釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

杉の木

2014-02-23 19:18:15 | 自然
今朝も-5度まで下がり、冬は暖かいはずの沿岸部の釜石も低い気温が続いている。庭に積もった雪もわずかずつは融けているのだろうが、目で見る限りはあまり変わっていない。セキレイやツグミの声は聞こえて来るが、今日は姿が見えない。市街地で買い出しに出た帰りに西の空を見ると、愛染山や周辺の山々に雪が白く積もった中で、雲間から幾筋かの帯状の光が射していた。こうした光は何か神秘的な雰囲気を醸し出す。一際、愛染山が神々しく見えた。道路の雪はほとんどなくなったが、どの家の庭にもまだまだ雪が残っている。何軒かでは凍った重い雪を取り除く光景が見られた。 我が家の庭には10本の杉の木と3本の松が植えられている。これほど多く杉が植えられていることが不思議だったが、ある時、その理由が釜石では人が亡くなった時に杉の木が風習として使われていたのだと人から言われた。それだけの理由でこれほど杉が植えられたとは思えない。恐らく防風林として植えられたのではないかと思う。風が強い時には近くの山から山鳴りが聞こえて来る。杉は2億5000年前から地球上に登場しており、日本の杉は日本固有の杉で大陸から日本列島が離れた200万年前から日本で独自に生育して来たようだ。戦中から戦後にかけて木材需要が急増したため、山に一気に植林が行なわれた。現在森林の4割は人工的に植えられたいわゆる人工林が占める。そのうち約半分が杉である。大々的に人工林が造られる以前は天然杉が利用されて来た。日本の各地にはその中でも特に良質な杉として知られるものがある。東北では秋田県の秋田杉、山形県の金山杉、岩手県の気仙杉などが知られ、他では静岡県の天竜杉、京都府の北山杉、奈良県の吉野杉、高知県の魚梁瀬杉、大分県の日田杉、熊本県の市房杉、鹿児島県の屋久杉などが有名だ。現在、屋久島の縄文杉が樹齢7000年と言われ、最古の杉だと言われているが、岩手県の大船渡市三陸町起喜来にも三陸大王杉と呼ばれているやはり樹齢7000年とされる杉がある。東北ではこの他にも青森県の樹齢1000年の関の甕杉、山形県鶴岡市の樹齢1500年の山五十川の玉杉などの古木がある。杉は殺菌作用もあり、酒造りで酒を腐敗から防ぐことでも利用されて来ており、酒屋では杉玉が下げられ、醸造の時期を知らした。また、魔除けとしても人々の間で使われて来た。しかし、近年では杉は花粉症をもたらすものとしてあまり歓迎されていない。国民の2人に1人は花粉症だと言われるほどになっている。この杉花粉の大部分は人工林が原因だ。天然林では足りなくなって、戦中から植えられて来た人工林が手入れもされずそのまま育った結果が花粉症を引き起こした。杉に問題があると言うよりは人に問題があったのだ。しかも、杉の葉のエキスは花粉症を抑える働きまである。中国では古くからそうした鼻炎症状に使われて来た。大々的に全国で杉の植林が行なわれて来たが、木材価格が低迷し、人手をかけても割が合わなくなり、手入れがされない植林された杉が急増した。この杉と花粉症の関係はまるで現代の自然と人との関係を象徴しているように見える。人が自らの都合で自然に手を加えたことが、人に被害をもたらしている。ペットして飼われた動物や魚が、飼い主の都合で捨てられて、川や池などの自然を大きく変えてしまったことも同じだ。自然が豊かな東北にはまだまだ人と自然の共生が生きている。それを人はこれからも残して行って欲しいものだ。
白鳥親子

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