劇団ぷにぷにパイレーツ座長日記

劇団ぷにぷにパイレーツ座長・石崎一気が、演劇、パントマイム、音楽等、舞台芸術の情報を、毎日発信!

打たれ強い

2015-04-10 07:07:37 | 演劇
僕にダメ出しされてへこんでいるうちの劇団員は、まだまだ甘い!
僕が、どれだけダメ出しされているかを、知らないのでしょう。
それも、一切の情け容赦なし!
全人格を否定されるほどのダメ出しです。
僕が、どれだけ絶望的になるか…。
えっ!誰にダメ出しされているかって…?
誰かを特定するのは難しいのですが、多分、演劇の神様だと思います。

僕は、新作脚本を書く為に、何か良いアイディアはないか、常々考えています。
すると、たまに良さそうなモチーフが頭に浮かんできます。
それをどう発展させれば作品になるか、知恵を絞っていきます。
何日も何日も、そのことばかり考えます。
ノートに沢山のプランを書いていきます。
しかし、ほぼすべてのアイディアがダメだということが、徐々に分かっていきます。
「あれもダメ!」「これもダメ!」「全部ダメ!」
何週間も考えた挙句、そのモチーフはまったく使えないことが判明します。
「何と無駄な時間を過ごしてしまったのだろう…」と自己嫌悪に陥ります。
そして、自分の無能に直面し、絶望してしまうのです。
没になった多くのプランをすべて供養してやりたいような気持にもなってしまいます。
「僕に才能がないから、お前たちを生かすことが出来なかった…」と、申し訳ない思いでいっぱいになるのです。

脚本として形になるのは、万に一つの確率です。
奇跡のような物語なのです。
その完成に至るまで、僕は、どれだけのダメ出しを受けていることでしょう?
完成したって、「こんなに酷い作品でごめんなさい!でも、僕にはこれが精一杯なんです…」という気持ちしかありません。
正直言って、辛いことしかないのです。

それに比べれば、演出上のダメ出しなんて甘い、甘い!
あのゼロに戻る感じを味わうことはないわけですから…。
谷底に突き落とされるような挫折感を知ってしまえば、演出家のダメ出しなんて全然怖くありません。

こうして考えてみると、演劇に最も必要な資質は、打たれ強いことなのかもしれませんね。