釜石の日々

これがファクターXなのかも知れない

日中午後には今日も30度を超えて暑さが残るが、夜の気温が下がってくれるので、楽になった。夕方の川沿いのウォーキングも涼しい風が吹くようになった。釜石へ来た13年ほど前は、この時期にはこれほど暑くはなかったように思う。お盆の15日を過ぎると、北海道のように夜には寒さを感じると言うまでではないが、少なくとも暑くはなかったように思う。近年の夏の異常な暑さは、東から列島に張り出して来る太平洋高気圧とそのさらに上空に西から張り出して来るチベット高気圧が列島上空で重なることでもたらされている。そのチベット高気圧がまだ居残っているので、東北でもこの時期30度を超すのだ。 順天堂大学医学部免疫学の奥村康特任教授によれば、毎年のインフルエンザは秋に渡り鳥が運んで来て、翌年3月の末には「集団免疫」が出来るために感染の拡大が止まるのだ言う。昨年秋から今年の春にかけてのインフルエンザは日本では例年よりずっと少なかった。拍子抜けすると言ってもいいほどの少なさであった。京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授と吉備国際大学の高橋淳教授らは、今年5月に「日本人には新型コロナウイルスの免疫があったので死者数を抑え込むことが出来た」との内容の論文を英国のCambridge Open Engageに発表している。論文では、新型コロナウイルスにはS型、K型、G型の3つの型がある。最初にS型が発生し、それが変異したものがK型で、武漢でさらに変異した感染力の強い型がG型である。ウイルス感染では二つのウイルスが存在する場合、互いに競合し、どちらも単独の時ほど感染は拡大しないと言う。これを「ウイルス競合」とか「ウイルス干渉」と呼ぶそうだ。中国では、1月23日に武漢が閉鎖されたが、日本での入国制限は3月9日まで武漢からの入国に限られていた。S型は、無症候性も多い弱毒ウイルスなので、インフルエンザに対するウイルス干渉も弱かったが、S型から変異したK型は、無症候性~軽症で、中国における感染症サーベイランスでは感知されず蔓延し、日本でもインフルエンザウイルスを抑えるほど広がった。昨年10月~12月にインフルエンザとともにS型やK型が広がっていた。G型が日本へ入って来たのは3月に入ってからである。アメリカやイタリアなどの欧米諸国では、S型が広がっていた時期には渡航制限が無かったため、S型はかなり欧米に蔓延したが、2月初旬に全面的な渡航制限が行われたために、K型の流入は大幅に防ぐことが出来た。S型に対する免疫はG型の感染を予防する能力が乏しい上に、S型に対する抗体がむしろ細胞へのウイルスの感染を助ける抗体依存性免疫増強(ADE)効果があると考えられると言う。日本は武漢以外の国からの入国制限を始めるのが遅かったことで、K型への集団免疫が出来、感染力や毒性の強いG型の感染を大幅に抑えることが出来たと推論している。欧米は抗体依存性免疫増強(ADE)効果のあるS型と、後にG型が拡大し、重症化した。東京大学児玉教授の言うSARS-Xや京都大学中山教授の言うファクターXとはこのS型及K型の気付かれない感染拡大であった可能性がある。日本だけでなくアジアの多くの国で、昨年の内に、気付かれないままS型やK型が蔓延していたのだろう。上久保教授はすでに日本は集団免疫を獲得しており、新型コロナ感染は終息すると言われている。抗体の陽性率も基準値をどこに置くかで変わり、抗体を調べると、殆どの人で抗体が測定されるとも言われている。論文が発表された5月には大手メディアも注目したが、その後は、全く無視されてしまっている。現時点で、上久保教授が言われるように日本ですでに集団免疫が獲得されている、とまでは考えにくい。ただ、確かにかなりの部分まで集団免疫が出来ているのかも知れない。インフルエンザを考えると、岩手のこの感染者の少なさこそが異様に思え、実際にはもっと多くの感染者がいると思っている。まだやはり無症状感染者の炙り出しをやる必要はあるだろう。

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