釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

出口の見えない金融緩和

2015-09-30 19:12:23 | 経済
安倍政権の本質は「対米従属」の一言に尽きる。米国の要望に沿った政策をすべて国内で法制化し、米国に擦り寄ることで、自らの政権の延命を図る。米国に擦り寄らない政権が潰されることを知っているからだろう。安保関連法で米軍の軍事費を肩代わりし、金融緩和で米国が続けられなくなった量的緩和(QE)を補完している。日本は世界で最大の政府債務を抱えている。財務省の「債務残高の国際比較(対GDP比)」で見ると、2015年で日本はGDP比で233.8%もの債務を抱えているが、同じく米国も110.1%と大きな債務を抱えている。欧州ではフランスも117.4%となっているが、ドイツは75.8%、英国97.6%と比較的健全である。債務が大きいと政府が発行する国債への信用が低下する。信用が低下すれば買い手でがいなくなるため、政府は国債の金利を上げざるを得なくなる。米国は製造業が衰退し、製造業に替わって、金融で経済を盛り上げようとした。しかし、金融は実体のないゲームにしか過ぎない。金が金を生む魔法の壺を作り出した。しかし、そんな魔法の壺ではいつまでも騙し続けることは出来ない。サブプライムローンなどと言うとんでもないジャンク債にまで手を出し、金融の崩壊を招いた。いくつかの金融機関は潰れ、残った金融機関にも大きな負債が残された。米国政府はこれら残った金融機関を救済するためと米国国債の暴落を防ぐために一大金融緩和を行った。FRBと言う中央銀行による大量国債の買取りを通じて、市中に資金を供給し、ゼロ金利を維持した。このため流れた資金は金融ゲームに流れ、自国の株や新興国の株に投じられた。しかし、昨年10月中央銀行であるFRBは自らの財務内容を悪化させ続けるわけにはいかないために、量的緩和(QE)を中止し、欧州と日本に肩代わりをさせた。欧州ではEUで政府債務の多いフランスは乗り気で、少ないドイツは反対であり、結局、予定の3分の2の金融緩和を行うことになった。しかし、日本は現在際限なく金融緩和を続けており、今や日本銀行の国債所有額は311兆円を超え、1年の国家予算の3倍にもなっている(日本銀行営業毎旬報告(平成27年9月20日現在))。日本銀行の債務内容を悪化させ続けている。金融緩和は国債の金利の上昇を抑える目的と、資金の市場への供給の二つの目的がある。しかし、この金融緩和もいつかはやめざるを得ない。通常その時を「出口」と呼んでいる。日本の国債保有の大手である日本生命の岡本圀衞会長は経済同友会の財政・税制改革委員長でもあるが、今年4月10日のロイター通信のインタビューの中で、「QQE(量的・質的金融緩和)は入口はいいが、出口となるとなかなか出られない。経済がよくなってもまた腰折れするのではないかということで、なかなか実行できない。入口をどんどん広げるのはよくない」、「ここまでの規模になると、マーケットに対する影響は大きく、国債市場が正常に機能している状態とは言い難い」と語っている。しかし、この金融緩和で上昇した株価や国債金利の低く目維持が、金融緩和をやめる(出口を出る)とたちまち国債の金利上昇、すなわち国債の暴落と株バブルの崩壊を招く。これを恐れて米国はEUや日本に肩代わりをさせたのだ。金融が自由化された現在、資金は国境を越えて自由に移動する。EU以上に諾々と米国に従う日本は出口を見つけられないまま洞穴の中をさまよっている。株価が上がり、企業の内部留保が300兆円を超えても、経済の成長を表すGDPは大きくはならない。今や日本はGDPの6割が消費に支えられている。消費が上がらなければGDPは増えない。その消費を促すはずの賃金は下がり続けている。対米従属は国内に大きな歪みをもたらしている。いずれ自衛隊員の命の喪失と経済の破綻の時がやってくるだろう。
霜柱

