ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【練】『炎の第九』コバケン氏登場

2008年08月05日 22時01分47秒 | 練習記録
♪千歳フィル練習 2008.7.9(木)・10(金)・11(土)@千歳市民文化センター大ホール
 もうとっくに本番は終ってしまいましたが、コバケンこと小林研一郎氏による練習のメモを残しておきます。当初の予定では、コバケン氏は本番一週前の土日と前日・当日の4日間参加の予定だったところ、途中で変更になり、本番を含めた木曜日から日曜日までの連続4日間の日程になりました。千歳まで4日連続の通勤。。。さすがに大変ですが、こんな機会は二度と無い! と4日間とも全出席しました。

<1日目・7/9(木)>
・サミットが終わったので、それまでの厳戒態勢はウソのように姿を消す。
・練習会場に着いてみると、ずいぶん駐車場が空いている。平日なのでさすがに参加者が少ないのかと、ちょっと心配に。ステージに上がるとあちこちのパートにボチボチ空席が。コバケン氏の反応を想像するとドキドキハラハラ。
・「今日はこの席でお願いします」と、セカンドトップの方の指示でトップサイドへ。指揮台のド真ん前[写真]。普段の練習なら平気ですが、これがコバケン氏となると……ゴクリ……
・練習開始時間が近づくにつれて、コバケン氏の登場は今か今かとステージ上の緊張感はどんどん高まります。コンマスN氏が舞台袖に一度引っ込み、緊張の面持ちで出てきたので、いよいよ登場か!? と思ったら「今、歯を磨いてます」 ズコー
・ほどなくして、コバケン氏はあっさり登場。その第一声は「皆様と会うのを楽しみにして参りました」、そして「皆の持てる力の限界をさらに超えた演奏をしましょう」という旨のお話の後、音出しへ。
・練習中の楽譜への書き込みは禁止。練習のペースが速く、集中を途切れさせないため。
●1楽章
・「皆さん、オーラが無い!」 もっとオーラを体から出すこと。音楽を体から出すこと。自分の表現をすること。頻出事項。「オーラ」「魂」「意思」「神」そんな言葉がよく出てきました。
・「皆さん姿勢が悪すぎる!」 体の姿勢が、内面の音楽も全て物語っている。姿勢は最重要。
・コバケン氏は、もうボロボロになった、どこのメーカーだか見たことの無い、青っぽい表紙でA5サイズくらいのフルスコアを持参していました。しかし、練習中にほとんどそれを開くことは無く、全て暗譜で練習進行。練習記号や小節番号もほぼ頭に入っています。フルスコアの写真を撮りたかったのですが、休憩の度にそれを持って引っ込んでしまうので、指揮棒を撮るのが精一杯でした。
・冒頭の弦へ→10億光年の彼方から聞こえてくるように。楽器で弾くのではなく、自分のパートを口で歌わせる。ほんのすこしの囁き、極小の音量で開始。弓の使う部分を弓先に全員そろえる。一人でも違う位置で弾いている奏者を見つけたら捕まえて直させる。
・空席のティンパニを、暇そうにしている他の打楽器奏者に叩くよう指示。「ヨーロッパのオケでは常に空席の隙をうかがっている」 たとえ休みでもボサッとしないで、自分の出来そうなことを見つけること。
・ホルンへ→「全員で吹いてください!」他の管楽器もアシとか関係なく、常に全員で吹くよう指示。pp だろうがお構い無し(本番は別)。ステージ上の全員が演奏に参加するところに意味がある。
・練習開始からいくらも経たないうちに、コバケンパワーでオケからは信じられないような音が。弾いてて泣けてくる。
●2楽章
・正確なテンポで弾くと遅れて聴こえる。ちょっと前につんのめること。過去、どこで弾いても「いかに走らないようにするか」に苦心してましたが、これは目からウロコの指示。
・大きいリピートは全て無し。この指示が伝わっていないことを知ると、「三河君に言っといたハズなんだけどなぁ~」「僕のCD聴いてないのかなぁ~
・「皆さん、楽譜探すのヘタね~」早いペースの練習に一部の奏者は右往左往。「さっきの所からもう一回!」の指示だけで、そこまでの文脈を読んでどこから開始かを把握すること。「何小節目からですか??」などという質問は厳禁。
・木管へ→自分の能力の限界の最弱音を吹いてみるよう指示。その後で、「では、その10分の1の音量で下さい」 木管殺しのメチャクチャな指示をアッサリと出す。しかし不思議なもので、コバケン氏に「出せ」と言われると、それまで自分で最弱と思っていた音より更に小さな音が出るものなのですね。「自分にはこれ以上は無理」という先入観はとても邪魔。
・コバケン氏の頭の中の楽譜の小節数と、オケ使用楽譜(ブライトコフ新版)の小節数が合わず発した言葉。「どこのメーカー!? その楽譜捨てたら?」 どうも、ブライトコフ新版だのベーレンライタ新版だの、些細なことは全然気にしていないらしい。第九の本質とは関係無し。演奏するのは『コバケン版の第九』。
・トロンボーンへ→「そんな吹き方して楽しい?」「楽しくなければ音楽ではない!」頻出事項。「違う!! そこは "強く" じゃなくて "大きく" だ」 「強い音」と「大きな(広い)音」とは別物。
・練習が進むにつれて分かってきたのが、前週に訪れた三河正典氏の指導の適確さ。本当にコバケン氏が振るように振っていたようです。ほんのちょっとの補正だけでOK。
●3楽章
・冒頭の木管は、とてつもないプレッシャーの中で寿命が縮む思いでしょう。
・冒頭の弦へ→弓先15cmで、みっちり弾く。
・1楽章に続いて、こちらも出だしをハミングで歌わせる。それを聴いたコバケン氏。「歌の方が上手い」……というのは冗談でした。
・先日の三河氏練習にて書き込んだ指示に従って弾いていると、「そこはビブラートいらないかも」と目を見て個人的に指摘。今後、第九を弾く時は一生このメロディーにビブラートをかけることはないでしょう(写真中段最後の小節から)。
・この楽章の冒頭には4楽章の "歓喜のメロディー" が隠されているのを発見し、その昔『題名の無い音楽会』で披露したというエピソードを語る。
・「あと100時間ぐらいこうやって弾いていたいなぁ~」 ホントに第九が好きで好きでたまらないようです。しかし100時間はさすがにムリ。
●4楽章
・「出だしのチェロバスは命がけですよ!」 やっぱり。
・「すぐに上手くなるオケほど、すぐに忘れちゃう」 頻出事項。誉められてるんだか、けなされてるんだか。
・おとなしく弾いてる弦楽器後列奏者へ→「私ダメかも、なんて弱気になっちゃダメ!!」 「参加することに意義がある」などと、こっそり参加なんて認めない。音を出してナンボ。全員一人残らずバリバリ弾くこと。
・「dim.とは音を保つことです」 一般に認知されている「音をだんだん小さく(弱く)」という意味とはちょっとニュアンスの違う感覚のようです。
・三河氏の指導以来の、終り数十小節のオケ全体の派手なボディーアクションに対して、「素晴らしい!」の言葉。以降、練習のシメには920小節目から弾くことが恒例に。
●2楽章
・要所要所で盛んにパート毎に立たせて吹かせていたが、ついにはフルートを一人呼び、指揮台の上に立たせてソロを吹かせ、ちょっとした個人指導。「これやると、度胸がつくよ! 他のパートもどんどんやらせるから!」 この言葉には皆、戦々恐々。しかし、立って弾くと本当に音が変わるものですね。楽器演奏における下半身の重要さを再認識。
●1楽章
・冒頭の刻みはハッキリ6連譜。拍にちょっとだけ頭をつける。
・フルートへ(511-512小節)→「うまいねぇ」 思わずポロリと、ついにコバケン氏からブラボーの言葉が。
・弓の足りなくなるフレーズへ→「誰かボタン一つで伸びる弓発明してくれないかなぁ
・ハンガリーの楽団に「めりはり」という日本語を教えたエピソード。演奏旅行の移動中の汽車でトランプに熱中する楽団員達。「トランプの何がそんなに面白いの??」の問いに対して「(演奏と遊びの)"めりはり" です」の返事。
・オケへ「素晴らしい。よくここまで練習しましたね」 頻出事項。
・出番無く待機していたトロンボーンへ→「一緒に吹きたいでしょ?? 何でも良いから一緒に吹いて!」 もうナンデモアリ。
・この楽章の最後は "咆哮" である、と、自ら実演。その迫力に圧倒される。
●その他のコバケン氏語録
・「演奏会当日、もし会場に入れず外で聴く人がいたなら、その人達にも聴かせるつもりで」 音楽はホールの中だけのものではない。こぢんまり弾かない。
・練習中の小話を終えて。「不思議なことに皆さん、しゃべってる間にうまくなる」 小休止の有効性について。
・「面白くない音楽を聴かされると、石を投げたくなる
・「僕が一番嫌いなのは、曲の始めに顔を上げないこと!

