釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

米国の企業債務

2018-06-22 19:15:49 | 経済
昨日の日本経済新聞は、「スタートアップ、上場より大企業傘下」と題する記事を載せている。「日本のスタートアップ企業が、成長資金の確保や市場開拓を狙い大企業による買収を選ぶ動きが広がっている。2018年1~5月の国内の買収件数は前年同期比で3割増え、新規株式公開(IPO)件数を上回った。」ここで言う「スタートアップは一般的に短期間で急成長を目指す未上場の若い企業を指す。」としている。従来、日本ではこうした若い企業は、成長とともに株式公開により独立を保ったまま資金を集めて来た。しかし、今では米国と同じように大企業による買収、いわゆるM&A(Mergers and Acquisitions)が優勢になって来ている。長く続く超低金利が、企業買収のための資金を借りやすくしている。日本よりは金利が上昇して来ている米国では、この企業買収が日本以上に極端に多くなっている。金利が上昇しているとは言え、米国の現在の金利は歴史的にはまだまだ低い。米国では今年に入り、6月までにすでに企業買収額は2兆ドルに達している。米国の企業では、株主や経営に関わる取締役が、企業の長期的成長ではなく短期的な株価上昇を望み、自社株買いと企業買収を行なっている。そのどちらもが低金利の借入や社債発行で賄われている。従って、企業にとっては低金利が続く限りは目先の「利益」を確保出来ることになるが、今後、金利がさらに上昇し続ければ、金利コストが増加し、それに耐えられない企業が出て来る。米国の企業買収の過去をみると、まさにその金利上昇と、景気後退のサイクルが見事に描き出されている。米国の中央銀行であるFRBのデータによれば、今年3月末の米国の企業の債務は49.7兆ドルになり、対GDP比で254.0%になっている。ちなみに日本の政府債務は対GDP比で240%である。米国の投資銀行などの金融機関の債務は対GDP比で81.4%である。米国でも長く続いて来た超低金利が、企業を安易な目先の利益に導き、こうして債務を膨らませてしまった。対GDP比での企業債務はすでに過去3回の景気後退直前値を越えてしまった。2008年のリーマン・ショック直前の企業債務は、対GDP比は50%にも満たなかった。いかに現在の企業債務が異常であるか。そして、それを生み出した一因は中央銀行による超低金利である。当然、米国の中央銀行であるFRBはこの状況を知っている。そのため、今後の金利を上げて行くのにも、慎重になっているはずである。米国の代表的な株式市場の一つであるナスダックは史上最高値を更新している。株価の上昇だけが企業収益に結び付き、景気の指標とされてしまった。その株価は借金によって支えられた株価である。今年、FRBは後2回金利を上げると予想されている。金利上昇で、いずれ過去の景気後退以上に空前の巨大になった債務バブルが弾け、世界を大混乱に陥れることになる。その時、もはや中央銀行にも、債務がやはり巨大になった政府にも打つ手は残されていない。
雲霧草

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