スーパームーン

2015-09-29 19:10:02 | 科学
昨夜はスーパームーンが見られた。月が地球へ最接近した時の満月で、普段の月よりも大きく見える。夕方の7時前頃に甲子川沿いの市街地の南の山の峰にかかった巨大な月が見えた。日中は素晴らしい秋晴れだったが、夕方が近くづくに従って、雲がたくさん流れるようになり、帰宅時には小雨も降ったりした。諦めていたが、その後には雲間も現れ、何とか見ることが出来た。月は地球の衛星であり、楕円状の軌道を回る。従って、周期的に地球に接近したり、遠のいたりする。月の光は太陽の光の反射で明るく見えている。地球に最接近すれば当然普段より大きく見える。最接近と言っても距離は35万7000kmも離れている。地球の半径は6400Kmだ。人類が地球に誕生して以来ずっと人類はこの月を眺めて来た。太古の人々はこのスーパームーンを神の何かのお告げのように受け取ったかも知れない。月と地球の間には引力が働き、海の満ち引きが起きることは誰もが知っているが、実際には海だけではなく、大地へも引力が働き、地球全体で地表は20cmほど膨らんだり縮んだりしている。当然スーパームーンの見られる最接近時には普段より引力も強くなる。引力は月だけではなく、太陽からも受ける。防災科学技術研究所の田中佐千子研究員は、1977年から2000年までに起こったM5.5以上の地震のうち、深さ40Km以内で起こった、断層の上の面がずり上がる「逆断層」型の2027の地震を解析し、地震を引き起こす断層にかかった月の引力や海の満ち干による圧力などと、地震との関係を調べた。その結果、月の引力によって40 hPa(ヘクト パスカル)(大気圧の約25分の1)以上の力が断層にかかっていた時に起きた255の地震では、引力のピークの前後6時間に地震の7割が集中しており、かかる力が大きくなるほど、地震を誘発する割合が高くなっていることが分かった。月の引力によってかかる力は、地震を引き起こす力の1000分の1しかないが、地形の歪みが十分に溜まって地震が起こりやすくなっている時に、最後の引き金を引いて地震発生に至っている可能性が高いと言う。このことを2004年の10月に米国の科学誌サイエンスに発表されている。その後、2011年の東北地方太平洋沖地震についても、地震を引き起こした断層のある長さ500Km、幅200Kmの東北沖の地域で、1976~2011年に起きたM5.0以上の地震約500回分について引力との関係を分析したところ、2011年の巨大地震が近くなるにつれ、引力の影響が強い時に地震が集中して発生していることが分かった。月や太陽の引力が海だけではなく、地球そのものに引力を及ぼし、地球は1日2回大きく伸び縮みしており、これを地球地潮汐と呼ぶが、殻の歪みが十分に溜まった巨大地震発生直前に限り、地球潮汐による微小な力が地震発生の「最後の一押し」として作用することを示していると言う。2004年12月26日のM9.0のスマトラ島沖地震でも、地球潮汐による力が最大となる時刻前後に地震が集中していたことが明らかになり、この相関関係は1995年ごろから次第に強く現れ、スマトラ沖地震の発生を境に消滅したと言う。スーパームーンはただ大きく美しいだけではなく、地球には普段よりさらに強い引力を及ぼしていたのだ。次のスーパームーンは来年の11月14日で、今年よりもさらに地球に接近する。それだけ引力も強くなる。
昨夜のスーパームーン

