釜石の日々

米国と共に沈む日本

今日の朝日新聞DIGITALは、「トルコ大統領選、エルドアン氏が勝利宣言 経済低迷・強権批判を退け」を報じている。日本や欧米メディアは米国に従わず、自立した独自の外交を行う政治リーダーを強権、独裁、専制などと批判し、非民主的リーダーだと決め付ける。そして、そうしたリーダーを倒すために米国は平気で選挙にも介入し、時には軍事的侵略も辞さず、その国のリーダーを抹殺しさえする。米国は当初イラクのフセインを擁立したが、フセインが米国に従わなくなると、イラクへの軍事介入を決めた。当時のコリン・パウエルColin L Powell国務長官は、国際連合安全保障理事会で「イラクが大量破壊兵器を開発している証拠」を上げたが、その一つに小瓶に詰められた化学物質を手に取って見せた。しかし、それは単なる家庭用の洗剤であったことが発覚している。証拠を捏造してまでイラク侵攻を図ったのだ。フセインは石油取引をユーロで行うと宣言したことも米国の琴線に触れたのだろう。米国に従えば、民主国家で、従わなければ独裁国家となる。自国の発展を優先する明確なビジョンを持ったリーダーは独裁者となる。自国の発展を顧みず米国にのみ従うリーダーは民主的リーダーとなる。戦後、目覚ましい経済発展を遂げた日本やドイツは、米国にとって目障りとなり、日本は1980年代から米国によって多くの要求を突き付けられ、「失われた30年に」落ち込んでしまった。ドイツは、今回のロシアへの経済制裁、ウクライナ支援を米国に要求され、自国製造業を空洞化させてしまった。先週、ドイツが景気後退に入ったニュースを聞いて米国大統領は喜んでいる。米国情報機関は日本やドイツのような同盟国にさえ盗聴器を仕掛けている。元外務省官僚の孫崎享氏によれば、戦後の1946年の首相幣原喜重郎、田中角栄、鳩山由紀夫、小沢一郎、などは米国の意に沿わなかったために排除されたと述べている。そして、その排除は米国が行うのではなく、日本側の官僚やメディアが米国の意に従って積極的に行うと言う。安倍晋三暗殺も同じだろう。鳩山由紀夫が排除された後、菅直人、野田佳彦は共に米国に従った。現在の首相も同じだ。もはや日本の発展ではなく、ひたすら米国追従だけである。23日の東京新聞は、「広がる教育格差「最後の手段」に手をつける家庭が増えている…高収入なら塾代など大幅増の一方で」を、26日の日本経済新聞は、「出生数、年70万人前半も 1〜3月は5%減の18万2000人」を報じた。昨年12月25日には、東洋経済オンラインが、「日本人は外国人客急増の「貧しさ」をわかってない」を報じている。1990年代初頭のバブル崩壊後、日本は意図的に低金利を続けて来た。低金利は日本国内の資金を海外、主に米国に向かわせる。少しでも高い金利を求めるからだ。本来、国内投資に向けられるべき資金が海外に逃げ出す状態が30年続いた。そして、日本の資金が米国に向かえば、円安となる。円を売ってドルを買わねば、米国への投資が出来ない。「円を売ってドルを買」えば、円安となる。円安とは日本のものを安売りすることだ。これが米国が日本の割安となった株を購入し、中国が日本の不動産を購入する理由だ。何故、低金利、円安を放置しているのか。政府債務軽減のための低金利と、輸出産業の見かけの利益確保のための円安だ。これでは政府は債務を削減する努力はしない。輸出企業は開発・研究努力をしなくなる。米国では債務上限問題で、下院議長と大統領の間で基本的な合意に至ったようだ。細部の詰めが残されているが、とりあえず、今後2年間は債務上限問題は棚上げになりそうだ。今の米国政府債務はGDP比でちょうど第二次対戦中の政府債務に達した。しかし、日本の政府債務は太平洋戦争中をはるかに超えている。深刻度は日本の方がはるかに高い。しかも、今後、少子高齢化は急速に進み、教育・研究費は減少し、日本経済の牽引役であった自動車産業もEVで出遅れ、ついに輸出で中国に追い越されてしまった。これで経済活性による税収増は断たれてしまった。実質賃金が減少し続ける国民から搾る取る以外にはない。しかも、たとえそれを行っても、もはや政府債務の返済は不可能なレベルになっている。歴史上、大国の衰退は全て債務が原因だ。そして、国家が債務を抱えるに至った原因は、富裕層(大企業を含む)から税を取らなかったことだ。経済学者,マイケル・ハドソンMichael Hudson教授は、近著『The Collapse of Antiquity(古代遺物の崩壊): 文明の寡頭制の転換点としてのギリシャ・ローマ』で、「金融と土地を所有するオリガーキーの出現は、西洋文明をそれ以前と区別する債権者寄りの法律と社会哲学に支えられながら、債務奴隷と束縛を恒久化した。今日、それは新自由主義と呼ばれるものである。」と書いている。新自由主義の自由とは資本の自由でしかない。国家資産を私有化することでもある。フランスの経済学者トマ・ピケティThomas Pikettyが言うように政府が債務を積み上げたのは、「取れるところから取らなかった」からだ。「債権者寄りの法律と社会哲学」が敷かれたのが政府債務の元凶だ。新自由主義を採用した日本や米国はそのためにジェフリー・サックスJeffrey Sachs教授の言う重要な4つの投資を怠った。日本や米国が衰退するのは当然だ。日本も米国もインフラが老朽化し、ホームレスが溢れ、教育・研究レベルが低下している。企業は国内に投資するより海外に投資する。発展的な経済を望むことなど出来ない。11日の日経ビジネスは、「不動産バブルとは? バブルの様相を呈する東京の不動産事情」を、また今日のNHKは、「日経平均株価 一時600円以上値上がり 約33年ぶりの高値を更新」を報じている。いかにも景気が良そうだが、これらは、まさに超円安による海外勢の日本買いでしかない。買っているのは日本ではなく、海外なのだ。むしろ日本の悲惨さを示しているだけである。政府が音頭を取って観光客を誘致しなければならないこと自体、日本の衰退を表している。新自由主義は米国でも日本でも「腐敗」を撒き散らした。政治家、経済人の腐敗は当たり前になった。メディアも腐敗が浸透している。新自由主義により実は、日本や米国のような表向き「民主主義国」こそ、寡占体制となってしまった。そして、政府公邸の私物化も日米共通している。日本や欧米のリーダーたちの知性の低下は深刻だ。

桐の花
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