安倍政権の本質は「対米従属」の一言に尽きる。米国の要望に沿った政策をすべて国内で法制化し、米国に擦り寄ることで、自らの政権の延命を図る。米国に擦り寄らない政権が潰されることを知っているからだろう。安保関連法で米軍の軍事費を肩代わりし、金融緩和で米国が続けられなくなった量的緩和(QE)を補完している。日本は世界で最大の政府債務を抱えている。財務省の「債務残高の国際比較(対GDP比)」で見ると、2015年で日本はGDP比で233.8%もの債務を抱えているが、同じく米国も110.1%と大きな債務を抱えている。欧州ではフランスも117.4%となっているが、ドイツは75.8%、英国97.6%と比較的健全である。債務が大きいと政府が発行する国債への信用が低下する。信用が低下すれば買い手でがいなくなるため、政府は国債の金利を上げざるを得なくなる。米国は製造業が衰退し、製造業に替わって、金融で経済を盛り上げようとした。しかし、金融は実体のないゲームにしか過ぎない。金が金を生む魔法の壺を作り出した。しかし、そんな魔法の壺ではいつまでも騙し続けることは出来ない。サブプライムローンなどと言うとんでもないジャンク債にまで手を出し、金融の崩壊を招いた。いくつかの金融機関は潰れ、残った金融機関にも大きな負債が残された。米国政府はこれら残った金融機関を救済するためと米国国債の暴落を防ぐために一大金融緩和を行った。FRBと言う中央銀行による大量国債の買取りを通じて、市中に資金を供給し、ゼロ金利を維持した。このため流れた資金は金融ゲームに流れ、自国の株や新興国の株に投じられた。しかし、昨年10月中央銀行であるFRBは自らの財務内容を悪化させ続けるわけにはいかないために、量的緩和(QE)を中止し、欧州と日本に肩代わりをさせた。欧州ではEUで政府債務の多いフランスは乗り気で、少ないドイツは反対であり、結局、予定の3分の2の金融緩和を行うことになった。しかし、日本は現在際限なく金融緩和を続けており、今や日本銀行の国債所有額は311兆円を超え、1年の国家予算の3倍にもなっている(日本銀行営業毎旬報告(平成27年9月20日現在))。日本銀行の債務内容を悪化させ続けている。金融緩和は国債の金利の上昇を抑える目的と、資金の市場への供給の二つの目的がある。しかし、この金融緩和もいつかはやめざるを得ない。通常その時を「出口」と呼んでいる。日本の国債保有の大手である日本生命の岡本圀衞会長は経済同友会の財政・税制改革委員長でもあるが、今年4月10日のロイター通信のインタビューの中で、「QQE(量的・質的金融緩和)は入口はいいが、出口となるとなかなか出られない。経済がよくなってもまた腰折れするのではないかということで、なかなか実行できない。入口をどんどん広げるのはよくない」、「ここまでの規模になると、マーケットに対する影響は大きく、国債市場が正常に機能している状態とは言い難い」と語っている。しかし、この金融緩和で上昇した株価や国債金利の低く目維持が、金融緩和をやめる(出口を出る)とたちまち国債の金利上昇、すなわち国債の暴落と株バブルの崩壊を招く。これを恐れて米国はEUや日本に肩代わりをさせたのだ。金融が自由化された現在、資金は国境を越えて自由に移動する。EU以上に諾々と米国に従う日本は出口を見つけられないまま洞穴の中をさまよっている。株価が上がり、企業の内部留保が300兆円を超えても、経済の成長を表すGDPは大きくはならない。今や日本はGDPの6割が消費に支えられている。消費が上がらなければGDPは増えない。その消費を促すはずの賃金は下がり続けている。対米従属は国内に大きな歪みをもたらしている。いずれ自衛隊員の命の喪失と経済の破綻の時がやってくるだろう。
霜柱