失われた民主主義を「取り戻す」

2015-09-28 19:15:04 | 社会
今月19日に成立した安保関連法は30日に公布され、半年以内に施行されることになった。多くの憲法研究者や元最高裁裁判官、元内閣法制局長官などが憲法違反とする法案を「多数」を拠り所に強行採決した。安倍政権は数々の主権者の権利を狭める法律を強行採決して来た。わずか16%足らずの得票数で「多数」を獲得して、国民の声を無視して、まさに独走して来た。「独裁」と言われてもおかしくない有り様だ。何故、こうした事態になったのか。日本では英米の二大政党制を導入するとの名目で、1996年の衆議院選挙から小選挙区比例代表並立制(小選挙区300、比例代表200)が実施された。しかし、すでにこの制度は1885年から小選挙区制を開始している英国において、投票率の低下とともに、得票数と獲得議席数の乖離を生じ、今や数々の批判を受け、競馬になぞらえてFirst Past The Post(ゴールポスト一位通過)制度と呼ばれている。得票数とは関係なく、ともかく一位でゴールすれば議席を得られる。5月7日に行われた英国下院議員選挙(定数650)では、保守党が得票率36.9%で単独過半数の331議席を獲得し、得票率では12.6%で第3位となった英国独立党がわずか1議席しか得られなかった。スコットランド民族党は得票率が4.7%しかないにもかかわらず56議席も獲得している。投票率の低下が選挙制度としての歪みを大きくする。英国ではこの制度を「選挙独裁」と称されている。国会議員は国民の代理人である。しかし、今の政府議員は首相はじめこのことを忘れてまさに「独裁」を行っている。国民の声には耳を貸さず、我が道を独走している。議会は機能不全に陥っており、話し合いを通じた決定と言う民主主義の手続きを政権が自ら壊している。議会制民主主義の崩壊であり、最も憲法を重視ししなければならない首相自身が憲法をなし崩しにしている。戦後の民主主義がこれほど危機的な状況に陥っているのは日本にとって極めて危険である。米国との「約束」を守るために強行採決した安保関連法すら、防衛官僚出身で安倍政権の元参謀役でもあった柳澤協二氏の指摘するように現実の「軍事」への無知を表しており、国会でも矛盾した説明しか出来なかった。単に自衛隊員の命を危険にさらすだけで、日本の本来の防衛にもならない。2008年4月17日、名古屋高等裁判所(青山邦夫裁判長)は、航空自衛隊がイラクの首都バグダッドに多国籍軍を空輸していることについて「憲法9条1項に違反する活動を含んでいる」と言う判断を下した。この年の末に政府はイラクから自衛隊を撤退させた。小林節慶應義塾大学名誉教授は今回の安保関連法に対して、集団違憲訴訟を準備している。しかし、仮に訴訟がなされても最高裁での判決までに4年を要する。その間には参議院選挙と総選挙がある。訴訟と同時に同名教授が言ったように「政治の過失は政治で取り返す」ことが大事だろう。そのためには国民の投票行為がとても重要になる。投票率が上がらなければ現在の選挙制度のままでは得票数と議席獲得数の大きな歪みが是正されないからだ。
早い秋色

釜石の「復興」

2015-09-27 19:17:41 | 社会
今日は比較的雲が多く流れてはいたが、秋晴れのいい天気になった。庭では金木犀が香り、紫式部がさらに色付きを見せて来た。後わずかでもう紅葉が見られる秋真っ盛りの10月になる。ほんとうに1年が早く感じられる。先日久しぶりに巨匠にお会いして、お話を伺ったが、今年は山の木の実の生りが豊かで、熊も里へは今の時期はあまり出て来ないと言う。しかし、熊の数は決して少ないわけではないのだそうだ。鹿も熊も猿もみんな増えている。相変わらず轢かれたタヌキはよく見る。中にはリスが轢かれていることもある。松茸を採る人がたくさん山に入っている。台風のせいか北に向かう秋刀魚は今年は水揚げが少ない。11月頃の南へ帰る秋刀魚を期待するしかないのかも知れない。 昨日は小雨の降りがちな天気の中で、鵜住居地区の復興工事現場を見る機会があった。建設会社の方の話ではまだ予定の3割しか達していないそうだ。やはり東京オリンピックのせいで、人も資材も足りないと言う。関東からはそれらが一切入って来ない。高く盛り土された15mの高さの小中学校予定地から鵜住居の全体を見下ろした。あちこちで盛り土がされている。それらの土も供給地が限られている。運ばれて来る場所により、土も種類が異なり、統一されたものではない。5mの盛り土をして、区画整理する。これらの将来の住宅地は海岸の15mの防潮堤で津波から守ると言う。防潮堤は県が発注した。完成すると15mの高さの小中学校の校庭からも海は見えなくなる。まして下の住宅地からはなおさら見えない。それほどまでにして、果たしてほんとうにこの防潮堤で津波から守れるのだろうか。津波は高さだけの問題ではない。圧力もあり、防潮堤が破壊されたのは先の津波でもあったことだ。何かこの復興工事にも割り切れないものを感じる。まして、盛り土にどれほどの意味があるのだろうか。かえって、地震による液状化が心配される。やはりこの復興工事にはあの震災が生かされていないように思う。いつもの箱物優先の公共工事でしかない。その実質的な効果はとても疑問だ。視界にはラグビー競技場予定地も入っていた。その競技場にしてもワールドカップが終われば、無用の長物になりかねない。維持費はかえって市の財政負担になるだけだろう。高齢化率が高く、人口減の将来がやって来ることが確実な釜石で、「復興」の名で巨大な無駄が生まれているように思えてならない。周囲に豊かな自然があるにもかかわらず、それを生かした地域おこしが全く考えられていない。自らの環境にあった市の将来がここでも真剣に考えられていないように思う。経済大国の遺産は巨大であるから、その衰退も緩やかではあるだろうが、今の日本も釜石も現状を思うと確実に衰退して行くだろう。重要な立て直しに何も手が付けられてはいない。
鵜住居地区
右手の山の手前の盛り土がラグビー競技場予定地

