釜石の日々

未来への無策

2017年の国別の自動車販売台数は中国がトップで、2570万台で米国を800万台上回っている。日本は3位だが中国の5分の1である。中国は2010年に米国を追い越して、世界最大の自動車市場となった。昨年4月中国は2025年までの自動車産業の育成計画である「自動車産業の中長期発展計画」を発表している。中国自動車市場の規模を2020年には3000万台、2025年には3500万台とし、10年間を掛けてコア技術、部品供給、ブランド力、新業態の創出、自動車の輸出、環境保護などの面で中国を「自動車強国」に躍進させ、コア技術としてパワートレイン、トランスミッションシステム、電池、モーターなどの分野で2020年に世界の先端レベルに達するよう競争力のある部品メーカーを育成し、部品メーカーとしても2025年には世界のトップ10に入ることを目指している。海外では米国、ブラジル、ハンガリー、フランス、エクアドルに工場を新設し、南アフリカにも大規模な工場を作ろうとしている。中国の自動車企業はボルボをすでに傘下にしており、PSAプジョー・シトロエン・グループによる独オペルの買収にも背後に中国企業がいると言われており、3社が欧州市場に進出を加速していると言う。日本のリーディング・カンパニーであった家電産業は中国や韓国の進出で、すでに負け組となっているが、この10年で自動車も確実に負け組になってしまうだろう。自動車産業は日本独自の「安全規制」と車検制度により政府保護を受けており、その上、販売台数が伸びない中で、やはり「円安」と言う保護で最高益を受けた。日本は1995年をピークに、15歳から65歳未満の生産年齢人口が減少し続ける中で、中国の台頭を迎えた。中国は安い賃金で物を作り、安価な製品が日本にも出回った。いまだに中国製品への粗悪イメージが流布されているが、日本メーカー名の家電製品はほとんどが中国で作られている。衣類も然りである。敗戦後、日本は米国に市場を得て、経済成長を始めたが、当初は同じく米国からは日本製品は粗悪だと見られていた。同じことがただ中国で繰り返されているだけだ。カメラなどは戦後間も無くは欧米の模造品ばかりが日本で作られていたのだ。日本では、1990年以後実質賃金が下がり続けている。変わらぬ産業構造のため、中国の安価な製品に押されて、企業収益は思うように伸びなくなり、企業は対抗上コストを下げざるを得ず、真っ先に手をつけられたのが人件費である。非正規雇用の拡大はその一環でしかない。産業構造が変わらない限り、この傾向は今後も続いて行く。米国が日本に製造業を追い越された時、米国は産業の主力を金融産業に切り替えて、延命を図った。また優秀な大学と優秀な移民の受け入れにより、世界のデジタル革命を先導し、FAANG(ファング)、すなわちフェイスブック、アップル、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルなどの超巨大ハイテク企業が成長した。アップルは今や企業としては初になる同社株の時価総額が1兆ドルを目前にするまでになっている。もちろん、バブルではあるが。総務省は先月、「自治体戦略2040構想研究会 第一次報告」を発表している。「人口減少下において満足度の高い人生と人間を尊重する社会をどう構築するか」と言う副題が付いている。最初に「我が国は、少子化による急速な人口減少と高齢化という未曾有の危機に直面している。」と書かれている。「未曾有の危機」としながら、人口対策も産業転換対策も全く取られていない。この両者の欠如は産業の衰退をもたらし、税収を減少させ、増え続ける高齢者の年金や医療費などの社会保障費の増大で、政府負債をさらに膨張させる道筋しかないことを意味する。そして、それは持続不可能である。
スミレ
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