釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

生命の素は宇宙から飛来した

2018-10-03 19:14:26 | 科学
科学者たちは、地球が形成された45億7000万年前、表面の状態は、ひっきりなしに隕石が降り注ぎ、火山からは溶岩が音を立てて流れ出す、地獄のような場所だったと考えて来た。しかし、それは科学者の推測にすぎず、それを根拠付ける物理的な証拠はない。地球にはプレートテクトニクス運動により、古い岩盤は絶えず新しいものとして再利用され、溶岩流が固まって新たな景色を形作る究極のリサイクル・システムが働いている。ケイ酸塩鉱物であるジルコンzirconの結晶は非常に硬く、このリサイクル過程でさらされる非常な高温や高圧力に耐えることが出来、その内部には結晶が最初に形成された時の周囲の環境に関するヒントが残されている。ジルコン酸素同位体を用いたこれまでの研究では、43億年ほど前には、地表の一部を液体の水が覆っていたことが分かっている。つまり、地球形成からわずか数億年後には地球表面が冷えていたことを示唆している。昨年、科学誌「ネイチャーNature」3月2日号に、世界最古級の堆積岩が発掘されることで知られるカナダのケベック州北部ヌブアギツク・スプラクラスタル・ベルトNuvvuagittuq Supracrustal Beltと呼ばれる場所で採集された結晶の中の管状の微小な構造物が43億年前の生物由来の化石であることが発表された。英国ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)のドミニク・パピノーDominic Papineau教授らの論文で、鉄を食べる海生バクテリアによって形成された糸状構造と赤い管の化石で、幅はヒトの髪の毛の半分ほど、長さは最大0.5mmであった。鉄が豊富にある熱水噴出孔は現代にも存在し、そこに生息するバクテリアは、研究チームが痕跡化石を発見した生命体と似たものである可能性がある。これまで最古の生命の痕跡とされたのはグリーンランドで発見された37億年前の微生物の塊であった。9月25日、米国ハワイ大学マノア校University of Hawaii at Manoaは、大学のHPに「Did key building blocks for life come from deep space?(生命の重要な構成要素は深宇宙から来たのか?)」なる記事を載せた。すべての地球の生物は、自己複製をするために細胞とエネルギーが必要で、そのための基本的な構成要素がなければ、地球上の生物は増殖出来ない。その基本的な構成要素の一つであるリン酸塩については、ほとんど知られていなかった。同校の研究者たちは、フランスと台湾の科学者たちと協力して、この成分が宇宙空間で生成されており、隕石や彗星によって地球の歴史の最初の10億年間の間に地球に放出されていたことを証明した。リン酸塩と二リン酸は、分子生物学における、生命の基本的な構成要素に不可欠で、それらは染色体の主要な構成要素であり、DNA で見つかる遺伝情報の運搬役でもある。ハワイ大学の「W・M・ケック・宇宙化学研究所」で、-267℃に冷却された超真空内で、低温の分子雲に偏在している二酸化炭素と水とホスフィン(通常の温度では生命に対して極めて毒性が強い無機化合物)で覆われた宇宙の星間に存在する氷の粒子を再現し、それを宇宙線をシミュレートした高エネルギー電子の電離放射線に曝露して、複数のリン酸を合成した。2010年には、日本の国立天文台も参加した国際研究チームが、地球上の生命の素材となるアミノ酸が宇宙から飛来したとする説を裏付ける有力な証拠を発見したと発表している。アミノ酸には「右型」と「左型」があり、人類を含む地球の生物は左型のアミノ酸で出来ている。しかし、通常の化学反応では左右ほぼ等量ずつ出来る。何故地球の生物にアミノ酸の偏りがあるのか、は大きな謎であった。研究チームは、南アフリカにある近赤外線望遠鏡を使って、地球から1500光年離れたオリオン大星雲の中心部を観測した。アミノ酸をどちらか一方に偏らせてしまう「円偏光」と言う特殊な光が、太陽系の400倍と言う広大な範囲を照らしていることを初めて突き止めた。つまり、宇宙には生命の素があり、それが「円偏光」に晒されることで、「左型」のアミノ酸が誕生したと言うことだ。地球上の生命は、すべて宇宙から飛来した「生命の素」により誕生したのだ。これは裏を返せば、宇宙の何処かにも生命が存在する可能性があることを示している。
勝手口を塞ぐように自生した秋桜

