釜石の日々

「失速する日本」

瞬く間に周囲の山々の緑が深まり、すっかり新緑の五月になった。岩手の5月は山野草の季節でもあり、庭の鉢植えの敦盛草が芽を伸ばして来ている。今年花を咲かせてくれるのか、とても心配だ。礼文敦盛草の方はどうやらダメのようだ。山歩きの長い方から聞いた話だと、山野草は山で咲いている時の方角がとても大事で、庭植えにする場合もその方角が違っていると咲かなくなるのだそうだ。釜石近辺の山にはまだまだ敦盛草の群生地があり、誰も他には気付いていないと言う。いつか、その群生地で写真を撮りたいと思っている。 昨日の参議院予算委員会の集中審議で、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の副座長、尾身茂地域医療機能推進機構理事長は、軽症者や無症状の人が多くいるため現在行われている検査システムでは全ての感染者数を把握するのは難しいとし、「報告されているより(感染者の)数が多いのは間違いないが、それが10倍か20倍か30倍かは誰もわからない」と答えたことをロイター通信が伝えている。舛添氏が言われたように、本当に他人事のような答え方だ。検査体制を含めた感染症対策専門家会議ではないのか。そこで対策がなされなければ、誰も国としての専門的な対策は立てられないだろう。今回の新型コロナウイルス感染の拡大を抑えることにかなり成功した国々は、IT技術を大幅に取り入れ、感染者の追跡に取り組んだ。IT技術の先進度は、この感染による経済の落ち込み度合いにも差を見せている。すでに結果の出ている第1四半期(1月ー3月)のGDPは自動車、汎用機械などを中心とする産業構造の日欧では、主要企業の業績が前年同期比で7割から8割減となっているのに対して、巨大なIT先端企業を有する米中では、共に前年比で4割程度の落ち込みで留まっている。日本はいつも欧米を向いていて、アジアには目を向けない。しかし、中国には米国のGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に匹敵するBATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)がある。いずれもアジアのシリコンバレーと言われる人口1300万人の深圳を拠点とする。アリババはちょうどアマゾンのような企業だが、昨年の流通取引総額で見ると、世界に展開するアマゾンを凌ぐ額になっている。日本の楽店はアリババの20分の1以下である。今回の感染の広がりで、こうしたIT企業がさらにかなりの地方にまで浸透するようになり、むしろ業績を上げている。英国Nature誌は近年、各国の科学論文のレベルをランキングするようになったが、4月29日に今年度のランキングを発表している。「Nature Index 2020 Annual Tables」である。世界の大学・研究所などを500位までランキングして公表している。下図は20位までを表している。自然科学系のハイレベルの82の論文掲載雑誌を世界の6000人の研究者が評してランキング付けしている。1位は5年連続中国の中国科学院である。そして今年は10位内に他にも中国科学技術大学(USTC)が8位に、北京大学がちょうど10位に入っている。日本の大学では11位に東京大学、37位に京都大学で、国別では日本は5位である。1位米国、2位中国、3位ドイツ、4位英国となっている。問題は日本は年々順位を落としているのに対して、中国は年々順位を上げていることだ。昨年、鈴鹿医療科学大学豊田長康学長は「科学立国の危機: 失速する日本の研究力」と題する著書で、具体的なデータを提示して、日本の研究の競争力低下を訴え、警告を発している。2015年から首位は米国であるが、2位の中国が年々差を縮めている。20位までのランクでも米国7校に対して中国は6校まで迫っている。世界の経済は、リーマン・ショック後、中国に牽引してもらう中で、各国中央銀行の異常な金融緩和を行うことで維持されて来た。そこへ今回のウイルス禍である。米国の失業者はすでに1929年からの世界大恐慌時を超えており、いずれ世界経済も同じく過去に例のない世界恐慌へと発展するだろう。そして、その後に浮上するのが果たしてどの国になるのか。コロナ対策も経済対策も愚策しか並べられない日本が一層の凋落を見せることだけは間違いないだろう。
Nature Index 2020 Annual Tables
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