和州独案内あるいは野菜大全

第一回奈良観光ソムリエであり、野菜のソムリエ(笑)でもある者の備忘録のようなもの。文章力をつける為の練習帳に

仏隆寺の桜と・・・

2008年05月10日 | 和州独案内
 仏隆寺のある赤埴の里が最も賑わいを見せるのが桜の季節です。昨年は、偶然にも満開の時期にライトアップされた夜桜を見ることが出来た。人影も無く、まだ夜ともなれば肌寒い山里にポツリと立つモチズキ桜の古木は、昼間の華やかさとは違ったコ惑的な雰囲気を漂わせていました。
 今年は知人に誘われて、四月の最終週に訪れることにしました。春の陽気の中、一風毎に花びらを散らす姿は、美しいの一言に尽きますが、石段を横切るように垂れ下がる電線が気にならなくも無いような。特にカメラをやる人などは構図を決めるのが大変かもしれません。せめて観光地位は電線の地中化が必要なのかもしれませんね。
 景観のことで言えば、去年までとすっかり姿を変えてしまった場所があります。仏隆寺のある山を「光明ヶ岳」と呼ぶそうですが、それに正対している山(一名はわかりません)に林道が切り開かれて、コンクリのてらてらした壁面が山の中腹辺りに姿を晒しているのです。仏隆寺は集落のドン突きにあるのでそこまで行ってしまえば見えませんが、参道の途中からは白い人工物が口を開けた様な姿が良く窺えます。
 この林道の正体は赤埴カラト線と言って、仏隆寺から室生寺そして二年前に完成した室生山上公園を結ぶ、実質上観光道路として計画されたものだそうです。造ったは良いものの不良物件化している山上公園に何とか人を招きいれるための苦肉の策とでも言えばよいのでしょうか?確かに一級の観光資源である室生寺と仏隆寺を結ぶ動線が出来たことは悪くは無いと思うのですが、造る場所が悪すぎるだろうと・・・。
 このルートはいわゆる「室生古道」に、役の行者像のあるカラト峠から完全に重なって上書きされ造られています。まあ歩いたことのある人は分かると思うのですが、室生古道自体が決して風情のあるものではないのも事実でした。それでも伊勢本街道から分岐し、かつて室生寺の南門と呼ばれた仏隆寺から峠まで息を切らせながらも越え、腰折地蔵まで辿り着けば、目の前には将に「未敷蓮華」の室生の山容を楽しむことが出来たのです。その爽快感は歩かないと感じられないものでしょうし、一般車が入り込まない道だからこそ安心して歩けたのに・・・。
 ただし、この林道は流石に麓から目立つだけあって恐ろしく見晴らしが良いんです。この辺りではどんな山に登るよりも素晴らしい眺望が開けており、開通後は必ず話題になるのではと思います。
 光明ヶ岳頂上とほぼ同じ目線で林道が取り付いているので、仏隆寺の地主神の「白岩神社」の名前の由来であろう、そして御神体でもあろう白い岩壁もすぐ間近に見ることが出来ます。
 余りだらだら書いてもしょうがないのでこの位にするとして、最後に桜の話をもう一度することにします。赤埴の隣に「諸木野」の集落がありますが、ここの桜も今年になって新聞やらで取り上げられて割と有名になったそうです。早苗が植えられた田んぼの水面に写る満開の桜の木なのですが、桜の時期と田植えが重なるなんて平坦では勿論考えられません。山間部と言ってもさすがに早すぎるくらいに早い作柄で、いつ頃からこんな風景が生まれたのかが気になるところです。