沈黙の春

本ブログの避難用ブログです。

持続する心生活保護問題

2012-05-31 18:28:55 | 政治、法律など

田中優の“持続する志”(優さんメルマガ 第130号)からの転載です。
2012.5.31発行

※このメルマガは転送転載、大歓迎です。

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◇■ 田中優より ■◇
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生活保護「不正?受給」の向こう側

 「人気お笑いタレントの母親が生活保護を受給していることを女性週刊誌が
報じたことを契機に生活保護に対する異常なバッシングが続いている」そうだ。
ぼくはテレビを持っていないからよくわからないのだが、人気があるらしい。


これをあおっているのが世耕弘成議員と片山さつき議員だそうだ。あまり言わ
ないようにしているものの、「政治家だったらもっと勉強しておけよ」と思う。

 扶養義務には二つあって、「絶対的扶養義務」と「相対的扶養義務」がある。


簡単に言うと、ひとつのパンを分け合って食べるのが絶対的扶養義務で、未成年
の子に対する親の責任と夫婦間の関係だ。それに対して自分のパンを確保した
上で与えるのが相対的扶養義務だ。今回の場合は相対的扶養義務に該当する。

 言われているような異常なバッシングはできない関係だが、それでも自分の
残ったパンを分け与えることはできたと思う。要は「脇が甘かった」のは事実
だろう。

 しかしそれは「不正受給」ではない。
というのは、個人のプライバシー上語れないことがたくさんあるからだ。
ケースワーカーは個人の秘密を絶対に語ることができない。ぼくは今回の件を
全く知らないから言えるのだが、もしかしたら母親からの虐待やネグレクトが
あったかもしれない。

 それでも「扶養しろ」というのは無理だし、扶養させた場合、将来の時点で
今度は逆に母親を餓死させるかもしれない。また、一緒の住居に暮らしていない
ようだし、母親が扶養を断ることだってある。しかも「お笑いタレント」が
こんな悪い話の中心に置かれたのだから、今後、人気が落ちて本当に食べられ
なくなるかもしれない。そのときは生活保護を再開できるのだろうか。

 以前に「おにぎりが食べたい」と書いて餓死した人がいた。それで生活保護は
厳しすぎるのではないかと問題にされたことがある。しかしその人の病名は
「慢性肝炎」だった。多くの場合、この病名はアルコール依存症を想起させる。

 食べたいのが「おにぎり」ではなく、発酵させた「酒」だったらどうなって
いただろうか。どちらにしてもケースワーカーはその話を絶対に言えない。

 それを軽々しく叩く政治家の神経がイヤなのだ。彼らが作った法に基づいて
執行しているのに、それを政治家が叩くのは裏切りだろう。

 ぼくがなぜ詳しいかといえば、以前にケースワーカーをしていたことがある
からだ。ぼくの実感では、受給者の95%は正当な受給者だ。もちろん生き方の
問題はないわけではない。

 「どうせ長生きしない」と思って将来に備えなかった人、自分の好きなように
生きたあげくにどん底に落ちた人などだ。しかしそれでも自分のせいではなく
不幸な目に落ちた人も多い。残りの5%にグレーゾーンの世帯がある。

 ときどき男が出入りしている母子世帯(悪いことではないがもしかしたら
扶養逃れかもしれない)、仕事に行っているのに収入申告が少なすぎる世帯、
アルコール依存症の世帯などだ。そこであれこれ調査を続けるわけだが、
外に言うことは絶対にできない。

 外に話せないことをいいことに、政治家が叩くのは異常だ。政治家は立法で
戦うのが職業なのに、法をそのままにして叩くことができるのか。

 すべきことは個人のプライバシーを勝手に報じたことの問題ではないか。
女性週刊誌は一体どこから情報を入手したのか。誰がリークしたのか。
それを使って異常なバッシングをした政治家に対して、女性週刊誌が問題に
すべきではないのか。
 絶対に話せないことがあるのが職業としてのケースワーカーだ。

一方のお笑いタレントも、イメージが重要なのだから、絶対に本当のことは
言えないだろう。ただ謝って、嵐が過ぎるのを待つしかない。
 ぼくから見ると二人の政治家、世耕弘成議員と片山さつき議員の資質に
問題があるとしか思えないのだが。

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 その直後にこのような対策が作られた。マッチポンプのようにも見える。

「生活保護受給 扶養困難、証明義務づけ 厚労相、支給水準下げも検討」
小宮山洋子厚生労働相は25日、人気お笑いコンビ「次長課長」の河本準一さん
の母親が生活保護を受給していた問題に絡み、生活保護受給者の親族が受給者を
扶養できない場合、親族側に扶養が困難な理由を証明する義務を課す生活保護法
改正を検討する考えを示した。

