超芸術と摩損

さまざまな社会問題について発言していくブログです。

いまだ検察側「控訴ゼロ」施行1年「裁判員裁判」の難題

2010-06-11 00:45:00 | 週刊誌から
 鳴り物入りで始まった裁判員制度も5月21日でスタートから丸1年を迎えた。最高裁の自己採点は“概ね順調”だが、水面下で難題が噴出しているのも事実。
「目下、最大の問題は公判前整理手続きの長期化です。対象事件で起訴されたのは20日までに1664人ですが、判決が言い渡されたのは約3分の1の530人に留まっています」(司法記者)
 素人が審理に加わる以上、それ相応の準備は必要だろう。しかし、
「スタート後の公判前整理手続き期間は平均4・2カ月と、08年の対象事件の平均3・4カ月を大幅に上回る。慎重になるのは分かりますが、裁判の開始が遅れれば被告人の拘置期間も長引き、証人の記憶が薄れるなど弊害は多い」(同)
 逆に、裁判員の負担を考慮してか、審理自体は3、4日で終わってしまう。
「そのため、被告人質問も通り一遍な内容に陥りがち。検察が傍聴席に背を向け、裁判員に向かって説得するパフォーマンス的な立証も増えましたね」(同)
 これで被告人の真意に迫れるのか、疑問は残る。
「検察側も弁護側も限られた時間の中で争点に即した立証を行おうとするので、審理が“儀式化”している印象を受けます。また、検察側の控訴がこれまでゼロというのは驚きです」
 元東京高事の牧野忠弁護士は手厳しい。
「昨年12月、佐賀地裁は殺人罪に問われた被告人に懲役5年の判決を下しましたが、検察の求刑は懲役13年。これまでなら検察が量刑不当で控訴してもおかしくない事例です」
 この背景には最高裁の“一審尊重”の方針がある。つまり、裁判員の判断を重んじろ、というワケだ。
 高裁で控訴棄却となれば一審判決以上に重い先例となるため、検察は慎重にならざるを得ない。
「さらに、性犯罪への対応は急務。強制わいせつ事件の犯人が別の強姦致傷罪で起訴された場合、併合審理の可能性がある。そうなれば、対象外の強制わいせつ事件の被害者も裁判員裁判の法廷に引っ張り出されてしまう。被害者の心情を考えて例外規定を設けるなど、裁判員制度にも“仕分け”が必要だと思います」(同)
 初の死刑判決も時間の問題。険しさは増すばかりだ。

週刊新潮2010年6月3日号
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