シュタイナー入門, 西平直, 講談社現代新書 1458, 1999年
・どういう肩書きをつけたらよいのか分からないほど多彩な活動をした偉人、ルドルフ・シュタイナーの遺した思想・宇宙観についての入門書。本書の言葉を借りると、「この本は、一般向けの、そのまた初歩の初歩を、少しばかりかいまみた程度にすぎない。」p.194 とのことで、それほどその思想は遠大であるようです。
・『モモ』→『子安美智子』→『シュタイナー』という流れで興味を持った。
【目次】
第1章 シュタイナー教育の実際――自由ヴァルドルフ学校からの問いかけ
第2章 シュタイナーの生涯
第3章 シュタイナーの基礎理論――『神秘学概論』を手がかりとして
第4章 思想史の中のシュタイナー――思想史的測定の試み
・「シュタイナーの名前は、今日かなり知られている。 とりわけ「シュタイナー学校」は、今や、自由教育の象徴であり、教育改革の希望の星のように語られたりもする。」p.7 そこまでメジャーなのか疑問。少なくとも私のまわりの人からは"シュタイナー"という言葉を聞いたことはありません。
・「なんども繰り返すが、シュタイナーという人は、本気なのである。精神異常とか、薬物中毒などとは、まるで無縁の人。その語り口は、きわめて理論的。しかも、体系的。 「重厚なゲルマンの体系構成と、ドイツ人的非現実的空想との奇妙な混交」(セオドア・ローザック)とは、言い得て妙だろう。まったく独自のコスモロジー(世界観・宇宙観)なのである。」p.12
・「外から取り入れた知識を本当に自分のものとするには、このように、いったん「忘れた」ことを思い出し、「再会する」必要がある。」p.20
・「むしろ、そもそも、教師という存在そのものが、芸術家でなくてはならない。「人生の芸術家」「魂の芸術家」。」p.29
・「「すべての教育問題は、教師の問題である。」 シュタイナー自身そう語るほど、この学校における教師の役割は大きい。すべて、教師の人間的な力量にかかっているといっても過言ではない。」p.48
・「オカルティストのレッテルは、それまでの信用を、一切奪い去る。言論界からの抹殺だって、十分あり得たことである。そして、実際、アカデミズムは(ほとんど今に至るまで)、まったくといってよいほど、彼を無視し続けるのである。」p.53
・「実は、30歳から40歳までのおよそ十年間、シュタイナーという人が、何を考えていたのか、よくわからないのである。(中略)自信も使命感も帰属感も持てない、焦りと不安を伴った、混沌とした若き日の苦しみ。まさしく、エリクソンが「アイデンティティの混乱」と名づけたその状態。「アイデンティティの危機」。」p.55
・「後年の彼の言葉で言えば、「超感覚的(ubersinnlich)な次元」があまりに身近だったので、実生活の「感覚的世界」だけを唯一の世界とは、感じなかったのだろう。」p.58
・「「シュタイナーは他の人と比べものにならないくらい、ゆっくりと成長するタイプの人間だった」(C.ウィルソン『ルドルフ・シュタイナー――その人物とヴィジョン』中村保男・中村正明訳)」p.72
・「ウィーン時代にニーチェの『善悪の彼岸』を読んだシュタイナーは、「精神(霊)の生活は、誠実でなければならない」という言葉そのままに生きるこの思想家に、深く傾倒していた。」p.75
・「たとえ、「見えない」からといって、「ない」とは言ってはならない。感覚的には見えなくても、「超感覚的」レベルに至った認識によって、初めて明らかになる領域も「ある」。」p.99
・「ただ、おもしろいことに、ベールイによると、外国語を学ぶ才能だけはなかった。「何とかフランス語を話したが、ひどいなまりがあった」と報告して、すぐに続けている。「それは私を安心させた。それ以外の領域で、あまりに完璧でありすぎたからである」」p.103
・「文学的な想像力のイメージ世界などとはまるで違う、厳密な学としての「神秘学=精神科学(霊学)」、それをシュタイナーは構想していたのである。」p.117
・「つまり、自我の働きがあって、初めて時間的連続性を持った自覚が成り立つというのである。」p.120
・「その意味において、「物質体・エーテル体・アストラル体・自我(私)」という四つの基本概念こそ、その理論体系のもっとも根底にある「テクニカル・ターム」なのである。」p.127
・「例えば、シュタイナーの話によれば、死はなんら恐れる必要がない。 死は、ライフサイクルのひとつの場面、発達段階のひとつに過ぎない。子どもの体から大人の体になり、そして老人の体になるのに続いて、その体から離れてゆく。そして、そのプロセスは、肉体から離れた後も継続する。」p.138
・「つまり、現代(近代)という時代は、第四段階(地球期)の第五期の、そのまた第五番目の時代ということになる。」p.145
・「シュタイナーは、自分の思想が「すべて自らの認識から出発した」ことを、たびたび強調している。『神秘学概論』をはじめとする理論的な主著でも、他の思想家からの引用は、ほとんど見当たらない。すべて自分の観察だけを手がかりに、独自の用語を駆使しながら、人間と宇宙の神秘を解き明かすのである。」p.150
・「シュタイナーという人は、その神秘に触れていた。のみならず、そこに法則性を見ていた。超感覚的な認識によって「霊(精神)の働きの法則性」について解き明かした人だったのである。」p.185