新宿駅西口ユーザーのワタシは、帰宅時の電車を待つあいだに、いろんなものを買ってしまいます。「手品のジョニーくん」「お香」「無名歌手のCD」などなど。あとから考えると無駄なものも多いのですが、最近定期購読に近く購入しているのが、「私の志集」という詩集本です。新宿西口を使う人ならほとんどの人が知っていると思いますが、小田急ハルクへと続く歩道橋下に毎夜「私の志集300円」とのプラカードをさげた女性が立っています。街頭詩人というジャンルの活動をしている芸術家です。声をかけるわけでもなく、無表情のままただ一点をみつめ立つ姿は、都市伝説が現実になったような圧倒的な存在感を放っています。
白のブラウスに黒のロングスカートといったいでたちで、夜の9時頃から12時頃まで立っています。この女性は日疋冬子さんという方で46歳ということですが、暗い夜ですので30歳台にしかみえません。37歳年上の夫、日疋信(ひびきしん)さんと共著で詩をつくり、彼女が販売しているようです。20歳からこの街頭詩人をしているそうで、もう26年間もこの生活を続けているそうです。この生活を貫かせたのは、夫の先妻の意思によるものとのことです。夫も先妻も街頭詩人だったそうですが、先妻が交通事故で亡くなってから、冬子さんが遺志を継ぎ、活動を続けているそうです。この辺のことは、39号「夏空」に書いてますが、「先妻の遺志が循環する」と表現しています。
最新号は、5月16日発売の第39号「宿命は風の中に」です。32号「最後の化け物」からは欠かさず購入してしています。だだい20ページ前後のガリ版で刷ったような詩集で、おおむね半年ごとに新刊を発行しています。
この冬子さんは、非常に有名な方で、『私の志集 三〇〇円』というドキュメンタリー映画にもなっています。http://blog.livedoor.jp/gandhara_eigasai/archives/50546872.html この映画のことを聞いたら、勝手に盗撮されて作られてしまったと言ってました。感情を押し殺したような方ですが、「今最新号は何号ですか?」と聞くと笑顔でこたえてくれます。次号は11月ごろだそうです。