 保護の決定を行う各自治体は現在、保護申請者に扶養可能な親族がいるかどうか
聞き取り、親族には扶養の可否を問い合わせているが、明らかに扶養可能でも
拒否するケースもみられるという。

 小宮山厚労相は同日午後の衆院社会保障と税の一体改革特別委員会でも河本さん
の問題に触れ、「扶養義務者は責任を果たしてほしい」と述べ、余裕があるのに
扶養を拒む場合は積極的に家庭裁判所へ調停を申し立てる考えを示した。

 現在も調停や審判の申し立ては可能だが、家庭の事情に踏み込むのを嫌って、
実際に申し立てた例は「20年以上把握できてない」(厚労省)という。
 小宮山厚労相は生活保護費の支給水準引き下げを検討する考えも表明。
生活保護の受給開始後、親族が扶養可能と判明した場合は積極的に返還を求める
意向も示した。(産経新聞 5月26日)

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フジテレビ
「生活保護費の不正受給に関連して、あなたの周りで首を傾げるようなことが
あれば、めざつぶまでお寄せください」
だそうだ。


急にクローズアップされた生活保護問題③

2012-05-31 17:36:14 | 政治、法律など

こうした分析から、自民党の議員などが求めている生活保護費の10%カットに合理性はない。むしろ民主党政権になってデフレから脱却しなかったので、経済的な苦境に陥り、それが生活保護者の増加を招いた公算が強いので、デフレから早く脱却することが必要である。インフレ率が2%程度になれば、10%の生活保護者が減少して、「生活保護費の膨張」を抑えることは可能である。

「いびつな現状」を改善する方策

 次に「いびつな現状」の改善である。これは、役所の側のチェック体制で対応するしかない。

 実際、厚労省(社会保険関係)は徴収については法的には税と同じで、給付(公金支出)についても「負の税」として厳格に行うべきところなのに、税との扱いの差は大きい。本コラムでは歳入庁の話をしてきたが(例えば、5月2日「消費税の地方税化に対する反論に反論する」)、国民背番号の導入とともに歳入庁を創設し、社会保障(徴収・給付)と税を一体として運用しなければいけない。これが本来の意味での社会保障と税の一体改革で、今議論されているものはまやかしである。

 いずれにしても、まず、歳入庁と国民背番号の導入が、「いびつな現状」の改善のために必要だ。当面、生活保護の「罠」に落ち込むと、なかなかそこから出ることができない。そのためには「アメとムチ」が必要だ。ムチとして一定期間で給付を打ち切ることも考えられる。もっともこれは慎重に行う必要がある。アメとして、働くと給付打ち切りでなく、可処分所得が少しずつ増えるやり方が必要だ。

 このやり方としては、国民背番号と歳入庁の導入後、ベーシック・インカムに通じる「負の所得税」(具体的には、先進国で既に導入されている給付付き税額控除が第1歩。給付付き税額控除については、1月27日の本コラム「社会保障を人質に理屈なき消費税増税を狙う 消費税の社会保障目的税化は本当に正しいか」参照)がある。すると、厚労省の中で生活保護を含み縦割りとなっている社会保障を、一括して一元的に行うことが可能となってくる。

そこまでいけば、生活保護に伴う認定の不合理性などが排除され、客観的な所得・資産の把握がほぼ完璧に行われる中で、生活保護制度も「負の所得税」に吸収されてくる。もちろん、この段階では不正給付は格段に少なくなり、「いびつな現状」は改善されるはずだ。

 生活保護問題に金融政策が関わっていることに違和感を持つ人もいるだろう。しかし、米国の金融政策は雇用の確保が法的に義務づけられている。バーナンキFRB議長に対する記者会見でも、話題はもっぱら失業率の話だ。

 金融政策で失業率を低下させることができるので、生活保護問題の解決には有効だ。日本では、雇用・労働問題を構造問題としてとらえる経済学者、社会学者、法学者ばかりだ。雇用、労働問題をマクロの金融政策で対処しようとしないのは、筆者から見れば奇妙なことに思える。

 マクロにおける金融政策によるデフレ脱却と、ミクロにおける縦割り行政の打破になる「負の所得税」(歳入庁と番号制を含む)の導入、この両輪で生活保護問題は合理的に解決できるだろう。

 

 


急にクローズアップされた生活保護問題②

2012-05-31 17:10:42 | 政治、法律など

デフレ脱却と「負の所得税」が合理的な解決策

なお、生活保護者1人当たりの金額の1人当たりGDPに対する比率をみると、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、OECD平均はそれぞれ、43%、26%、87%、38%、32%であり、現時点の日本は50%と先進国の中でも比較的高い。

