遺伝子診断で何ができるか 出生前診断から犯罪捜査まで, 奈良信雄, 講談社ブルーバックス B-1222, 1998年
・遺伝子の専門家ではなく、白血病研究が専門の著者による遺伝子入門書。タイトルに「遺伝子診断」の言葉は使っているが、それに特化した内容というわけでもなく、遺伝子のイロハから記述している。特に目新しさを感じる部分もなく、専門家の手による書ではないだけに、「関連書を10冊読んで1冊にまとめた」感は否めない。
・「クローンとは、元来は一つの木の枝から出てきた小枝の集団をさす。それが嵩じて、生物学ではまったく同じ遺伝子をもつ細胞同士や、個体同士をクローンといっている。」p.21
・「血液型とは、血液細胞の表面の膜にある糖鎖抗原のタイプを示すものだ。 血球表面上にある糖鎖の末端部分にフコースとガラクトースがあるとO型である。これにアセチルガラクトサミンがついたらA型で、もう一つガラクトースのついたものがB型である。」p.23
・「1997年8月、父親がO型(遺伝子型はOO)で、母親がB型(遺伝子型はBO)という両親からA型の子が生まれたという発表があった。(中略)原因は、血液型を決める遺伝子が変化したことによる。」p.25
・「ヒトの生命の設計図といえるDNA暗号文をすべて理解すれば、あらゆる生命現象がたちどころに解釈できるかもしれない。三五億年の生物進化の歴史もたどれよう。病気の原因もわかるだろう。」p.41
・「DNAという材料をまず刻むのに使うのが、制限酵素という道具である。(中略)塩基がずらずらと並んだDNA。いくら短くしろといわれても、制限酵素というハサミは、絶対にデタラメに切ったりはしない。決まった塩基配列しか切らないすぐれものなのだ。」p.94
・「切断されたDNAの断片を、元通りに接着する働きをするのが、DNAリカーゼという酵素である。あとで出てくる、遺伝子組み換えになくてはならない道具だ。」p.95
・「DNAは、熱を加えたりすると、二本鎖がほぐれる。熱をさますと、またくっつく。これをアニーリングという。このときには、当然、相補的な相手とくっつく。相補的な核酸同士がくっつくことを、ハイブリダイゼーションという。」p.106
・「これまで、DNAなりRNAを調べる方法や、使い方を見てきた。だが、自然にある素材だけでは、検討は十分ではない。もしもそっくりのコピーをたくさん作りあげ、それを調べたり使ったりできれば、はるかに作業ははかどる。しかも、正確さだって増すはずだ。 この要望に応えるのが、PCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクションの略)法という、コロンブスのタマゴ的な発想だ。」p.110
・「すでに遺伝子組み換えという言葉はこれまでにも登場した。ここであらためて説明しておくと、切断した遺伝子を、異なる遺伝子につなぎこむことをいう。」p.113
・「「ヒト」は、人間の種を表すホモ・サピエンスの和名である。かたや、「人間」は、過去数百万年前の先祖や近縁種を含め、二足歩行をする霊長類の一群をさす。」p.123
・「このように、研究対象とする遺伝子によって、推定年代が違ってしまう。これからわかるように、ある日突然に一人の新人がさっそうと登場したわけではないのだろう。新種の形成は、集団の人口を維持しながら、少しずつ新しい血をもつ集団へと移行していったに違いない。」p.131
・「つまり、病気というのは、遺伝子で規定される患者個人の素因を基に、いくつもの環境因子が加わって起きるものと考えてよい(5・1図)。」p.152
・「ガンとは、ある一個の細胞が突然に過剰の増殖を開始し、無制限に増え続けて起きる病気だ。本来あるべき正常の細胞を邪魔者扱いにする。さらに、転移して、いろんな臓器にも障害を与える。こうして、人間を死に追いやる。」p.165
・「遺伝子診断技術が急速な発展をとげる今こそ、社会のコンセンサスを得る作業にすぐにでも取りかからねばならない。 こうした作業は、残念ながら日本は苦手だ。何か問題が浮上してはじめて、あわててルールを作る。この体質は、近い将来になっても、そうかんたんには直るまい。 その点、合理的なアメリカでは、さっそく法律作りに取りかかっている。」p.211
・「そんな中で、これぞ本当によくわかるという解説書がある。それは、コンピュータの専門家とか、ソフトウェアの開発者が書いたものではない。その分野の人が書いた本こそが、じつはやっかいな代物なのだ。汗水流してパソコンを使いこなしたユーザーの代表が、自らの惨憺たる経験を披露して書いた入門書がある。これなら、よくわかる。(中略)遺伝子を解説した書物も、書店によく並んでいる。が、パソコン入門書と同じく、けっこう難解なものがほとんどだ。(中略)筆者は、もともと分子生物学者ではなく、内科医だ。風邪の人も診察すれば、高血圧症のおばあさん、糖尿病のおじいさん、胃ガンや白血病の患者さん、何でもござれのしがない医者だ。 と、同時に、ガンがどうして発病するのか? ガンはどのようにして発見するのが効率的か? はたまた、最適の治療法は? これらを研究する研究者でもある。(中略)ガンの研究をするには、分子生物学や遺伝子工学の知識がなくては始まらない。ガンが遺伝子の病気であるからだ。」p.213