<2日目・7/10(金)>
・この日からVn2のトップにゲストの白井英治氏(東京芸大講師)が参加。私は本来の最後尾へ。
・「練習中の書き込み禁止」の御触れが出ていたが、ちょこちょこコバケン氏より直接「書き込んで」の指示があり、時と場合によるらしい。
●1楽章
・冒頭ホルンへ→過去、余所の演奏会にてホルンの出来が良くなく、これで最後まで演奏するのはつらいと感じた時に一度演奏を止め、客席を向いて謝った後にやり直した、ということが三度ほどあるとのこと。「ここでは、そんなことが無いようにしましょうね」 なんというプレッシャー。
●2楽章
●4楽章
・この日、合唱とコバケン氏は初顔合わせ。
・それまで合唱の配置が下手から Sop→Ten→Bas→Alt だったのが、どういう打ち合わせがあったのか、この日から Sop→Alt→Ten→Bas に。
・「もしかすると、"本当の" ベートーベンの音楽は、未だ誰も耳にしたことが無いのではなかろうか?」 これがベートーベンを演奏しつづける理由。
・合唱へ→「今ごろ楽譜見ている人間は出ていけ!!」 ちゃんと前を向いて歌いましょう、の意。
・「楽譜に書かれた "divoto" の意味わかりますか?」 "敬虔な" の意。言われるまで、こんな単語が書かれている事に気付きませんでした。
・一部弦楽器が弓の変更でゴニョゴニョ動いていたら(←あちこちでよく見かける光景) 「たかが弓一つのことで、合唱を disturb してるよ!!」と一喝。たとえ合唱への指導中だろうと練習に集中すること。
・ステージ花道に控えていた合唱練習用ピアニストが、コバケン氏の要求に素早く反応できない場面あり。フルスコアを丸ごと頭に入れて、どの小節からでも一瞬で弾きださなければならないような厳しい仕事。たかが伴奏ピアノと舐めてかかることはできません。ついには、ピアニストにまでコバケン氏の指導が。
・合唱の発音が気に入らない時は、代わりにオケのメンバーに発音させる。「合唱よりオケの方がうまいじゃないですか
・合唱、オケ、共に練習中上手く演奏できたと思ったら、お互いに惜しみの無い拍手を。
●3楽章
・「ゴルフのついでにでも北海道に来たときは、ボランティアで是非また来たい」 千歳市民の演奏にコバケン氏御満悦。毎年コバケン指揮第九だなんて、魅力ではありますが、うれしいような怖いような。
●4楽章
・では練習のシメに920小節目から。すると、Tim奏者が用事のためいなくなっており、それに気付いたコバケン氏、「後で、彼(Tim)に "コバケンが怒っていた" と伝えてください
・「皆様お疲れ様でした」 練習が終わり、「今日も練習疲れたなぁ、さて急いで帰る仕度しなきゃ」と思ったそのとき、コバケン氏より一言。「今までいろんなオケに行ったけど、座ったままで挨拶するなんて(失礼な)オケは初めて見ました」、「皆さんのことがキライになりました」とステージを後に。そこまで和やかに練習が進み良い雰囲気だったのが、この一言で一気に凍り付きました。全く弁解の余地無く深く反省。明日の練習はどうなってしまうのか。

