釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

覇権国の凋落は債務が兆しとなる

2020-05-26 19:16:16 | 歴史
16世紀の世界は西のスペインと東の中国の明が覇権国であった。当時オランダはスペインの支配を受けており、盛んであった毛織物工業や商工業の利益はスペインに吸い上げられていた。1581年には北部ネーデルラント7州が独立を宣言した。1602年に史上初めて株式会社制度を導入したオランダ東インド会社を設立し、経済力を一挙に増大させ、1621年にはオランダ西インド会社も設立した。1625年にはスペイン、明を追い越し、以来、大英帝国に破れる1780年まで世界最大の覇権国として君臨する。世界最初のバブルと言われるチューリップ・バブルは1637年に起きている。オランダは世界を回る優秀な船舶を造り、17世紀の発明品の4分の1を生み出した。世界中から集めた富で軍事力も強化していた。通貨ギルダーは史上初めての基軸通貨となった。しかし、そのオランダも国家債務を抱えるようになり、軍事力が弱体化し、政治的内部対立も生まれ、台頭して来た英国との何度かの英蘭戦争に敗れ、破産してしまう。英国は次いでナポレオン率いるフランスと戦い、ナポレオンを敗り、戦勝国(英国、ロシア、オーストリア、プロイセン)会議である1814年9月〜15年6月のウィーン会議で、覇権国として出発する。オランダ東インド会社に代わって英国東インド会社が登場し、政府よりも強大な軍事力をも保持した。この英国の基盤は18世紀半ばからのいわゆる産業革命であった。英国はオランダを真似て、さらにそれを産業革命による土台で強化し、富を築いて行った。しかし、第一次、第二次世界大戦により英国は覇権国として多大の戦費を負担せざるを得ず、国家的債務を膨らませ、基軸通貨ポンドの地位を大戦後、国力を付けた米国の通貨ドルに譲らざるを得なくなる。米国はエジソンの発明などの第二次産業革命や国土が戦場にならなかったこと、軍事品を生産し、欧州に売ったことで富を蓄積していた。歴史上の覇権国家は全て自国通貨で債務を抱え、最後には凋落している。現在、日本も米国も自国通貨での膨大な債務を抱えている。このウイルス禍はその債務をさらに膨らませている。MMT(現代貨幣理論)は、自国通貨での債務はデフォルト(債務不履行)しない、とする。確かに、今の中央銀行は日本でも米国でも際限なく債券を購入するとしている。政府がいくら借金である国債を増やしても、みんな中央銀行がそれを買ってくれる。中央銀行は何もないところから、ただ通貨を印刷すればいいだけである。しかし、それをいつまでも続けることが可能なのか?それが可能なら、何故、国民は税金を払うのか。本当にそれが可能なら、最初から政府は税金など国民に課さないで、国債発行だけで予算を立てられるはずである。それも制限なくである。しかし、さすがのMMTも「インフレの可能性がなければ」と但し書きを用意している。この世に貨幣、通貨が出来てから、どんな借金にも必ず何らかの「返済」が付きまとう。経済にただ飯はない。政府債務の返済方法には3つある。そのうち国民負担が極端ではない方法は一つしかない。経済成長による税収増である。当然これは今のような経済成長率では、どんな先進国も不可能な方法である。残り二つはデフォルトとインフレである。どちらも国民には大きな負担となる。敗戦直後の日本は後者を選択した。財産税と言うおまけが付いたが。時の大蔵大臣は「払うものは払う」として、借金の返済を断行するために、国民から財産を奪って、返済に当てた。同時にインフレも生じていたため、政府債務額の実質的な引き下げにもなっていた。戦争により生産設備が破壊され、生活必需品の生産量がわずかで、それを欲しがる人の数が多く、通貨は戦中に大量に発行されていたためインフレとなっていた。コロナ禍は今後も続き、政府は何度も補正予算を追加しなければならなくなるだろう。経済が落ち込んでいる以上、税収は減りこそすれ、増えることはないため、全て赤字国債の発行で賄うことになる。コロナ禍は全ての生産活動を抑制するため、生産量は減少する。一方で、中央銀行は大量の通貨を発行している。実物量が少なく、通貨が大量となれば、どこかでインフレのリスクが生まれて来る。返済は不可能であった債務額がコロナ禍でさらに増額される。デフォルトを避けるならば、インフレしかないだろう。日米政府は共にインフレで債務を「チャラ」にと考えている。米国などは基軸通貨の地位にあぐらをかき、政府債務だけでなく、30兆ドルを遥かに超える対外債務まである。債務まみれの覇権国家の通貨が過去どんな運命を辿ったか。日本の科学的根拠の全くない緊急事態宣言とその解除は、ウイルス感染の減少とは何も関係しない。そもそも感染の実態そのものが誰にも分からない、とんでもない状態なのが今の日本である。
自生する一輪草

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