紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「少年はスワンを目指す」榎田尤利

2004年10月06日 | あ行の作家
「夏の塩」から始まる魚住くんシリーズで
やられまくった榎田さん。それ以降、ボーイズラブ系の
シリーズものは読んだことがなかったのですが、
(あ、「眠る探偵」はBLか。でも1冊しか読んでない。
 そうか、続きが出ていないんだっけ(笑))
単発ものはそこそこ読んでます。
が、魚住くんほどの衝撃はなかなか味わえないですね。
逆に、ファンタジー系の「神を喰らう狼」なんかの方が
私的にはとてもしっくりきたし、満足もできました(^-^)。
(BL系が満足できないといっているわけではない)

で、本作ですが、武骨な男・原が王子系転校生・櫛形に
恋する物語。“王子”というあだ名通り、櫛形は
バレエ経験者。体育館で平均台の上に立っていた、
その姿を見ただけで、原は櫛形に一目ぼれしてしまいます。
それほどまでに美しい櫛形。イラストが添えられているのですが、
それがなくても文章だけで充分その美しさが伝わってくるほどに、
やっぱり榎田さんは言葉のマジックを披露してくれます。
“硬派”で通っている原は実は不器用なだけで、
ホントはとってもおちゃめさん(笑)。王子は見かけと
中身がまったく違い、いや合いすぎているのか(笑)、
超・わがまま。でも、そのふるまいの裏には事情があるわけで…。
武骨で不器用だけど、とても正直な原に、王子も少しずつ
心を開いていきます。その小道具がバレエって、しかも男だけって。
榎田さん、とっても素敵なセンスだと思います(^^;)。

少し前に読んだ「largo」がちとフツー過ぎて(笑)
物足りなかったんだよね。やっぱり榎田さんには、
一クセもふたクセもあるモノを描いてほしいと思います。
で、たまにいろんなところに“ガツン”とくる(笑)
ような作品を読めたらいいな(^-^)。

「少年はスワンを目指す」榎田尤利