揺らぐ基軸通貨ドル

2018-10-02 19:23:46 | 経済
今年4月30日に世界の中央銀行とも呼ばれる国際通貨基金IMFが発表した、2017年末の世界全体のドル準備額は6兆2800億ドルで、外貨準備総額に占める割合は62.7%となっている。世界の外貨準備総額は10兆0190億ドルである。EUのユーロが20.15%で、円が4.89%、人民元が1.23%となっている。8月21日、ドイツのハイコ・マースHeiko MAAS外務大臣は同国のビジネス紙ハンデンブラットHandenblattで、米国から独立した、欧州独自の金融決済システムを構築する必要性があると語った。欧州を主導するドイツは2003年に、イラク戦争に踏み切った米国に対し、反対姿勢を示して以来、米国の国際刑事裁判所の加盟拒否や米国のロシアへの追加経済制裁、米情報機関の監視対象であったメルケル首相の通信盗聴を含むスパイ疑惑の発覚などに批判的であった。さらに、米国で現大統領が登場すると、パリ協定からの撤退、NATO加盟国の国防負担を4%に増加要求、ロシアからの天然ガスパイプラインの建設反対、欧州からの鉄鋼・アルミニウム輸入関税の引き上げ、イラン核合意離脱とイランへの経済制裁など、米国単独で次々に打ち出したことで、ドイツやEUは米国から距離を置かざるを得なくなった。ドイツは無論、EU全体としてもロシアやイランとの経済的な取り引きは政治・経済双方にとって有益であった。しかし、米国はロシアやイランと取引をする国や企業にも制裁を加えるとしたため、ドイツは強く反発していた。現在、国際的な金融取引の決済はベルギーに拠点を置く国際銀行間通信協会SWIFTシステムが使われており、米国はこのシステムを利用して経済制裁を行っている。マース外務大臣は、このSWIFTシステム以外のEU独自の決済システムの必要性を述べたのだ。そして、9月24日には、EU外交安全保障政策上級代表Federica Mogherini氏がEUとイランとの間に独自の新たな決済システムを構築すると発表した。「これはEU加盟国が法人を設立しイランとの合法な金融取引を推進しようというものだ。これにより欧州企業はEUの法律に則りイランと取引を継続出来、世界の他のパートナーに対し道を開くことが出来る。」ドルではなくEUの通貨であるユーロで決済しようと言うのだ。当然、米国はこれに反発し、マイク・ポンペオMike Pompeo米国務長官は「これは地域と世界の平和と安全を大きく損なうものだ。イランの収入を支えれば、テロを支援するイランを力づけることになる。」と述べた。9月3日には、米国コロンビア大学のジェフリー・サックスJeffrey Sachs教授が、米国は米ドルが基軸通貨とされていることで多くの恩恵を受けているのに、自らの失策によってその有利な立場を失いつつあると指摘している。ドルが基軸通貨であることで、米国は海外からドル建てで資金調達が出来、世界経済に占める米経済の割合は為替ベースで22%、購買力平価では15%に過ぎないが、そのシェア以上に金融ビジネスの世界でサービス提供の機会を与えられ、国際金融の決済システムの要所を握るため、世界の金融に対して監視・影響力を行使出来る。この特権が、米国自身の失策で失われようとしていると言うのだ。「すでに1960年代終わりの米国の財政・金融政策のしくじりによって、1971年にはドルを基軸とするブレトン・ウッズ固定相場制が崩壊した。
リチャード・ニクソン政権は、外国の中央銀行がドルと引き換えに金の返還を受ける権利を一方的に廃止した。ドル基軸システムの崩壊は欧米で高インフレの10年を招き、そして突然1980年代初めに米国にコストの大きなディスインフレーションをもたらした。」その後も1997年のアジア危機対応、2008年の世界金融危機で失策を犯し、欧州や中国に米ドル離れのインセンティブを与えて来たのだと述べている。今、中国は着々と人民元の経済圏を拡大し、欧州はIMFのユーロ版である欧州通貨基金の設立を図っている。
庭に自生した月見草

インドネシアの地震と津波

2018-10-01 19:19:00 | 自然
台風21号の後、25号と強い台風が台風の季節の早い段階で続いたが、気象学の新野宏東京大学名誉教授によれば、1959年の伊勢湾台風(上陸時の中心気圧929hPs)、1961年の第二室戸台風(925hPs)など過去にも同じ程度の強い台風があったと言われ、過去67年間の6月~8月の平均台風個数は11.6個で、今年は18個になったが、1967年、1971年にも8月までに22個、24個の台風が発生しており、年間平均では26個で、1951年以降で多いときは39個、少ないときは14個のこともあったことを考えると、今年が必ずしも異常とは言えないと言われている。台風は東北に来ると弱まっていることが多い。今回も庭の鉢植えの鉢が数個倒れただけであった。また南からの暑い空気を運んで来たようで、今日はいきなり28度まで気温が上がった。明後日あたりからいつもの気温に戻るようだ。ところで、9月28日にはインドネシアでM7.5の地震が発生し、津波で大きな被害が出ている。米国の地質調査所(USGS)によると津波の高さはインドネシアの発表とは異なり、7.5mの高さであったあったようだ。被害状況からもその程度はあったものと思われる。インドネシアも日本と同じく、プレートが4つ集まる不安定な位置にある。今回の被害が大きかったスラウェシ島(かってはセレベス島と呼ばれていた)を含めたインドネシアの大部分はユーラシアプレート上にある。それを南からはインド・オーストラリアプレートが潜り込み、太平洋プレートの北西への動きに押されたフィリピン海プレートを通じて、インドネシアの載るユーラシアプレートにも影響している。世界ではこの地域と日本だけが4つのプレートが集まっている。インドネシアでは今世紀に入り、2004年のM9.3のスマトラ島沖地震で20万人以上の犠牲者を出して以来、2005年M8.6、2006年M6.2、M7.7、2009年M7.5、2010年M7.7と続いて地震が発生し、その度に多くの犠牲者を出している。USGSのデータをみると、1900年以後のM6からM8の破壊的な被害をもたらした地震の数は21世紀に入り突如して増加しているが、地震によって解放されたエネルギーの総量では20世紀も今世紀に入ってもさほど変わらないようだ。何れにしても日本やインドネシアはともに4つのプレートが集まる世界でも珍しい地域で、しかも何れもが島国でもある。つまりは津波の影響があると言うことだ。M9と言う巨大な地震があれば、必ずそれは関連するプレート境界に新たな歪みを生み出し、それがいずれ解放される、つまり別の地震を発生させることは確実だ。
彼岸花