・遺伝子の専門家ではなく、白血病研究が専門の著者による遺伝子入門書。タイトルに「遺伝子診断」の言葉は使っているが、それに特化した内容というわけでもなく、遺伝子のイロハから記述している。特に目新しさを感じる部分もなく、専門家の手による書ではないだけに、「関連書を10冊読んで1冊にまとめた」感は否めない。
・「クローンとは、元来は一つの木の枝から出てきた小枝の集団をさす。それが嵩じて、生物学ではまったく同じ遺伝子をもつ細胞同士や、個体同士をクローンといっている。」p.21
・「血液型とは、血液細胞の表面の膜にある糖鎖抗原のタイプを示すものだ。 血球表面上にある糖鎖の末端部分にフコースとガラクトースがあるとO型である。これにアセチルガラクトサミンがついたらA型で、もう一つガラクトースのついたものがB型である。」p.23
・「1997年8月、父親がO型(遺伝子型はOO)で、母親がB型(遺伝子型はBO)という両親からA型の子が生まれたという発表があった。(中略)原因は、血液型を決める遺伝子が変化したことによる。」p.25
・「ヒトの生命の設計図といえるDNA暗号文をすべて理解すれば、あらゆる生命現象がたちどころに解釈できるかもしれない。三五億年の生物進化の歴史もたどれよう。病気の原因もわかるだろう。」p.41
・「DNAという材料をまず刻むのに使うのが、制限酵素という道具である。(中略)塩基がずらずらと並んだDNA。いくら短くしろといわれても、制限酵素というハサミは、絶対にデタラメに切ったりはしない。決まった塩基配列しか切らないすぐれものなのだ。」p.94
・「切断されたDNAの断片を、元通りに接着する働きをするのが、DNAリカーゼという酵素である。あとで出てくる、遺伝子組み換えになくてはならない道具だ。」p.95
・「DNAは、熱を加えたりすると、二本鎖がほぐれる。熱をさますと、またくっつく。これをアニーリングという。このときには、当然、相補的な相手とくっつく。相補的な核酸同士がくっつくことを、ハイブリダイゼーションという。」p.106
・「これまで、DNAなりRNAを調べる方法や、使い方を見てきた。だが、自然にある素材だけでは、検討は十分ではない。もしもそっくりのコピーをたくさん作りあげ、それを調べたり使ったりできれば、はるかに作業ははかどる。しかも、正確さだって増すはずだ。 この要望に応えるのが、PCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクションの略)法という、コロンブスのタマゴ的な発想だ。」p.110
・「すでに遺伝子組み換えという言葉はこれまでにも登場した。ここであらためて説明しておくと、切断した遺伝子を、異なる遺伝子につなぎこむことをいう。」p.113
・「「ヒト」は、人間の種を表すホモ・サピエンスの和名である。かたや、「人間」は、過去数百万年前の先祖や近縁種を含め、二足歩行をする霊長類の一群をさす。」p.123
・「このように、研究対象とする遺伝子によって、推定年代が違ってしまう。これからわかるように、ある日突然に一人の新人がさっそうと登場したわけではないのだろう。新種の形成は、集団の人口を維持しながら、少しずつ新しい血をもつ集団へと移行していったに違いない。」p.131
・「つまり、病気というのは、遺伝子で規定される患者個人の素因を基に、いくつもの環境因子が加わって起きるものと考えてよい(5・1図)。」p.152
・「ガンとは、ある一個の細胞が突然に過剰の増殖を開始し、無制限に増え続けて起きる病気だ。本来あるべき正常の細胞を邪魔者扱いにする。さらに、転移して、いろんな臓器にも障害を与える。こうして、人間を死に追いやる。」p.165
・「遺伝子診断技術が急速な発展をとげる今こそ、社会のコンセンサスを得る作業にすぐにでも取りかからねばならない。 こうした作業は、残念ながら日本は苦手だ。何か問題が浮上してはじめて、あわててルールを作る。この体質は、近い将来になっても、そうかんたんには直るまい。 その点、合理的なアメリカでは、さっそく法律作りに取りかかっている。」p.211
・「そんな中で、これぞ本当によくわかるという解説書がある。それは、コンピュータの専門家とか、ソフトウェアの開発者が書いたものではない。その分野の人が書いた本こそが、じつはやっかいな代物なのだ。汗水流してパソコンを使いこなしたユーザーの代表が、自らの惨憺たる経験を披露して書いた入門書がある。これなら、よくわかる。(中略)遺伝子を解説した書物も、書店によく並んでいる。が、パソコン入門書と同じく、けっこう難解なものがほとんどだ。(中略)筆者は、もともと分子生物学者ではなく、内科医だ。風邪の人も診察すれば、高血圧症のおばあさん、糖尿病のおじいさん、胃ガンや白血病の患者さん、何でもござれのしがない医者だ。 と、同時に、ガンがどうして発病するのか? ガンはどのようにして発見するのが効率的か? はたまた、最適の治療法は? これらを研究する研究者でもある。(中略)ガンの研究をするには、分子生物学や遺伝子工学の知識がなくては始まらない。ガンが遺伝子の病気であるからだ。」p.213