ま,本当に教科書に興味があるわけです。というのも,やっぱ,教科書販売って出版社にとっては,オイシイ仕事なんでありますな(大学への,ですよ)。学生諸君も,薄々,世間のからくりに気づいているとは思いますが,要するに,マンモス私立大学(古典的表現)の教養課程の授業なんて,聴講生が300人だ,600人だ,1000人だというのがありますから,それで部数が何割かでもはけますと,けっこうガッポリ。
生協さんも,出版社も,大学教員も潤うという構造でございます。単位のために買わされている? ま,そうですが,知識がたまるじゃないですか。知識はANAカードと一緒で,たまればラッキーってなもんですよ。知識なんぞ,なくなって生きていけるし。
とはいえ,グレていてもいけませんので,出版社の人間としては,
いい本
を作りたい,売りたい,と思うわけでございます(良心,ちゅうやつですね)。将来の読者であり,将来の著者にもなるわけですからね(これは商魂)。いい本,いい教科書を作ること――これは専門編集者の野望でありますよ。もちろん,ワタシは担当が心理でありますから,いい心理学の教科書をと,思っており。でも,考えるわけですね……
いい心理学の教科書ってなんだ?
というか,大学生の教科書に必要な,教養としての心理学っていうのは,何なんでしょうな。
ほんと行き詰ってしまう。
でも,仕事で大学教科書を作るわけですが,どう考えても,今ひとつであったりするものも多い。教養にしては狭く,専門知識としては大雑把というか,なんというか。
というわけで,悩んでいるところ,現役女子大生「スパイ012号」(殺しのライセンスは不携帯)から,タレコミがありました,
こんにちわ。
きょう新学期の授業が始まって,講師から「推薦図書」のリストが配られました。
添付します。
女子大生は,顔文字を使って欲しい(短いし)……とちょいエロキモ系オヤジのサイパブは思うわけでありますが,そんなオヤジのたわごとは放っておいて,そのリストを見たんですが,
ほほ~
と思ったわけです。
以下,羅列しまっせ。
マンガ心理学入門―現代心理学の全体像が見える 講談社 |
マンガ サイコセラピー入門 ベンソン, N. C.・ルーン, B. V. 小林 司(監訳) |
ご存知,マンガ・シリーズ。紹介済み。よくできてんだ,これが。
ヒルガードの心理学 ブレーン出版 |
ヒルガード,いっちゃん新しいの,出たんですね。もうヒルガードの名は名だけ。
よくわかる臨床心理学 下山晴彦(編) |
「よくわかる」ってのは,いろいろな本につきますが,けっこう本当の気がする。
精神医学ハンドブック―医学・保健・福祉の基礎知識 日本評論社 |
これも必修本ですな。レファ本という奴かも。
子どもの心の臨床―心の問題の発生予防のために 岩崎学術出版社 |
名著ですな。
教育心理学〈2〉発達と臨床援助の心理学 東京大学出版会 |
青年の熱い魂の叫び!
心理テスト―人間性の謎への挑戦 講談社 |
新書で手に入りやすいはず。
心理援助の専門職になるために―臨床心理士・カウンセラー・PSWを目指す人の基本テキスト コーリィ&コーリィ著 下山晴彦監訳 金剛出版 |
心理学研究法入門―調査・実験から実践まで 東京大学出版会 |
新1年生に読ますには,難しい肝し。
ともあれ,こういう10冊。
これは心理学というよりも,臨床心理系の学生のための推薦図書でしょうな。なるほどという良書が並んでおります。スパイ012の講師というのは東大系だな,こりゃ。(イメージです)
ユングや精神分析っぽいものはほとんどないので,ずいぶん健康度が高いですねぇ。まあ,あっち系は,好きでみんな読むものなのか,という読みなのか。
ま,これをどう思うか,と思うわけです。
教員の皆さんは,どういう教科書を使っておられるんですかね。
でもって,リストは続きます。
(次回へ続く)
>aoiさま
おお,自主的にだったんですか,素晴らしいです。自主的に読む本としてこれを選択してる慧眼もまた素晴らしい。忘れなければもっと素晴らしかったですねw
しかし,研究法って本当に学問の核心ですから,いい教科書はもちろん,いい講義,いい実習がなされてほしいなあと思いますですね。
大学の勉強ではなくて自分で勝手に買って勝手に読んでおりました。
ということで、
>最近はススンドルんですね。
が大学のカリキュラムが進んでいるという意味であれば、違いますよー。
>aoiさま
コメントありがとうございます。1年からというのは結構早いのでは。概論とは違って具体的な話になるので,なんとなく2年生くらいからなのかなというイメージがあったのですが,最近はススンドルんですね。
心理学実験計画入門
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4795207666
これですね。まったくノーマークでした……。探して読んでみます。
心理学実験計画入門 教師用マニュアル
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/479521252X
現在品切ですけど,こんなのもあるんですね。ふうむ。
もっとも、読み直そうかと思っていたら調子悪くなって読まないままになってしまったので、すっかり頭からぬけていますw
研究法関係であれば、学芸社からでている「改訂 心理学実験研究入門」がわかりやすいかもです。
小生も菊池先生ファンです!
