釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

厳しい自然の中で生きている渡り鳥たち

2012-03-30 19:18:12 | 文化
今日は最近では最も暖かい日になった。2~3日後にはまた逆戻りが予想されている。それでも着実に春がやって来る。昨夕甲子川に沿った道路を車で走っていると1羽だけ残っている白鳥の姿を認めた。さらに車を走らせていると対岸の河川敷に3頭の鹿がいるのが目に入った。気持ちのいい夕方だったので、近くの空き地に車を止めて、少し河川敷を歩いた。付近で3人の初老の男性が釜石の方言を交えて、震災当時のそれぞれの状況を話していた。川の流れは緩やかで、水はきれいに澄んでいる。もうさすがに鮭の姿はない。3頭の鹿たちは雌なのか、角は生えていない。河川敷のわずかに芽を出し始めた緑の草を食べているようだった。山のある岸とは反対の河川敷にどうやって渡ったのだろう。今朝出勤時に見てみるともう鹿の姿はなかった。1羽になった白鳥だけが、他の水鳥たちと離れて優雅に流れに乗っていた。そのうち北国へ旅立つのだろうが、どこかで他の白鳥の群れと合流できるのか、心配になる。渡りの鳥たちは何百、何千Kmという距離を毎年往来している。白鳥についてはロシアと日本の共同研究の結果、シベリアから日本へやって来るルートには2つあることが分かって来た。シベリアからカムチャツカ半島を通り、千島列島へ渡った後に北海道に至るルートとサハリンから北海道へ入るルートだ。それぞれ途中で休みながら2週間かけて渡って来る。春にはこれを逆行してシベリアに帰って行く。白鳥にはオオハクチョウとコハクチョウがいるが、コハクチョウは身体が小さいため、少しでも天敵の少ない、出来るだけ環境の厳しい、オオハクチョウよりもさらに北方1,000Kmの極地で過ごす。白鳥は上空3,000mまでの高さを飛ぶことが出来、普段は時速50Kmの早さで飛ぶ。上手く気流に乗った場合は時速100Kmにもなるそうだ。雁行と呼ばれる飛び方で旅をするガンたちは9,000mもの高さを飛ぶことが出来る。世界最高峰の8,844 mあるエベレストさえ飛び越えることが出来るのだ。毎年10月下旬までに北海道に集結した後、11月に本州へ渡って行く。春を迎えた3月下旬に再び北海道に集結して、4月上旬にシベリアに向けて飛び立って行く。6月から7月にかけてシベリアでヒナが生まれ、生まれたヒナも9月から10月には空を飛べるまでに成長し、親鳥とともに越冬地に向けて旅立つことが出来るようになる。渡り鳥たちが方角を間違えないようにどうして飛ぶことが出来るのか、まだ正確には分かっていない。しかし、太陽と星、地磁気、風向き、日照時間などが指標になっていると考えられている。アジサシの仲間であるキョクアジサシなどは冬を南極で過ごし、夏になると北極に渡り、往復の距離は32,000kmにもなるという。当然これだけの距離の移動中には嵐に出会うこともある。毎年何事もなく渡って来ているように見える渡り鳥たちも様々な危険を冒して旅をしている。まさに厳しい自然の中で生きている。文明を手にした人間だけがその自然の厳しさを忘れる。海や山の幸で生計を立てている人の多い三陸沿岸では、それでもまだ自然の厳しさを自覚している方なのだろう。
若草を食む3頭の鹿たち この辺りも津波が襲って河川敷が削られている

優雅な姿を見せるがどこか寂しさを感じさせる1羽だけ残った白鳥

最新の画像もっと見る

コメントを投稿