ドイツと日本

2015-09-25 19:12:49 | 社会
ドイツと日本は同じ敗戦国として戦後を出発し、しかしもドイツは冷戦により東西に分断された中でスタートした。日本と同じく製造業に力を入れることで西ドイツは工業国として先進国の仲間入りを果たした。1990年に再統一されたドイツは経済の立ち遅れた旧東ドイツを吸収したことで大きな負担を抱えたが、自らの努力でそれをも克服し、新たに産業構造を大きく変えることなく、むしろ製造業に革新をもたらすことで、国を新たな経済大国として存続させようとしている。2014年のIMFの統計を見ると、ドイツの購買力平価で見たGDPは日本の75%でしかないが、それが一人当たりとなると日本の119%となり、就業者一人当たりの労働生産性もOECDの統計を見ると、やはり日本の118%になっている。租税負担率と社会保障負担率を合わせた見かけの国民負担率は日本が41.6%に対してドイツは51.2%と一見ドイツの方が負担が大きいが、財政赤字の国民負担を考えると、日本が51.9%で、ドイツは52.3%となり大差がない。これを社会保障給付の面で対GDP比で見ると、年金、医療、福祉その他を合わせた給付は日本は23.1%、ドイツ29.0%であり、ドイツが6%高くなっている。財務省が9月1日に発表した2014年度の法人企業統計によると、金融・保険業を除く全産業の期末の利益剰余金は354兆3774億円と1年前に比べて26兆4218億円も増えている。1年間の純利益は41兆3101億円と10%も増えているのだ。いわゆる企業の内部留保と言われるものが350兆円を超えている。しかし、勤労者の実質所得は低下を続けている。企業は投資も横ばいになっており、利益を溜め込む構造がすっかり定着している。企業収益に対する労働分配率は1990年代後半には70%を超えていたが、現在は10%も低い60.4%まで下がっている。製造業だけで見ると、54.8%と、1980年以降で最低となっている。ドイツと日本は1980年代前半はほぼ同程度の労働分配率であったが、日本は下がり続けて、2005年以降は60%前後で横ばいになり、ドイツは緩やかに下がったが、70%近くを維持している。日本の平均年収は1997年以降下がり続け、2013年は413万6000円で、425万2000円であった1990年よりも低い。今や日本の労働分配率は先進国の中でも際立って低い。その一方で内部留保(利益剰余金)は1990年に112兆円だったものが、2000年には172兆円となり、さらに今年は354兆円にもなった。アベノミクスはこうした企業の利益と内部留保を加速させただけであり、労働分配率をさらに下げる法律を通してしまっている。自助努力しない企業を保護する日本と違って、ドイツは「第4次産業革命」と呼ばれる産業界、学界が一体となった製造業の革新を行なっており、それを政府も後押しする姿勢とは大きく異なっている。日本と同じく少子高齢化に見舞われたドイツは移民の受け入れで、その問題を解決しようとすでに手を打っている。幾多の問題を抱えながらも国が一体となって取り組み、ノウハウも蓄積させている。早々と脱原発も宣言し、再生エネルギーにも積極的に取り組み、もはやその分野の技術では日本を追い越してしまった。戦後の復興を同じく経過し、経済大国にそれぞれなったが、成熟した経済大国が見舞われる衰退への道をドイツは独自に回避しようとしているが、日本は何の根本的な解決策を打たないまま旧産業の保護に走っている。
イヌサフラン

