、
私が読んでいない、数ある作品の中から、気持ちを揺さぶられる
作品が50も並んでいるわけです。既読の作品すら、
“北村さんがこう言うんだから、もう1回読んでみようか”
と思うほど。…私は北村信者なのか(笑)。

そういった、紹介のコラムとは別に、有栖川有栖との対談も
あるのですが、それはそれで面白いのですよ。
一応紹介したけど、ホントはそれほど面白いとは思ってないんだよね、
みたいな話もあって(笑)、なんだか途中から、
“ミステリー東西対決”のような感じにもなってくるし(何)、
なんだかどの文章をとっても、生きてていい。
新鮮というよりは、生きてる。生き続けているって感じ。
なので、これから先もずっと読まれ続けるのではないかと思います。


ミステリ十二か月
北村薫著

出版社 中央公論新社
発売日 200410下旬
価格  ¥ 1,890(¥ 1,800)
ISBN  4120035743

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「高橋克彦版 四谷怪談」高橋克彦

2004年12月02日 | た行の作家
なんとなく話の筋は知っていても、実際読んだことがなかったのです。
鶴屋南北の「東海道四谷怪談」。なんだか私はこの作品に縁があって
(というか、勝手な思い込みなんですけどね)
「嗤う伊右衛門」のモチーフがこれですし、4年ほど前でしょうか、
藤原竜也が「大正 四谷怪談」という4人舞台をやってるんですね。
登場人物は、伊右衛門と岩、直助、袖の4人。
舞台を大正時代に移して、“純愛の物語”として描かれています。
「嗤う伊右衛門」も「大正 四谷怪談」も楽しんだのですが、
それはやっぱり、おおもとである「四谷怪談」を知った上で、
なお一層楽しめるというものですよねえ。
いつかは読みたいと思っていたところへ、これですよ。
高橋克彦が現代の小説へと甦らせてくれました。

読んでみればよく分かります。ホント容赦ないなあ(笑)。
まあ、怪談ですものね。でも、思った以上に“救い”があった。
あんなに怖いと思っていたお岩さんなのに、
なんだ、そうなのか、お岩さんって優しいんじゃん、って。

怪談っていうのは、怖いぞ、怖いぞ、ほら怖いだろ?って、
怖がらせるだけのものだと思っていたのね。
というのも、現代の怪談(「新耳袋」とか)なんかを読んでると、
“こんなことがありました”だけで終わってることが多いでしょ。
実はそれはこうで、っていう解説がなくて、言いっぱなし。
そっちの方が、余韻があって恐ろしいのですよ、実際。
しかも、それに解説というか、説明をつけようとすると、
最終的に読んでる方は“解決”を求めてしまう。
そうなると、“怪談”ではなく“物語(小説)”になるんですねえ。

「四谷怪談」は、怪談というジャンルの素晴らしい物語でした。
そんな基本中の基本みたいなことをこれまで知らなかった
自分が、とても恥ずかしいなあ(笑)。

※書影はありますが(↓)、文庫版はbk1では扱っていません。
 親本は「少年少女古典文学館23 四谷怪談」


高橋克彦版四谷怪談(講談社文庫)
高橋克彦〔著〕出版社 講談社発売日 2000.08価格  ¥ 520(¥ 495)ISBN  4062649551bk1で詳しく見る オンライン書店bk1

「共犯マジック」北森鴻

2004年12月01日 | か行の作家
ストーリーというよりも、その構成、展開、
そしてストーリーテリングがとても上手く、
全体的にその試みは成功しているんじゃないかと思います。

人の不幸のみを予言する占い書「フォーチュン・ブック」。
偶然それを手にした男女7人の物語を短編で綴ります。
そしてそれらの物語は、“必然”という糸でキレイに
まとめられ、一つの壮大な“物語”へと形を変える…。

昔読んだ、赤川次郎の「POISON-毒-」という作品を
思い起こさせます。内容ではなく、その構造が。
「POIZON」は、摂取後24時間で人を死に至らしめ、
しかもその死体からは検出されないという夢のような猛毒(笑)が、
さまざまな人の手に渡っていく度に巻き起こる殺人事件を、
順を追って、連作短編の形式でまとめたものです。

本作において、共通するのは“フォーチュン・ブック”のみ。
時間も場所も、まったく違ったところで起こる
さまざまな事柄が、実は“フォーチュン・ブック”を介して
結び付けられるというある種の必然ですね。
ははあ、なるほど。などと思って感心しながら読んでたんですが、
終盤に近づくにつれ、あれよあれよという間に、
とんでもないことになっていくのです(笑)。
その、一見何も関係のないところにある関係に気付いたとき、
一瞬背筋が凍ります。まさに“マジック”だなあ、と。

ただ、中にはあの人はどうなったの?という人もちらほら(笑)。
短編だと考えれば、解決のない終わり方もありなんですが、
連作短編だしなあ、結局一つの大きな物語になるわけだしなあ、
と考えたときに、放り出されたままの人のことが気になったり。
ま、それは物語全体からすると、とても些細なことなのですけどね。


共犯マジック
北森鴻著

出版社 徳間書店
発売日 2001.07
価格  ¥ 1,680(¥ 1,600)
ISBN  4198613826

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