<3日目・7/11(土)>
・昨日の一件から一夜明け、コバケン氏がステージに現れると同時に、メンバー全員がザザザっと起立。「よろしくお願いします!」 それを見たコバケン氏、「皆さん、やることが極端なんだから(笑)
・コバケン氏の言うべき事は初日にほぼ言い尽くし、後はその指示の刷り込み作業で、喋るよりも音出しの時間が日を追うごとに増えました。
・この日もシメはやっぱり4楽章の920小節(Prestissiomo)から。

・まだまだ書ききれないほどいろんな話を聞きました(3日目はもう力尽きた)。多少無理してでも出ておいてよかったと思える、充実した4日間でした。今はまだ実感がありませんが、計り知れないほどの影響を受けてしまったような気がします。音楽・オケ・バイオリンに毒され、さらに深みに。

♪本番 小林研一郎指揮『炎の第九演奏会2008in千歳』 2008.7.13(日)15時開演@千歳市民文化センター

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4 コメント

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読みながら緊張しました。 (もりりん)
2008-08-05 23:22:04
そうですか、そういう感じだったのですか。
凄い経験ですね・・・。
当日の演奏は、背筋にゾクゾクっときました。
圧倒されながら聴きました。
最初はぴかりんさんを見つけられませんでしたが、演奏開始数分後には、激しく揺れるぴかりんさんの頭が人とヴァイオリンの間からチラチラと見えましたよ。 
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いいなあ (ちゅう)
2008-08-05 23:43:58
合唱で参加したかったのですが(もちろんパートはSop)、断念(涙)。
読ませていただいているだけで、ドキドキしました。あの緊張感は、たまらないですよ。ぴかりんさんが、すごくうらやましいです。
何だか中毒になりそうですね(笑)。
返信する
すごいー (ゆっきー)
2008-08-06 17:19:06
あの空気の中、こんなに多くのことを覚えているぴかりんさんに感心しました!練習も本番も、楽しかったし本当に勉強になりましたよね。
もう一度第九したいです☆
返信する
まだまだ燃焼中 (ぴかりん)
2008-08-10 16:03:53
> もりりんさん
ご来場ありがとうございました。開始と同時に激しく揺れっぱなしで疲れました。チラチラ見えたということは、半分よりちょっと前くらいの席でしょうか。またしても、もりりんさんを見つけることはできませんでした。

> ちゅうさん
なんと、共演する一歩手前だったのですね。コバケン氏の言葉を信じるなら、再度千歳を訪れる可能性は高いように思えますが、どうなることやら。もし機会があれば是非ご参加を! きっと心に残る体験になりますよ。共演を楽しみにしています♪

> ゆっきーさん
「その日のうちにメモ!」とにかくこれに尽きますね。一晩寝たらかなり忘れてます。
本番お疲れ様でした。第九はどこで弾いても感動します。次にこの感動を味わえるのはいつの日か。。。
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