映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「17歳のカルテ」

2007年09月29日 | 映画~さ~
この映画が公開された当時、「17歳」というのが世間ではよく取り上げられていた。「17歳」=「最近の高校生」「何を仕出かすかわからない」「病んでいる」というイメージだったのだろう。この映画の原題に一言も「17歳」という言葉は出てこない。出演している女優達に「17歳」の言葉でくくられるイメージは全く無い。あえて言えば、主演の2人以外の女優達が演じる役どころは、確かに10代後半なのかも知れない。


この映画を初めて観たのは京都の映画館で、大学の友達と一緒だった。当時ウィノナ・ライダーはまだイタイ女優というイメージは無く(殴)、どちらかというと映画好きの中ではかなり評価の高い女優だった。・・・しかし映画を見終わって、皆無言。正直「失敗した」と思った。

しかしそんな空気の中でも、「アンジェリーナ・ジョリー」という女優の存在をそこで知れたことは大きかった。とにかくずば抜けていた。ウィノナが食われていた。あの抜群の存在感にカリスマ、演技力の高さ、巧みなアドリブ(おそらく)、すべてに驚いた。あの役がはまりすぎていて、他の役を演じているところを想像できないほど。そのくらい素晴らしかった。


映画館で見たあと、そのときは「どうしてくれよう…」と思ったのだが、その後なぜか気になってビデオやテレビの放送時に何度か見てみた。するとどんどん映画の魅力にひき込まれていった。

インパクトのある娯楽作品ではない。楽しめるような内容でもない。現実の世間では偏見をもたれるような環境に身をおく少女達の話だ。そういう病気に少しでも理解が無ければ、この映画はただ退屈で最後まで見るのはかなり辛いだろう。

誰でも楽しめる類の映画ではない。しかし、アンジェリーナ・ジョリーの演技力を楽しむ作品としては優れている。それに映画作品として、決して退屈ではない。

大きな流れがある話ではないので皆におすすめはしないが、静かに、少女達の声にならない苦しみに耳を傾けられる人には見てほしい作品。


最近気づいたのだが、『8マイル』以前のブリタニー・マーフィーも重要な役どころで出演している。ウィノナには独特の魅力があるが、実際この映画のあの役どころはウィノナでなくてはならなかったかどうかは疑問。



お勧め度:★★★★   (個人的にはかなり好き)

「デンジャラス・ビューティー」

2007年09月29日 | 映画~た~
サンドラ・ブロック主演のコメディー。

これまでも『あなたが寝てる間に』『評決の瞬間』とかサンドラの映画は見たことがあったし、いい映画だったんだけど、なんとなくサンドラに苦手意識を持っていたアタクシ。この映画を観て、サンドラの魅力にはまりました。

とにかくサンドラは演技が上手い。いわゆるコメディー女優って、全身からどこと無く「幸せオーラ」を放って、「ほらあたしってこんなサバけた役もできるのよ。女優だから」という鼻持ちのなさを感じることがあるのだけど、この人はそういう雰囲気を微塵も出さない。女優として今後、役が限定されるのでは?と心配されるようなキッツイ顔芸もしている。

まず主役のキャラ設定が絶妙。女性的要素を見事に排除したFBI捜査官である彼女の日常が描かれている前半と、ミス・アメリカに潜入する煌びやかな後半。前半の映画を見ていると、これが彼女の素なんだろう・・・と思えてしまうほど。仕事で失敗をして部屋に戻り、ストレス解消のためにサンドバッグを殴るシーン・散らかった部屋で足元の荷物につまずくシーン・冷凍食品をレンジで温めるシーンに全く演技を感じさせない。


変身後、ここでは「さすが女優」観を見事に披露。


周りを固めるキャストがしっかりしているので、このコメディーが締まります。
マイケル・ケインのおねえキャラは素敵。恋人役のベンジャミン・ブラッドの魅力も存分に楽しめる映画です。

映画の内容は、コメディーなのでありえない部分はもちろん満載ですが、正直そんなことはどうでもよい。これはサンドラのはまり役。

頭が良く、ユーモアがあって独立心旺盛な女性。美容に気を配るような女性を「バカ」と見下し、独自の路線をひた走る。・・・がその見識もミスに出場する女性達と接することで変わっていく。

とにかく主役のグレイシー(サンドラ)のキャラが上手く作りこまれ、しっかりとした人物像が描かれているからこそ、このコメディーの面白さが増しています。



お薦め度:★★★★☆

「かもめ食堂」

2007年09月29日 | 映画~か~
小林聡美、もたいまさこ主演の日本映画です。

日本人女性がヘルシンキで営む食堂(カフェのが近いかな)に集まる、個性的な人々を描いた物語です。特に大きな物語のうねりがあるわけではなく、穏やかに話は進んでいきます。

どうしてお店をヘルシンキで?

との問いに店主(小林聡美)の返答は「無理があるだろう…」と思ってしまうような、かなりごり押し、無理やりな理論を展開したりもしていますが、多分この映画は物語を楽しむというよりは、映し出される淡々とした日々の生活を楽しむものだと思います。

とにかく出てくるお料理が素晴らしく美味しそうなのです。

この映画を観た翌日、シナモンロールを作ってしまったアタクシ。かもめ食堂の看板メニューはシナモンロールにおにぎり、焼き鮭定食、からあげ…なぜ底にシナモンロール?とここでも疑問に思ったりもしますが、そこに注目しても仕方が無いんです、この映画。そんな疑問は極力持たずに観てください。

印象的なシーンが二つあります。

もたいまさこの荷物が届かず、着替え用の洋服を探しに行きます。新しい洋服を購入しかもめ食堂に帰ってきたもたいまさこは、マリメッコの素敵なコートを着こなしていました。

旦那に家出をされたフィンランド人女性。旦那に未練たっぷりだったのが自分の人生を楽しむようになり、かもめ食堂の3人と一緒にオープンカフェでくつろぐシーン。それまで地味な印象だったのが、4人ともそのときの気分を表すような鮮やかな洋服を着こなし、降り注ぐ太陽を受け、生き生きとした大人の余裕のある表情があります。

小林聡美演じる日本人女性の、芯の通ったブレの無い凛としたたたずまいが素敵です。おにぎりやから揚げ。そんな日本に住んでいたらいつでも食べられるような食事を、今すぐ欲したくなるような。そんな映画です。



お薦め度:★★★☆   無駄の無いキッチンが素敵です。(写真)