オバマ政権の核戦略見直しが大詰めの段階に来ています。この中で、大きな争点になっているのが、核兵器の役割をどうするかです。「核兵器なき世界」を主張するオバマ大統領の下、米国の核兵器使用は核兵器攻撃に対する報復だけに限定すべし、という議論が勢いを得ている一方、現在のように、大量破壊兵器の使用や大規模な通常兵器攻撃に対しても使用する選択肢を残すべきだという議論も有力です。
核兵器の役割をできるだけ限定しない方がいいとする人の多くが、日本のような同盟国が不安になり、核兵器を持とうとしないようにするため、との理由をあげています。こうした議論に対抗するように、先ごろ「憂慮する科学者同盟」から、日本の非核方針はホンモノで、懸念には及ばない、という報告書が出されました。
http://www.ucsusa.org/nuclear_weapons_and_global_security/nuclear_weapons/policy_issues/japan-america-nuclear-posture.html
注目されるのは、参考資料として、1968年と1995年に日本政府内で行われた核戦略研究が公開されていることです。これらの研究の背景には、当時の中国や北朝鮮の核兵器保有への動きがありますが、2つの報告書は、日本の核武装の選択肢を含めて検討した上で、非核政策を肯定する結論を出しています。
これらの報告書は、これまでにも関係者やジャーナリストには知られており、私の手許にもありますが、一般の目に触れやすい形にはなっていなかったのではないかと思います。
2つの報告書は、政府としての公的な検討というより、私的な検討という位置づけのものと思われます。米国の核戦略が転換期を迎え、核密約が白日の下にさらされている中、本来であれば、こうした検討を政府内で行うことが今こそ必要と思われます。ただし、それは多くの部分非公開で行われるべきものであり、現政権の下で行うにはあまりにリスクが大きすぎるかも知れません。
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