生活保護増加の本当の理由

 政権交代後、生活保護者は175万人から20%、35万人増えて210万人になっているが、生活保護世帯の世帯類型をみると、高齢者世帯、母子世帯、障害者世帯、傷病者世帯、その他世帯のうちその他世帯の伸びが高く(図表2)、それぞれの構成比は高齢者世帯42%、母子世帯8%、障害者世帯12%、傷病者世帯21%、その他世帯17%になっている。不正受給がもし統計数字0.4%の10倍の4%としても、20%の増加をとても説明できない。

 となると、生活保護者数の増加を何で説明できるだろうか。この増加はほとんどデフレで説明可能だ。デフレになると所得が失われ、失業が増える。このためインフレ率と失業率の間には逆相関があり、この関係はフィリップス曲線として知られている。これと同じ説明であるが、1990年からの生活保護者増加率とインフレ率には明確な逆相関関係があり、相関係数は▲0.9となる。具体的にいえば、インフレ率が▲1%だと、生活保護者は5%(10万人程度)増加する(図表3)。

 


急にクローズアップされた生活保護問題

2012-05-31 17:04:24 | 政治、法律など

ダイヤモンドオンラインhttp://diamond.jp/articles/-/19320 から。

生活保護問題が急にクローズアップされた。きっかけはある芸人の出来事だ。

 一方、今国会で議論されている社会保障と税の一体改革では、建前として社会保障充実や財政再建のために消費税増税が必要という。もちろんこれは単なる方便で、現実には政権交代で膨らんだ歳出規模が10兆円以上(図表1)あり、その穴埋めに使われるだけなので、社会保障充実や財政再建にはならない。

本当に不正受給は多いか

 生活保護に関心が高いのは、不正受給の問題があるからだ。多くの人が生活保護には不正受給があるのではないかと疑っていることがある。今年3月1日に公表された2010年度の不正受給は2万5355件、128億7426万円だった。生活保護費は3.3兆円なので不正受給は0.4%しかないということになるが、誰もがこの数字は氷山の一角であると思っている。

 筆者も仕事上、地方公共団体の事務をみることがあるので、不正受給の問題が根深いのは知っている。ただし、日本の生活保護は必要なところにいっていないという批判もある。ある研究では、生活保護水準以下の所得で暮らしている人は人口の13%と推計しているが、実際にもらっている人は1.4%にすぎないというものもある。

 

これはやや極端としても、厚労省推計では要生活保護世帯なのに、生活保護を受けていない世帯は229万世帯だが、実際に生活保護を受けている世帯は135万世帯だ(2010年4月)。となると、364万世帯が本来なら生活保護が必要なのに、37%の135万世帯しか生活保護を受けていないことにある。つまり、生活保護については、本来受けるべき人が受けずに、受けるべきでない人が受けているという「いびつな現状」になっている。

 もう一つ関心をもたれているのは最近の「生活保護費の膨張」だ。政権交代後、生活保護者は35万人増えて210万人となり、生活保護費は3.3兆円になっている。「生活保護費の膨張」が「不正受給」と関連づけられて、一般国民の間に怒りが高まっているようだ。

生活保護の受給比率は低い

 そこで、「いびつな現状」を改善し、「生活保護費の膨張」を抑える両面作戦が必要になってくる。

 そのために分析を慎重に行う必要がある。もし、「生活保護費の膨張」が「不正受給」に基づくのであれば、解決策は簡単で、生活保護費のカットでいい。もし、そうでないとすれば、生活保護費のカットは、不正受給の改善には少しは効果があるかもしれないが、本来受けるべき人が受けられないことを助長し、「いびつな現状」の改善にならない。

 分析の前に、各国の生活保護の実情も知っておこう。日本の生活保護費は、国際的にみても、給付総額は少なく保護されている人も驚くほど少ない(埋橋孝文「公的扶助制度の国際比較」『海外社会保障研究』127号、Summer 1999年)。

 日本、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、OECD平均の公的扶助総額の対GDP比は、それぞれ0.3%、4.1%、2.0%、2.0%、3.7%、2.4%だ。現時点でみても日本は0.7%程度である。また、日本、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、OECD平均の公的扶助を与えられている人の総人口に占める比率は、それぞれ0.7%、15.9%、2.3%、5.2%、10.0%、7.4%だ。現時点でみても日本は1.4%程度にすぎず、先進国の中で際立って低い数字である。


トマトの全遺伝子、世界初解読=高品種開発に期待―かずさDNA研

2012-05-31 09:58:30 | 食品の安全

時事通信 5月31日(木)2時3分配信

 かずさDNA研究所(千葉県木更津市)は30日、トマトの全遺伝情報(ゲノム)の解読に世界で初めて成功したと発表した。遺伝子の配列などが判明し、病害虫に強い品種や高栄養種の開発などが期待できるという。研究成果は31日付の米科学誌ネイチャーに掲載される。 

最終更新:5月31日(木)8時45分