映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「もののけ姫」

2008年04月23日 | 映画~ま~
1997年 日本映画

いわずも知れた、長編アニメーション映画の大作です。この映画、1997年ということは、『千と千尋の神隠し』よりも古いんですね。なんだか意外です。

宮崎さんの描くモンスター…といったら語弊がありますな。ええっと、なんといいますか…巨大生物?特に人間の行いが原因で戦うことになったものたち。『もののけ姫』でいえば呪いをもらってしまったタタリガミ(祟り神?)、『風の谷のナウシカ』でいうとオウムとか。ものすごくグロいですよね。心をざわつかせる様な、かなり直接的な気色悪さをあえて出してくる。宮崎監督の姿勢の表れともいえるのかな。でもこれ、テレビアニメだったら苦情とか来ないのかしら。「表現がきつすぎる」とか。この場合は映画だし、宮崎監督=権威だからこないだろうけど。

この映画を観るたびに、ものすごく申し訳なく、身につまされる思いに駆られます。ほかの動物や植物のことは良く知らないけど、世の中の連鎖を乱しまくっているのが、人間。映画の中でアシタカが何度も「森と人間が共生する道はないのか?」と問うているけど、その答えは見出せないまま。モロ(山犬)には「アホか?」と一蹴されるし。でも、現在の地球上の出来事を考えてみても、人間は破壊こそするけれど自然やその他の動植物が生活する助けには全くなっていないものなぁ。今でこそリサイクルじゃ、再生じゃと歌っているけど、壊してしまったから、限界に来たから動き始めただけで。それでもやっぱり生きていくしかないわけだし、「人間が存在すること=地球を破壊していくこと」…とは等式で言い切れないかもしれないけど、どこか認めざるを得ないことのような気がする。

私が『もののけ姫』を魅力的に感じる理由のひとつに、登場人物たちの描き方がある。正義の味方と悪者というとおり一辺倒ではなくて、人間のもつ多様性、一人の人間のさまざまな顔、また立場によってその人への評価や見方が異なるということを見事に描いていることに、本当に感心する。その中でも特に好きなのはエボシ。タタラ場のリーダーで、鉄を製造するためには山も切り崩すし動物たちも皆殺しにする。製品や材料、食材を運ぶ牛飼いの命だって、仕事と天秤にかけ見殺しにもする。反面、偏見をもたれていた皮膚病(ハンセン病だと思う)患者たちの世話をし、仕事も与える。売られた女性たちを保護し、タタラ場で仕事を与える。とにかくタタラ場での彼女の存在は絶対であり、尊敬を集めているように見える。アシタカに助けられ命拾いした牛飼いたちへも、実際は見捨てたわけだが、「私がついていながら、すまなかった」と本人、その妻に謝る。そう言葉に出し詫びることで、彼女への尊敬や信頼は失われず、皆が彼女についてくる。しかしジバシリたちにはうまく使われてしまったり。

アシタカがタタラ場を去る際の牛飼いの長の言葉にも、名前もわからない一人の登場人物だが彼の性格や人となりを表していてとても印象に残っている。この牛飼いの長、声は名古屋章だったのですね。今ウィキペディアで知りました。

それにしても声優陣がものすごく豪華。川に落ちエボシに見捨てられた牛飼い・甲六は西村雅彦。ぴったりです。こういうアニメの声優に選ばれる、って俳優冥利に尽きるでしょうね。

正直、シシ神の昼の姿に少々脱力しましたが(笑)、とても興味深く引き込む力のある作品。娯楽作品ではないので、内容は重いですが見る価値のある一本です。


おすすめ度:☆☆☆☆☆



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2 コメント

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もののけ姫ギター! (ちょめちょめ)
2008-09-28 18:06:17
もののけ姫大好きです!
ギターで弾けます★
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☆ちょめちょめさま☆ (おゆり)
2008-10-20 05:23:11
大変遅くなりました!!!コメントありがとうございます。もののけ姫って、奥深いですよね。みるたびに新たな発見があり、感想がどんどん変わっていきます。それにしてもギターで弾けるとは。米良さんのあの歌ですよね??ちょめちょめさん、なぜまたあの歌をお選びになったんでしょう。ギターでもののけ。その選曲の妙、抜群です。
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