歴史に学ばない人

2015-09-24 19:11:20 | 経済
安倍首相は総裁再選を受けて、今後は経済最優先で政権運営にあたるとし、昨年の名目で490兆円だったGDP(国内総生産)を600兆円にすることを目標に、強い経済、子育て支援、社会保障をアベノミクスの新たな「三本の矢」と位置づけ、雇用や所得の拡大、幼児教育の無償化の拡大、子どもの貧困対策の充実、「介護離職ゼロ」を目標に、仕事と介護が両立できる社会作りを進めると言う。これまでの三本の矢は異次元の金融緩和で、物価も経済成長も上がらず、大企業は最高益で3割も増収したが、勤労者の実質賃金は2年間下がり続け、格差を拡大させただけである。GDPを22%も上げるにはGDPの6割を占める消費を高めなければならない。しかし、その消費は賃金にかかっている。いくら政府が「雇用や所得の拡大」を唱えても、一方で非正規雇用を拡大する労働者派遣法改正を行い、ますます全体の賃金を低下させている。ドイツ帝国の鉄血宰相ビスマルクは「愚者だけが自分の経験から学ぶと信じている。私はむしろ、最初から自分の誤りを避けるため、他人の経験から学ぶのを好む。」「政治家の仕事は、歴史を歩む神の足音に耳を傾け、神が通り過ぎるときに、その裳裾をつかもうとすることだ」と言った。このことから「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言う格言が生まれた。しかし、安倍首相は歴史からは何も学んではいない。ジョージ・ソロス、ウォーレン・バフェット、ジム・ロジャーズら三名は世界の三大投資家と言われ、特にジム・ロジャーズは「投資の神様」と呼ばれている。彼は エール大学を卒業後、投資銀行へ入り、さらに オックスフォード大学を卒業後、ジョージ・ソロスとともにクォンタム・ファンドを設立し、10年間に3365%もの投資効果を得ている。現在はこれからは中国の時代と考え、娘たちに中国語を習得させるためにシンガポールに住んでいる。世界の経済の動きを的確につかんで投資利益を得ようとしている。その彼が今年2月に雑誌「プレジデント」の取材を受けた。「安倍晋三首相は最後に放った矢が自分の背中に突き刺さって命取りとなり、日本を破綻させた人物として歴史に名を残すことになるでしょう。」と語り、円安誘導したことについて、「自国通貨の価値を下げるなんて、狂気の沙汰としか思えません。円はここ数年で45~50%も下落していますが、これは先進国の通貨の動きとしては異常です。このようなことが起きると国家は崩壊し、時には戦争に発展します。」と述べ、そうしたことを行った国がすべて失敗に終わった例を示している。つまり、歴史を見れば自国通貨の価値を下げることがいかに愚かなことなのか分かるのだ。「安倍政権がバブルを起こそうとしているかどうかはわかりませんが、このままお金を刷り続けるのなら、潜在的には2~4年以内にバブルが起こりうる。しかし、インフレは国のためにならないことは歴史が証明しています。」とした上で、「政府はやがて年金をカットするなどの過酷な政策を実施せざるをえず、国民を苦しめることになります。歴史を紐解けば、インフレは生活費を上昇させ、真面目に働いて貯蓄に励む人たちの暮らしを破壊することは明らかです。」と続けている。「日本が崩壊するシナリオが現実になるのを防ぐには、なにをすべきでしょうか。」との問いに、「増税ではなく、減税です。財政支出も大幅に削減しなければダメです。日本は先進国のなかでも突出して借金を多く抱えています。しかも少子高齢化で人口は減少している。このような状況ですべきことは少子化対策か移民の受け入れですが、日本はそれもやろうとしない。」と述べ、「もし私が日本の若者だったら、外国語を習得して日本脱出に備えます。もしくは、カラシニコフ銃を手に立ち上がり、革命を起こそうとするかもしれません。」とまで言っている。異次元の金融緩和で株価を上げ、円安を誘導し、日本経済の体質を自ら脆弱にしてしまった。実体経済は回復せず、「失われた30年」が到来しようとしている。ロイター通信のインタビューでも「安倍氏は大惨事を起こした人物として歴史に名を残す事になるでしょう。これから20年後に振り返った時に、彼が日本を崩壊させた人物だと皆が気づく事になるでしょう。」と語っている。
色付きがさらに増して来た庭の紫式部