ちょっと盛り上がったのでブログでエントリにしちゃいました。→TB
>psy-pub さん
まあ,読んでもなかなか私のように偏った考え方が修正されるとは限りませんけどねw
私の方でも、さっそくアンテナ&RSS&ブックマーク登録させていただきます。
ヽ(*^ー^)人(^ー^*)ノ
菊池先生ファンで、著作はひととおり揃えています。
紹介した本は、超常現象や不思議現象、オカルトなどを題材に、心理学の各領域の解説をした名著です。大学が非心理だった私が、心理に興味を持つきっかけになりましたし、心理の基本を学ぶ上でのバイブルになりました。「とんでも本」シリーズと合わせて読んでクリティカル・シンキングを鍛えました。
それから、教科書には向かないですが、菊池先生の「超常現象の心理学─人はなぜオカルトにひかるれるのか」も好きな本です。ワイドショーで霊能力者の化けの皮をはがした一部始終が収録されている章は痛快です。
未読のワタシは,心理学の考え方がまだ分かっていないんだなぁ~
反省。
>菊池聡・谷口高士・宮本博章 1995 不思議現象 なぜ信じるのか─こころの科学入門 北大路書房
は,普通の教科書でやる気をなくす方々を減らせる名著だと思います。小生は菊池聡先生の本でだいぶ心理学の考え方が分かりますた。
はじめまして&サンキュー照代であります。
まったく知らんかったです。
これは,オモシロそう。
いろいろ見てたらこんなんありました。
JAPAN SKEPTICS(『超自然現象』を批判的・科学的に究明する会)の心理分科委員会
http://petat.com/users/skeptics/psychology-top.html
教科書とは,方向違ってきたけど。
ちと古いですが、
菊池聡・谷口高士・宮本博章 1995 不思議現象 なぜ信じるのか─こころの科学入門 北大路書房
なんかいかがでしょう?
なに この おいしそうなハート
えい 喰っちゃえ
ぱく
おお!
有斐閣のシリーズもありましたね。
これもいくつかいい本がありますね。
まさに東大ばっかり,という感じですが。
「進化」があるのは,奥様の影響でありましょうか…
放送大学教材とは盲点でした。
って,あのリスト作ったの,ワタシではないですけどね。
な~る,そういう手がありましたか。
まったく感心。
長谷川寿一,大島尚,東条正城,丹野義彦著の『はじめて出会う心理学』http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4641120838
これが,かなりクオリティが高い。「進化」がきちんと触れられているのはこれだけ。さすが長谷川さんと思う。
>難しい肝し
こんなのはいかがでしょう。
放送大学教材「心理学研究法03」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4595236247/qid=1144741388/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/503-4804574-4545553
「心理学研究法入門」を執筆した三氏が,その2年後に,前書の専門的で難解すぎる部分を省き,記述を平易にアレンジして,かつ最新の知見を加えて,書き直したテキスト。
読みやすくバランスが良く,幅広い層にお薦めできる良書かと。
にしても講談社の「マンガ心理学入門」
私はあの本の良さがどうしてもわからん…。