沈黙の春

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急にクローズアップされた生活保護問題

2012-05-31 17:04:24 | 政治、法律など

ダイヤモンドオンラインhttp://diamond.jp/articles/-/19320 から。

生活保護問題が急にクローズアップされた。きっかけはある芸人の出来事だ。

 一方、今国会で議論されている社会保障と税の一体改革では、建前として社会保障充実や財政再建のために消費税増税が必要という。もちろんこれは単なる方便で、現実には政権交代で膨らんだ歳出規模が10兆円以上(図表1)あり、その穴埋めに使われるだけなので、社会保障充実や財政再建にはならない。

本当に不正受給は多いか

 生活保護に関心が高いのは、不正受給の問題があるからだ。多くの人が生活保護には不正受給があるのではないかと疑っていることがある。今年3月1日に公表された2010年度の不正受給は2万5355件、128億7426万円だった。生活保護費は3.3兆円なので不正受給は0.4%しかないということになるが、誰もがこの数字は氷山の一角であると思っている。

 筆者も仕事上、地方公共団体の事務をみることがあるので、不正受給の問題が根深いのは知っている。ただし、日本の生活保護は必要なところにいっていないという批判もある。ある研究では、生活保護水準以下の所得で暮らしている人は人口の13%と推計しているが、実際にもらっている人は1.4%にすぎないというものもある。

 

これはやや極端としても、厚労省推計では要生活保護世帯なのに、生活保護を受けていない世帯は229万世帯だが、実際に生活保護を受けている世帯は135万世帯だ(2010年4月)。となると、364万世帯が本来なら生活保護が必要なのに、37%の135万世帯しか生活保護を受けていないことにある。つまり、生活保護については、本来受けるべき人が受けずに、受けるべきでない人が受けているという「いびつな現状」になっている。

 もう一つ関心をもたれているのは最近の「生活保護費の膨張」だ。政権交代後、生活保護者は35万人増えて210万人となり、生活保護費は3.3兆円になっている。「生活保護費の膨張」が「不正受給」と関連づけられて、一般国民の間に怒りが高まっているようだ。

生活保護の受給比率は低い

 そこで、「いびつな現状」を改善し、「生活保護費の膨張」を抑える両面作戦が必要になってくる。

 そのために分析を慎重に行う必要がある。もし、「生活保護費の膨張」が「不正受給」に基づくのであれば、解決策は簡単で、生活保護費のカットでいい。もし、そうでないとすれば、生活保護費のカットは、不正受給の改善には少しは効果があるかもしれないが、本来受けるべき人が受けられないことを助長し、「いびつな現状」の改善にならない。

 分析の前に、各国の生活保護の実情も知っておこう。日本の生活保護費は、国際的にみても、給付総額は少なく保護されている人も驚くほど少ない(埋橋孝文「公的扶助制度の国際比較」『海外社会保障研究』127号、Summer 1999年)。

 日本、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、OECD平均の公的扶助総額の対GDP比は、それぞれ0.3%、4.1%、2.0%、2.0%、3.7%、2.4%だ。現時点でみても日本は0.7%程度である。また、日本、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、OECD平均の公的扶助を与えられている人の総人口に占める比率は、それぞれ0.7%、15.9%、2.3%、5.2%、10.0%、7.4%だ。現時点でみても日本は1.4%程度にすぎず、先進国の中で際立って低い数字である。



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