月曜日は桑名市へ。お一人目は、今回の調査ではじめて、市役所職員ではなく、大正13年生まれの90歳。とてもお元気で、アクセントを含む全ての項目を教えていただきました。お二方目も84歳、こんどは、いきなり昔の話が始まってとぎれるようすがないので、こちらの調査票にそった進行はあきらめ、そのお話を録音させていただくことに変更。
旧桑名城下の仕立て屋の娘に生まれ育ったというこの方、10歳前後の頃、店員がお得意先に行くのについて行って、ツケの支払いの督促を(子供が言えば角が立ちにくいので)引き受けていた話など、じつに生き生きと語ってくださり、たいへん貴重な自発発話データが得られました。最後の方は30代で、先行研究から、東京式アクセントも予想されましたが、(既報告のある新しい変化をこうむった)京阪アクセント。
次の火曜日、お隣の朝日町へ。こちらは20代と40代。桑名同様、東京式アクセントが聞かれる可能性も考えられましたが、いずれも京阪式アクセント。朝日町は住宅開発のため近年人口が急増したそうですが、名古屋まで遠くないこともあって名古屋方面からの移住も多かったそうで、世代を経るごとに愛知の影響が強まる可能性が高そうですが、今回の調査の範囲では、京阪式を保持する若い人もけっこういる印象。
これで今回の三重調査は終了。雨の亀山に始まり、最後は快晴。学生たちは初めての経験でしたが、企画~準備~依頼~実際の調査まで、がんばってよくこなしました。
今回も、調査への協力を引き受けてくださった方々から、こちらが気づいていない文献をご提供いただきました。鈴鹿市生涯学習課長からいただいたのは、「他地域出身の市職員が、鈴鹿の方言に戸惑うため、学習用に」と作った方言集。「半分遊び」とのお話ながら、かなりの語彙を収録した立派なもので、各地にこういう資料はまだまだあるのでしょう。こちらの希望日に合わせて日程や人を調整するという無理を受けれいてくださったことにも感謝。若い人たちを支援しようという教育的なご配慮と、地域の文化としてのことばの記録・研究に協力しようというお気持ちなのだろうと。まもなく始まる後期の授業で持ち帰ったデータを整理・分析しますが、このご厚意に応えられるよう努力しなければなりません。