今日は、お薦めの本をご紹介させて頂きます。
アントニー・マン著、玉木亨訳の、『
フランクを始末するには』という短編集です。
まずは、内容から!
フランク・ヒューイットは芸能界の大スター。
殺し屋の“わたし”は彼の殺害を依頼され……。
二転三転するスター暗殺劇の意外な顛末を描いた英国推理作家協会短篇賞受賞の表題作のほか、刑事の相棒に赤ん坊が採用され一緒に捜査を行う「マイロとおれ」、買いものリストだけで成り立つ異色作、ミステリ出版界の裏事情を語る一篇など、多彩な12作で構成されています。
日本のミステリ雑誌にいくつか作品が紹介されたことはあるようですが、アントニー・マンの作品がまとまって本になるのは、本邦初のことだそうです。
実際、これまで、日本でブレークしなかったのも頷けるところがあります。
なんとも、奇妙な味わいを持った作品ばかりだからです。
推理小説でもなければ、スリラーでもない。
手に汗握る緊張感もなければ、強烈などんでん返しもない。
あえて言うなら、ユーモア小説の範疇に入るのかもしれませんが、その割りには不気味なんですよね。
こういった、ジャンル分け出来ない小説って、日本では人気が出にくいようなんですよね。
ただ、マンの作品には、他の作家では絶対に出せない、独特の旨みがあるんですよ。
訳の分からない設定ではあるのですが、まるでそれが当たり前であるかのようにストーリーを進めていくと、実に不可思議な結末を迎えることになります。
読後のモヤモヤした感覚は、初めて体験するものかもしれません。
きっと、「何じゃ、こりゃ!」とお怒りになる方も多いことでしょう。
(万人にお薦め出来る本ではありません)
でも、珍しい小説、ユニークなスタイルを求めている新しモノ好きな方なら、きっとご堪能頂けることと思います。
『フランクを始末するには』採録作品の中で、僕が最も気に入ったのは、「買いもの」という小品です。
”お買いものリスト”だけで、進行していきます。
メモを書いている人がだんだん変な物を買うようになっていき、それで、この人物に起きていることや精神状態が全て分かるというものです。この手法を思い付いたマンは、本当にカッコいい!
僕も、こんな作品をやってみたかったです。
でも、同じことをやると二番煎じになってしまいますから、実に悔しいですね。
何かしら作品を作っている人なら、きっと地団太踏むような作品が沢山詰まっている筈です。
『フランクを始末するには』は、今年のミステリランキングの上位に食い込むことは間違いありません。
「自分の趣味は、ちょっと変わっている…」という自覚のある方は、是非、ご一読下さい。
ただし、あなたのお好みに合わなくても、当方は一切関知いたしませんので、そのおつもりで…。
『フランクを始末するには』は、創元推理文庫から発売されています。
価格は、880円(+消費税)です。