沈黙の春

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スカイツリー本で観光気分

2012-05-27 00:35:17 | 旅行

様々な視点から仰ぐ塔

 

 地下50メートルまで掘り下げた基礎工事や、揺れを抑える「心柱(しんばしら)」構造などを豊富な図版で分かりやすく解説したのが、モリナガ・ヨウ作、絵『図解絵本東京スカイツリー』(ポプラ社)だ。デザインから設計、施工に至る過程、約3万7000ピースもの鉄骨の製造、組み立ての様子など、工事の流れが手に取るように分かる。大人も子供も楽しめる、まさにスカイツリー入門の決定版だ。平塚桂『東京スカイツリー』(ソフトバンククリエイティブ)は、コンパクトな新書サイズに写真をふんだんに盛り込んだ。著者が建築ライターだけに、工法などを詳しく解説。建設途中の写真も多く、着工から完成するまでを追体験できる。

 松瀬学『東京スカイツリー物語』(KKベストセラーズ)は、高さ634メートルという世界一の自立式電波塔造りに挑んだ11人のドラマ。東京タワーの10倍という鉄骨の約2割を加工した技術者の「志」、照明コンサルタントが目指した「粋」など、それぞれの思いを漢字1文字に込めて描く。ツリーの役割や経済効果について知りたければ、山田泰雄『徹底検証 東京スカイツリーの誕生』(鳳書院)が便利。テレビの地上デジタル放送移行に伴う電波再編などが分かりやすく解説されている。

 スカイツリーの誕生で東京の下町の風景も変わった。様々な場所から撮った写真を集めたのが、読売新聞東京本社編『下町新景』(中央公論新社)。夕日、花火、桜、富士山……、何と一緒でも絵になる。三浦展『スカイツリー東京下町散歩』(朝日新書)は、ツリーの足元に広がる押上、向島など東京の拡大で生まれた「新しい下町」を町歩きの達人が紹介する。

 そもそも、人はなぜタワーにひかれるのか。その秘密を探るのが林章『塔とは何か』(ウェッジ)。バベルの塔に始まる歴史も興味深いが、青森・三内丸山遺跡の巨大遺構や島根の出雲大社にあったとされる空中神殿など、日本は古くから「塔の国」だったという指摘は、なるほどと思わせる。鈴木重美『このタワーがすごい!』(中公新書ラクレ)も、「タワー大国」日本の様々な塔を紹介。スカイツリー誕生が、身近にある塔を見直すきっかけになるかもしれない。

「生活を題材にすべて実話」地元情報満載の漫画も登場

 東京スカイツリーを題材にした漫画も登場した。魚乃目三太(うおのめさんた)さん(36)=写真=の『スカイツリーの周辺で愛を叫ぶ』(PHPコミックス)だ。

 ベストセラー『世界の中心で、愛をさけぶ』をもじった書名だが、タイトルに偽りなし。大阪から上京し、ツリー近くで暮らし始めた若い漫画家が同居する恋人と結婚するまでを、ツリーの建設経過と同時進行で描いたエッセー風漫画だ。

 「漫画家になる前、ゼネコンに勤めていたので、建築物が大好き。下町に住んでみたかったこともあって、この辺りを選びました」と魚乃目さん。安くておいしい魚屋や居酒屋、もんじゃ焼き屋、川面に映る「逆さツリー」や狭い路地の隙間から見える「スキマツリー」が眺められる穴場など、地元住民ならではの情報が満載だ。

 「テレビなどで紹介されていることを描いても仕方ない。散歩好きなので、生活がそのまま漫画の題材になりました」

 漫画のクライマックスは、スカイツリーと東京タワーが同時に見える隅田川の橋の上で彼女にプロポーズする場面。偶然、ツリーの照明が試験点灯され、ハッピーエンドを迎える。

 「すべて実話です。妻は最初は漫画に描かれるのを嫌がったけれど、『本になるなら漫画家の嫁として仕方ない』と言ってくれました」

 3月には女児が誕生。「次は『スカイツリー周辺で家を買おう』を描きたい」と笑った。

2012年5月16日 読売新聞)