里で拾った秋

2015-09-23 19:18:55 | 自然
今日も秋晴れのいい天気となったが、薄雲が多く流れていた。もう内陸では稲刈りが終わったところも出ている。垂れる稲穂の上を赤トンボがたくさん飛び交い、それを見ているだけで、秋を感じさせてくれた。奥州市の江刺区の稲田のあぜ道で彼岸花が咲いているのを見かけた。江刺はリンゴの産地でもあるので、そばにはリンゴ畑もあり、紅く色付いて来たリンゴがたくさん生っていた。江刺近辺は刈り取った稲を干すのに、一本の杭を取り巻くように稲穂を積みかせね行く、独特の干し方をする。岩手に来て最初に見かけた時には珍しさで感心させられた。岩手はとても広くて、里と言える地域もたくさんある。昔ながらの風景を見ていると、とても気持ちが落ち着いて来るのが分かる。ススキの穂もあちこちで風に揺られ、やはりそんなススキの近くにも赤トンボが飛ぶ。産直には梨やブドウ、リンゴやプルーンまで並べられていた。これからはしばらくこうした新鮮な果物を食べることが出来る。世の中は大きく変わって行くが、こうした岩手の風景はずっと変わらずこのままいつまでも続いていて欲しい。
紅葉し始めた木

里の彼岸花

稲田のあぜの彼岸花

すぐそばの紅くなって来たリンゴ

東北に見られる杭掛け

のどかな秋の田園

チリ地震

2015-09-22 19:15:14 | 自然
連休中は今日まで晴れてくれたが、比較的雲が多く、快晴と言うわけではなかった。しかし、今日は夕方近くからはすっかり雲が消えて、釜石らしい一面の青空となった。西の方を夕方に見ると愛染山のシルエットが久しぶりにくっきりと浮かんでおり、近くの空には暮色が出ていた。気持ちの良い風の吹く日中に近所を歩くと、彼岸花がすっかり咲いていた。あちこちで秋桜が風に揺れていた。しかし、日射しには夏の名残があり、家に戻ってくると汗をかいていた。最高気温は26度になった。 先日の現地時間9月16日午後7時54分(日本時間17日午前7時54分)、チリ中部のイヤペルの沖合でM8.3の地震が発生した。M4.9以上の余震が少なくとも12回は続いたと言う。12人の犠牲者と100万人の避難者を出した。17000Km離れた日本でも26時間後に岩手県久慈市で70cmの津波を観測し、釜石でも30cmの津波を観測した。チリでは観測記録の残る1868年のM9地震以後もM8以上の地震が11回起きており、1960年には記録上最大のM9.5の地震が起きた。チリは日本と同様に地震だけではなく火山の活動も活発な国だ。理由はやはりプレートの動きにある。チリを含む南米大陸は南米プレートに乗り、その南米プレートの下に海側のプレートであるナスカプレートが沈み込んでいる。陸に向かって海側のプレートが動いている。方向が逆になるが日本の場合と同じである。太平洋の中央からやや東寄りには南北に『東太平洋海膨』と呼ばれる海嶺が走っており、そこでプレートが生まれている。生まれて来た太平洋プレートもナスカプレートもこの海嶺を境に接し、お互いに反対方向へ移動している。この太平洋プレートの動きとナスカプレートの動きは何らかの関係で影響しあってる可能性がある。琉球大学木村政昭名誉教授によれば、今世紀に環太平洋で発生したM8以上の大地震を調べると、それらの巨大地震は、太平洋を反時計回り、西から東に循環して発生していると言う。チリ地震の後には西側にあたる日本やニュージランドで地震が発生し、その後にまたチリ地震が発生し、東と西で交互に地震が発生すると言う。この西にはアラスカ近辺の地震が加わることもある。メカニズム的にどうしてそうなるかはもちろん現在は分かっていない。1960年の史上最大のM9.5のチリ地震の発生した4年後に、太平洋の北端のアラスカで、史上2番目の規模のM9.2の巨大地震が発生している。2010年にチリでM8.8の地震が起きた翌年、三陸沖で2011年のM9の東日本太平洋沖地震が発生し、2014 年と今回と続けてチリでそれぞれM8.2、M8.3の地震が発生した。無論、こうした自然現象は機械的ではないから、そうした傾向があると言う程度でしかないだろう。例えば、2011年以降の太平洋でのM8以上の地震を見ると、2012年4月M8.7のスマトラ島沖地震、2013年2月M8.0のソロモン諸島付近地震、2013年5月M8.2のサハリン近海地震、2014年4月M8.2のチリ北部沖地震、2014年6月M8.0アリューシャン列島地震と続いている。いずれにしろ東西で巨大地震が発生する可能性があるのだろう。特に太平洋プレートの移動速度は世界のプレートの中では最も早いスピードで移動していることが問題だろう。それだけ沈み込みが早く、歪みが大きくなりやすくなる。歪みを解消するのが地震である。また、地下のマグマへの圧力もそれだけ大きくもなる。従って、火山噴火も列島全域で起きやすくなっていると考えられる。
彼岸花

