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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

3月23日・エーリヒ・フロムの自由

2018-03-23 | 科学
3月23日は、映画監督、黒澤明が生まれた日の(1910年)だが、心理学者エーリヒ・フロムの誕生日でもある。

エーリヒ・ゼーリヒマン・フロムは、1900年、ドイツのフランクフルトで生まれた。両親はユダヤ人で、エーリッヒは一人っ子だった。
18歳でフランクフルト大学に入学したエーリッヒは、はじめ法律学を学んでいたが、やがて社会学に転じ、20歳のころから精神分析学のトレーニングを受けはじめた。
31歳のとき、フランクフルト大学で精神分析学の講師になったが、33歳の年にはナチス党を率いるヒトラーが首相をへて独裁者となり、ユダヤ人迫害がはげしくなった。
フロムはスイスへ避難し、34歳のとき、米国へ移り、ニューヨークのコロンビア大学や、バーモント州のベニントンなどの大学で教えた。
49歳のころからメキシコの大学や研究所で心理学を教え、57歳で米国へもどった。
74歳のころ、スイスに引っ越し、1980年3月、スイスのムラルトで没した。79歳だった。
著書に『自由からの逃走』『正気の社会』『愛するということ』などがある。

フロムは、新フロイト派と呼ばれる心理学者の一人で、フロイト心理学を発展的に批判した人である。フロムの人間観の核心は、おおよそこんな感じである。
「人間は自由をほしがるくせに、いざ実際に自由を手に入れると、急に孤独を感じだし、不安になる。それで、せっかく手にした自由を投げ捨てて、なにか拝みすがるものを求め、他者との一体感のある世界へ逃避しようとする」

『自由からの逃走』で、フロムはファシズムのできあがるメカニズムを分析した。
社会が流動化して、人々が個人個人に分断され、孤独になり、不安を感じだすと、人々はすすんで自由をなげうち、強力な指導者を求め、強い国家に服従したがるようになる、と。これなど、ヒトラーの台頭した時代分析というだけでなく、強い現代性がある。

フロムは、現代では愛は困難であり、愛の実現のためには、それなりの技術がいるとして『愛するということ』を書いた。そのなかで、彼はこう言っている。
「現代人は自分自身からも、仲間からも、自然からも疎外されている。現代人は商品と化し、自分の生命力をまるで投資のように感じている。投資である以上、現在の市場条件のもとで得られる最大限の利益をもたらさなければならないということになる。人間関係は、本質的に、疎外されたロボットどうしの関係になっており、個々人は集団に密着していることによって身の安全を確保しようとし、考えも感情も行動も周囲とちがわないようにしようと努める。」(鈴木晶訳『愛するということ』紀伊國屋書店)
フロムの考え方は、アメリカ1960年代の対抗文化(カウンター・カルチャー)の思想とかなり重なる。共感するところ大である。
(2016年3月23日)


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