沖縄県の米軍普天間基地の名護市辺野古移設を巡って、昨年11月17日に国は辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した翁長知事の処分は違法だとして、県に代わって国が処分を撤回する「代執行」を求める行政訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。しかし、国はこの訴訟の提起に当たって事前準備をしており、昨年10月30日付けで、福岡高裁那覇支部長を更迭していた。それまでの那覇支部長は『C型肝炎訴訟』や『原爆症認定訴訟』などで国の責任を厳しく問うた須田啓之裁判官であった。須田裁判官のままであれば、国の敗訴の可能性があるため、国は何としても更迭したかったのであろう。新任の支部長は住民の訴えよりも国や県よりの判決を下して来たことで「実績」のある多見谷寿郎裁判官である。安倍首相は2014年5月16日にも集団的自衛権を憲法違反として来たそれまでの「法の番人」と言われる内閣法制局長官を更迭した前歴がある。自己の意思を通すためになりふり構わず、官僚や裁判官まで更迭する。9月16日には首相の思惑通りに新任の多見谷裁判官が沖縄県側の主張を全面的に退けた判決を下した。そして、昨日には最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)が高裁の結論見直しに必要な弁論も開くことなく、今月20日に判決を下すことを明らかにした。つまりは沖縄県側の敗訴が確定したようなものだ。こうした経過を見るだけで、もはや日本の司法が機能していないことが分かる。三権分立の民主主義の基本などすでに崩壊している。国会も十分な議論もなく、次々に政権の都合通りに法案が可決されている。民主主義の多数決原理は少数の意見を十分に聞いて、互いに議論の末に、評決することである。そうした過程がない多数決など、とても民主主義などとは言えない。安倍政権が独裁政権と揶揄される所以である。しかし、最も深刻なのは政権の支持率(11月60.7%共同通信)なのかも知れない。


梅の蕾