虫の音

2015-09-21 19:23:14 | 文化
連休に入り、とりあえずは晴れの日が続くが、空には雲も多く流れて、すっきりとした秋晴れにはならない。それでも毎日日射しが見られるようになった。この時期は日中と朝晩の気温差があり、夜には虫たちの声が聴こえて来る。今年もコオロギやウマオイが庭で鳴く。虫の音は万葉の時代から人の心を打ったようだ。万葉集には虫の音は区別されず、すべて「蟋蟀(こほろぎ)」として詠われている。虫に区別がつけられたのは平安時代からだと言う。虫の音を万葉の時代の人々はシンフォニーとして聴き、平安時代の人々はソナタとして聴いたのだとする人がいる。中国の女子十二楽坊を日本へ紹介した音楽プロデューサーの稲葉瀧文氏は面白いことを言っている。虫の声は日本人には「のどかで風流」に聞こえるが、欧米人には「うるさい雑音」にしか聴こえないそうだ。人の脳には感覚、直感、イメージなどを司る右脳と言語、論理、分析、計算を司る左脳があるが、氏によれば、日本人は音楽、西洋楽器音、機械音は右脳で感知し、他のものは左脳で感知すると言う。邦楽器の音も虫の声も日本人は左脳で感知するのだそうだ。西洋人の脳が、論理性と情緒性を明確に区別しているのに対して、日本人はその区別が曖昧なのだと言う。日本語の環境で育った人は、人種や民族に関わらず川のせせらぎや虫の音などの自然界の音を言語と同じ左脳で処理して、日本語の環境で育ってない人は言語以外の雑音と同じ右脳で処理する。日本人の「わび・さび」の感覚も情緒では無く論理的に判断をしているのだと言う。インドや中国から入って来た琵琶や尺八や三味線も日本流に変化しているそうだ。決められた楽音を鳴らすのではなく、音と音の間を濁らす「うなり」を付け加えたことが大きな特徴だとする。「音楽は綺麗な単音を順番に出す事により成立します。そして、その単音を重ねることによって和音が生まれ心地よい音楽となるのです。しかし日本人の好みは、音と音の間の空間にこそ美しさを求めるのです。その濁った音にこそ日本人は「わび・さび」を感じるのです。」と言う。虫の声を風流と感じるのは日本人だけなのだそうだ。こうした曖昧さに美意識を持った日本人の言語もやはり曖昧さを持つようになったのかも知れない。
秋桜

