釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

人知れず咲く花

2009-08-14 07:02:31 | 自然
周囲の山々では葛(くず )の花が咲き始めている。折口信夫も 葛の花 踏みしだかれて、色あたらし この山道を行きし人あり と詠っているように日本全国どこの山にもある植物だが意外とその利用価値は高い。葉は山羊や牛の好物だし、蔓は編み上げて篭などに使われる。静岡県掛川市では蔓の繊維部分から葛布を織り、特産品となっている。根を使って葛湯が昔から作られている。根を乾燥させ煎じて風邪薬として使われて来た。漢方薬としても葛根湯の名で知られる。葛根は肝臓にもよく、江戸時代水戸光圀も二日酔いに愛用していたと言う。最近では葛の花から7種類のイソフラボンと3種類のサポニンという成分が抽出され、内臓脂肪の抑制に役立つとか。山上憶良の秋の七草の一つでもある。万葉集にも 真葛原 なびく秋風 吹くごとに 阿太(あだ)の大野の 芽子(はぎ)が花散る(葛が生い茂る原をなびかせて秋風が吹く度に、阿太の野の萩の花が散っていく) と詠われ、古来からの植物で大和でも珍重されたようだ。奈良県吉野の山野に自生するものは非常に良質で吉野葛として有名だ。葛の花は大きな葉の脇から花茎を突き出すように伸びてその花茎の下の方から花が咲き始める。最初淡紅色に色付き次第に濃くなり、さらに紫の藤の花のようになる。古の人々にとっては奥山のあるいは人里を離れた野辺で出会うものであったろう。現在では人による開発が進み日常の生活の場にまで見られるようになってしまった。釜石は南北の山が東西に広がる住宅地に迫っているため山肌の木々に大きく広がって垂れる葛の葉と蔓が目立つ。ただその花は意外に人に知られることなく咲き、また散って行く。

花茎の下から咲き始めた葛の花

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