「昨日は、桜の精が夢に現れたっけ」 | |
「だから……今日はきっと、咲いてるぞ」 | |
「調べてみるか」 すたすた | |
「む!」 | |
「やはり……咲いてる!」 | |
「ああ……」 | |
「長い冬の試練を越え、また春が巡ってきた」 | |
「感慨深いなあ……!」 | |
「先生っ! 咲いたんですかっ?」 たったったっ | |
「あっ!」 | |
「咲いたよ……」 | |
「遂に咲いたよ!」 | |
「おい、綺麗だなあ」 | |
「……」 | |
おむさんは、返事をしなかった。 | |
いや、できなかったのだ……。 | |
「ふふ。おむの奴、感極まって、言葉を失ったようだな」 | |
「無理もない」 | |
「この冬も、厳しかったからなあ」 | |
「……」 | |
「おい、日が暮れてきたぞ」 「……あ、はい」 | |
「私はもう行くよ。また明日な」 「はい。お気を付けて」 | |
寒くなったので、おかか先生は帰ることにした。 | |
おむさんを独りにしてやりたい気持も、あったのだろう。 | |
おむさんは、桜の巨木の下を動かなかった。 | |
言葉にできない思いで、胸が一杯だったに違いない。 | |
桜が咲いたこの日は、ご覧の通り、03月20日ですが、
掲載日は本日、04月01日、年度初日です。
苦難を乗り越えて見事に花を咲かせ、
今日から新生活をスタートなさる方々に、
この小さな物語を、謹んで捧げます。
ちなみに、昨年、この桜が咲いたのは、03月21日でした。
http://blog.goo.ne.jp/orz_z/e/f52698b13aa8dd3c3d7647d1832955f1
もうあれから一年経ったのですね。