メディア政治

2015-09-18 19:18:32 | 社会
岩手に来てから間もなくテレビを見なくなった。岩手の豊かな自然を見ていると、むしろ、今の世の中の流れが見えて来て、自分の思考に必要な材料をいつでも選べるネットの方が便利でもあった。ニュースも主要なものは新聞各社のホームページで見ることが出来る。ミシェル・フーコーの研究で知られるフランス文学研究者であり、メディア情報学研究者でもある石田英敬東京大学大学院教授は「20世紀末から21世紀初頭の現在にかけて、政治の成立条件がメディアとの関わりによって大きく変化してきている」と言う。それは日本に限らず、欧米を含めた民主主義国家に共通して見られると言う。特に「テレビとインターネットの融合が起こる「ポスト・テレビ」期こそ、むしろテレビに焦点を当てたメディア・ポリティクスを加速させる側面をもつ」のだとする。そしてこれを「テレビ国家」と名付け、日本では政治とテレビとの関係が生まれるのは1980年代半ば以降で、『ニュースステーション』、『朝まで生テレビ』、『サンデープロジェクト』などに始まるとする。この時期は社会主義体制の崩壊と冷戦の終わり、国内では五五年体制の終焉と政治改革、政界再編の時期に当たり、政治世界の変容と新しいタイプの報道番組や討論番組の成立が同時に進行したと言う。「テレビ的話し言葉と、ジャーナリズムの言語との組み合せ」で、「語り」の文法を生み出し、「映像」と「語り」の組み合わせによって、「批判的」ジャーナリズムの話法を創り出し、キャスターの、ワンフレーズコメントによる批判的位置どりなど、テレビ的コミュニケーションとジャーナリズムとの新たな組み合わせによる「報道番組」のフォーマットを創り出したとのだと言う。「政局はスタジオがつくる」などと言う言葉が示しているように、政治討論番組がリアリティ・ショーのように「政治的イベントを作り、リアリティ・ショー的想像力を核にもったテレビと政治との関係が創出されたと言う。「スタジオの「いま・ここ」において「対決」できる「キャラ」が「説得力」をもち、「観念」や「主義」や「論理」といった「三人称」で書きうる抽象的で「非人称的」な観念の討議から、「顔」をもった個人による即興的な説得へという重心移動がテレビにおける討論のショー化を伴って確実に起こってきた」。1990年代はこうしてテレビが政治を取り込んだのに対して2000年代は政治の側がテレビ政治を自分たちの戦略に組み込むようになったと見る。2005年に頂点を迎えたコイズミ劇場政治がその典型だと言う。「バラエティー化したテレビは、「話題」の「自由な選択」をとおして、「コイズミ劇場」に引き寄せられて」行き、「テレビが映し出す「国民に聞いてみたい」というコイズミの呼びかけ、「国民投票」の演出を通して、視聴者としての国民は、ネオリベラリズムによる「合意の調達と強制」の回路のなかに呼び込まれて」行ったのだと言う。1994年に導入された小選挙区制は究極的には全てをデジタル化するシステムだとして、シミュレーションが容易に出来るようになり、その基盤に立ったデジタル的な政治家は、政治行動自体もマニュアル化しており、そうした代表としてすでに同教授は2006年の時点で、メディア的人気だけが彼のキャピタルだと見る安倍晋三現首相を上げている。現在の安倍首相については「言葉を武器に人々の理性に訴え、説得を試みるのが本来の政治ですが、安倍首相が展開しているのは、理性ではなく人々の感性に働きかけ、良いイメージを持ってもらうことで政治を動かすことを狙った『イメージの政治』」だと言う。テレビやネットの社会では「現在」が頻繁に更新されるために注意力が分散され、深く思考出来ず、新しい情報を入れるために、古い記憶はどんどん消去され、メディアは出来事を認識させる伝達装置であると同時に忘却装置でもあるとする。言葉は競争に勝つための道具でしかなく、受け手もネタとして消費すると忘れてしまう。政治家の発言がコロコロ変わっても問題視されない。これが現代のポピュリズムの形だと言う。
草の王